大学のランキングと、どう付き合うか?

マイスターです。

ちょっと前のニュースになってしまいましたが、大学の「ランキング」についての話題がありました。

【今日の大学関連ニュース】
■「大学ランク『過信ご注意』」(読売オンライン)

経済協力開発機構(OECD)などが、大学ランキングについて、各国の高等教育への影響を調べている。
この調査で来日した高等教育の専門家、アイルランド・ダブリン工科大のエレン・ハゼルコーン副学長は「ランキングの過信は禁物」と警鐘を鳴らした。
最近は、英国の大衆紙がアイルランドを含むランクを発表、ポーランドやチェコでも始まるなど、ヨーロッパ諸国にも大学ランキングが広がっているという。この結果、「順位が上がると学生や資金が集まるので、どの大学も順位を気にするようになった。産業界でも、英国では、ある順位以上の大学の学生しか採用しない企業が現れた」。
また、経済同様、高等教育のグローバル化が進む中、「留学生獲得のため、大学は世界での順位を上げようとする。チェコの大学は、ドイツ語だけではなく、英語での授業プログラムも導入するようになった」。
しかし、ランキングには問題も多いという。「データの集め方が不正確だったり、総合順位で比較する傾向が強いため、一つ一つの大学の良さが評価されなかったりする。その点、日本のメディアによるランキングは、多様な基準を用いて多面的に評価しようとするところがよい」
順位の結果に、大学も政府も一喜一憂すべきでないという。「大学が自校の改善のために評価結果を用いるのはよいが、順位アップを目標にすべきではない。政府は、国民がランキングを過信しないように、大学に関する多様な情報を発信する責任がある」
国際調査は、ドイツやオーストラリアでも実施され、ハゼルコーン氏らの手で分析が進められる。
(上記記事より)

海外の大学ランキングとして特によく引用されるのが、イギリスの「The Times Higher Education」が発表しているもの。

■「The world top 200 universities」(The Times Higher Education)

他、アメリカ「ニューズウィーク」誌や、中国の上海交通大学によるランキングも広く知られています。

こうしたランキングがどのくらい高等教育に影響を及ぼしているか、をOECDが調べているとのこと。
記事を読む限り、どうやら程度の差はあれ、多くの大学がこうしたランキングを気にしているようですね。
「無視は出来ない」といったところでしょうか。

それについて、このOECDの調査のために来日したアイルランド・ダブリン工科大のエレン・ハゼルコーン副学長は、ランキングには問題もあり過信すべきでない、順位アップを目標にすべきではないと警鐘を鳴らしています。

毎回賛否両論はありますが、日本の大学の間でも確かに、こうしたランキングは何かと意識されているように思います。

■「上位狙いか疑問視か 海外発『世界大学ランキング』」(Asahi.com)

国内の有力大学の間で、海外発「世界大学ランキング」への関心が高まっている。「順位上昇作戦」を展開したり、目標順位を掲げたりする大学もある。一方、「非英語圏は不利」「文系軽視」など、ランキングに対する疑問も根強い。「たかがランキング、されどランキング」――大学関係者がこう語るランキングとの付き合い方をみた。
東京大が21日、米カリフォルニア大バークリー校、米エール大、英ケンブリッジ大という名門大学と教育力を比較する研究会を開いた。
小宮山宏総長は「ランキングの多くは恣意的(しいてき)で、順位に一喜一憂するのは本末転倒」とあいさつ。浜田純一副学長も「ランキングは教育など大学の総合力を正確に反映しているわけではない。むしろ、似ている大学と比べることで長所や短所をはっきりさせた方が有益だ」と話す。
「世界の知の頂点を目指す」(小宮山総長)東大だが、英紙タイムズの07年のランキング(以下同じ)では17位。専門家評価は百点満点だが、国際性が50点以下なのが弱点だ。最近力を入れている国際化は「順位上昇作戦」にも見えるが、浜田副学長は「総合力ではすでに世界の10位以内だと思っている。ランキングの上昇自体が目的の努力をするつもりはない」。
一方、ランキングに対応しているように見える大学もある。
一橋大は200位にも入らず、「順位の低さに衝撃を受けた」(加藤哲郎・研究担当役員補佐)。そこで、同じ社会科学の総合大学でありながら06年には東大よりも上位(17位)に入った英ロンドン大経済政治学院(LSE)を現地調査。論文の英訳支援も始めた。加藤補佐は「人文科学と社会科学の部門別ランキングでまず100位以内を目指す」と意気込む。
大阪大(46位)は07年に初めてトップ50入りしたが、「論文の引用回数からみると30位以内に入っていてもおかしくない。10~20位台にはいきたい」(高杉英一副学長)。タイムズ側に対し、評価にあたる専門家が欧米に偏っているのではないかとして改善を求めるなど積極的だ。
(上記記事より)

この記事では、ランキングに懐疑的な大学も含め、他にもいくつかの事例が紹介されていますので、ご興味のある方はリンク元をご覧下さい。

東大は「順位に一喜一憂するのは本末転倒」としながらも、実際にはこれまで公式webサイトでしっかりランキング上位をアピールしてきましたので、やっぱり気になるのだと思います。

■「The Times Higher Education Supplement (THES) の発表した世界トップ200大学で東京大学が12位にランク」(東京大学)
■「研究活動:THESによる大学ランキング」(東京大学)

ところで、日本の「大学ランキング」としてよく知られているのは、↓こちらでしょうか。

こちらの週刊朝日進学MOOK「大学ランキング」は、とにかく数多くの評価軸で大学をランクづけているのが特徴。
「総合ランキング」というものはなく、あくまでも「○○という視点で調べたらこういう結果になりました」という調査結果をずらーっと並べている本です。

「学長からの評価」や、「高校からの評価」、「ネイチャー、サイエンス掲載ランキング」といった外部からの評価から、「大学院進学率」、「大学図書館」、「社会人受け入れ」といった教学に関するデータ、「教員の純血率」、「学長の出身大学」といった、あんまり大学のパンフレットには掲載されていないデータ、さらには「女性ファッション誌(女子学生の読者モデル登場ランキング)」、「女子アナウンサーの出身ランキング」といった風変わりなものまで、とにかくランキングの種類が多岐にわたっています。

そんな色々な角度からの統計ランクを並べていくと、各大学の個性がわかってくるんじゃないか? というのがコンセプトなのでしょう。

冒頭の読売オンラインの記事で、ハゼルコーン氏が「日本のメディアによるランキングは、多様な基準を用いて多面的に評価しようとするところがよい」と述べているのは、なんとなく、この朝日の大学ランキングのようなものをイメージしておられるのかな、と思います。

この、朝日の「大学ランキング」に1994年の創刊時から関わってきた小林哲夫氏は、著書の「ニッポンの大学」で、

「偏差値以外のモノサシで大学を評価したい」
「受験生にさまざまな大学を知ってほしい」

……という思いで、ランキングづくりに取り組み始めたということを述べています。

確かに、この朝日「大学ランキング」のように、様々な評価軸をもって大学の有り様を浮かび上がらせていくというのも、ひとつの手法ではあるでしょう。
(少なくとも、独自に定めた算出方法を絶対基準として「総合評価」を出している海外のいくつかのランキングよりは、良心的な姿勢だと思います)

実際、自校が最も得意としている点をこの「大学ランキング」で評価され、それを自校の取り組みに対する外部評価のひとつとしてPRしている大学もちらほらと見かけます。

(例)■「『大学ランキング』で『学長評価』『大学図書館』など上位にランキング」(国際基督教大学)

「大学ランキング」の数字も、万能の指標ではありません。
でも、上記のICUのように、得意分野についての評価の一面としてうまく使っていく分には、良いのではないか、と個人的には思います。

ところで小林氏は、「ニッポンの大学」で、「The Times Higher Education」についても触れており、根拠となるデータの出典がわからず、質問項目の定義も明確でない、信憑性に欠ける調査だと述べています。

日本の主要大学にタイムズから調査依頼があったかどうかを尋ねた結果、たとえば東大や九州大、神戸大などは「なかった」と回答。「よくわからない」と答えている大学も多いとのこと。
では、依頼がなく、あるいは依頼があっても回答しなかった場合のデータはどこから引っ張ってこられているのかというと、タイムズの調査員が日本の大学関係者に説明した資料には、例えば教員数については「National Average」とあるそうです。教員数は、ランキングで重要な役割を果たすはずですから、結構いいかげんですね。その教員の数についても、非常勤教員を入れるかどうかが曖昧なことも多かったそうです。

また、東大は三年連続で順位を落としたことがありますが、その理由の一つは、「企業からの評価」が極端に低かったこと。しかし、東大の教授がタイムズのランキングに関わっている調査会社に問い合わせたところ、回答した企業はたったの二社だったそうです。これでは、「The Times Higher Education」のランキングに不信感を募らせるのも、無理はありません。

上海交通大学のランキングや、「ゴーマン・レポート」の杜撰さについても同書では述べられていますので、ご興味のある方は読んでみてください。
朝日「大学ランキング」のデータをもとにした、各大学への指摘の数々も、なかなか面白いです。
(日本の大学業界に向けられた、耳の痛い指摘もあります)
「どこまでランキングが可能なのか?」、「ランキングできること、できないことって何?」といった投げかけも、同書ではなされている……ように、個人的には感じました。

そんなわけで大学のランキングは、影響力の大きさを考えると無視はできませんが、(ランキングの信憑性も含めて)やはり冷静に距離を置いて付き合った方が良さそうです。
自校の得意とする部分を評価してもらったときは、外部からの声のひとつとして紹介すればいいと思いますが、ランキングの順位アップを目的にしても、振り回されてしまうだけかもしれません。

以上、そんなことを思うマイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。