マイスターです。
■レポートのコピー・ペーストを探すサービス
↑以前の記事で、レポートのコピー・ペースト(コピペ)を検出するサービスについてご紹介しました。
こうしたサービス、今後いよいよ大学や高校で働く皆様にとって、身近な存在になるのかも知れません。
【今日の大学関連ニュース】
■「学生の『コピペ論文』検出サービス日本へ」(nikkansports.com)
学生らがインターネット上の情報をコピーし、リポートや論文に張り付けて(ペースト)盗用する、いわゆる「コピペ」検出のため、米国の教育現場で広く利用されている不正摘発ネットサービスが秋にも、日本語への対応を始める。
米アイパラダイムス社の「turnitin(ターンイットイン)」というシステムで、現在は英、スペイン、ドイツ、フランスの4カ国語に対応。インターネットから収集した約90億ページの文字情報、約1万点の学術雑誌からなるデータベースと学生のリポートなどを照合し、内容の類似性を瞬時に判定する。
判定したリポートなども次々と蓄積され、照合の材料とするため、学生間の写し合いも検出できるという。
同社は高校と大学を中心に、世界で約6万5000の教育機関と提携する「摘発サービス」の最大手。学年末には1夜で約13万件の提出物を判定することもある。
(上記記事より)
そんなわけで、以前の記事でもご紹介した、iParadigms社の、「Turn it in」。
この「Turn it in」が、いよいよ日本でサービス開始だそうです。
■「Turn it in:Plagiarism Prevention(英語版)」(iParadigms, LLC)
↑英語版の製品ページはこちら。
日本語版はまだ出来ていないようですが、そのうち公開されるのでしょう。
入力されたデータを蓄積していくとのことですから、webからのコピペはもちろん、レポート同士の「写し合い」も検出可能。2年前の先輩のレポートを盗用したなんてケースも、発覚するかも知れません。
いわゆる「レポート代筆業」によって作成され、複数大学の学生に販売されているレポートも、この仕組みなら検出できそうです。
現在は多くの教員が、ご自身の専門知識と長年の経験に加え、Googleなどの検索エンジンによる「職人技」でコピペを探しているのかなと想像しますが、レポートの分量が増えると大変ですし、やはり個人のノウハウで見つけられるコピペには限界もあるでしょう。
というか、それでなくても多忙な研究者が、「コピペかどうかを確かめる」ためにちまちま検索を繰り返して時間を取られているというのが、もったいない話です。
それにレポート代筆業のようなサービスを利用されたら、教員側で気づくことは難しいでしょう。
例えば、アシスタントの方に頼んでレポートすべてをあらかじめ「Turn it in」にかけておいてもらい、その後、コピペ部分がハイライトされたレポートを教員が採点するという作業工程にすれば、担当教員は、より深い部分の採点に、時間を使えるようになるかも知れません。
使い方次第で、「Turn it in」は、教員の負担を劇的に減らしてくれるかも知れません。
(……と書いていて、まるで自分がiParadigms社の回し者のように思えてきましたが、違いますので、念のため)
ところでこういったサービスは、高校や中学、ことによると小学校の現場でこそ、重宝されるかも知れません。
学生が大学でコピペのレポートを提出する背景には、高校までのレポートが、webからのコピペなどの安易な丸写しで通用してしまっていたという「成功体験」もあるのかなと、個人的には思ったりするのです。
初等中等教育の現場の教員は、大学教員ほど、特定分野の専門知識を豊富に持っているわけではありませんし、そもそもレポートの素材が、大学の授業ほど限定されていません。そんな中で、あらゆるコピペを教員が個人で検出するのは至難の業です。
その結果、生徒達も、「コピペでいいよ、どうせバレないし」と安易に考え、そういったレポート制作に慣れてしまうのかな、と思います。
ですから、初等中等教育の現場に、高機能のコピペ検出サービスを導入し、早い段階で「安易な引き写しでは通用しない。論は自分の言葉で組み立てるもの」ということを教えた方がいいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
ただ、一方で、冒頭の記事には↓こんな記述もあります。
ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校で政治学を教えるジャネット・ヤングブラッド教授(62)は「盗用が多いのは学生が関心もないのに単位のためだけに受講する科目」と指摘。大人数授業ではコピペだけでなく「学生間での写し合いもあり、採点時の負担が大きい」と話す。
一方で「学生に中間発表や討論をさせ、評価の手段を多様にすれば、盗用しにくい環境をつくることもできる」とネット頼りを戒めてもいる。
(冒頭記事より)
レポートの執筆は、特に大学レベルにおいては重要です。
ただ、だからといって、レポート「だけ」で成績を付けようとするのも危険。コピペ検出サービスだって万能ではありませんし、そういったサービスにばかり頼るのも、良いことではないでしょう。
↑こちらで指摘されているように、評価の手段に工夫をするというのも、大切なことかなと思います。
(たまに、最後のレポートさえ良ければ単位は出す、授業には出なくても良い、なんて方針の教員もいらっしゃいますが、そういった方は、ご自身のコピペ・剽窃検出力に相当自信を持っておられるということなのでしょうね……)
とりあえず、本格的にこのサービスが日本上陸を果たしたら、多くの大学が導入するだろうなぁ……と思います。
以上、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。
>本格的にこのサービスが日本上陸を果たしたら、多くの大学が導入するだろうなぁ……と思います。
ううん、それはどうでしょうか?そんなサービスにお金をかけなくても、現在でもコピペはほぼ100%Google検索で見つけることが可能です。職人技というほどのものではありません。私は少しでもコピペがあれば0点にすると伝えています。それでも、話を聞いていなかったのか、こちらの検索力をなめていたのか、毎年2~3名のコピペレポートがありますが、当然0点にしています。そういう学生は当該学期に履修した全科目を0点にするなどの罰を与えれば(試験におけるカンニングではそういう大学が多いと思います)、コピペは一気になくなるでしょう。その意味でマイスターさんのおっしゃる
>例えば、アシスタントの方に頼んでレポートすべてをあらかじめ「Turn it in」にかけておいてもらい、その後、コピペ部分がハイライトされたレポートを教員が採点する
は甘すぎるでしょう。コピペ部分がハイライトされれば、採点するまでもなく0点でよいでしょう。
なお、このサービスを日本で実施するには、ニュースでいうこの会社の
>インターネットから収集した約90億ページの文字情報、約1万点の学術雑誌からなるデータベース
は無意味でしょう。英語のサイトや学術雑誌を読めるくらいの学生ならコピペしません。日本語サイトの独自データベースを構築するつもりでしょうか?それにはかなりの時間と費用がかかるように思います。せいぜい、Google検索代行くらいではないでしょうか(だとすればお金を出すまでもない)。