ニュースクリップ[-4/15]「京阪神の10大学 社会人の学び支援、NPO法人設立へ」ほか

マイスターです。

日曜日になりましたので、一週間個人的にクリップしていたニュースの中から、いくつかを選んでご紹介したいと思います。

社会にとけこむ大学。
■「京阪神の10大学 社会人の学び支援、NPO法人設立へ」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200704120061.html

京阪神の約10の大学が大学院で学ぼうとする社会人を支援するため、9月をめどにNPO法人「関西社会人大学院連合」を設立する。呼びかけ人の関西、関西学院、同志社、立命館の4大学の学長らが12日、発表した。

在学しなくても特定の科目を受講し単位を取得できる「科目等履修生制度」を広くPRするほか、京阪神の企業や自治体の社員や職員向けのキャリアアップ講座やセミナーを企画し、地域貢献を目指す。
(上記記事より)

企業や自治体の社員向けの講座を企画していくとのこと。単なる科目等履修生よりも一歩踏み込んだ、組織向けのサービスが充実していくのでしょうか。
「働きながら学ぶ」という選択肢を、これまで以上に世の中にアピールできそうです。

ちなみに背景として、各校がこぞって開設したサテライトキャンパスがいまひとつ学生を集められていないという問題があるようです。↓

現在、ビルのフロアに入居する「サテライトキャンパス」の形態で、経済・経営関連を中心に学べる社会人大学院の開設は、大阪市内で22校に上る。ここ3~4年で倍増したため、定員に比べ学生数が伸び悩んでいるのが実情だ。こうした状況を改善するため、大学と経済界、行政が連携して、社会人にとってより魅力あるカリキュラムを用意し、人材育成を進める。
(「関西社会人大学院連合:関関同立など11大、今秋にNPO設立 大阪府、関経連も協力」(MSN毎日インタラクティブ)より)

各校のサテライトキャンパスの「計画倒れ」から始まった新しいプランですが、きっかけはどうあれ、いい方向にもっていけるといいですね。

学生対応のためのハンドブック。
■「教職員に学生対応ガイド」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20070403ur01.htm

ゼミで孤立していたり、精神的に不安定な兆候が見られたり……そんな学生への対応方法をまとめた大学の教職員向けガイドブックが相次いで作成されている。学生の悩みを理解し、学生相談室などの関係機関に取り次ぐなどして問題を解決するのが目的だ。

東洋大学(東京)は昨年10月、「困ったときの学生対応Q&A―教職員のための学生相談ハンドブック」を作成した。教職員や学生から学生相談室に寄せられた事例をもとに、教職員が取るべき対応のポイントなどを紹介している。

例えば、意味の分かりにくい発言が目立つ学生に対しては、「リラックスさせるように優しく対応を」と書かれている。話の内容に一貫性がないことが顕著な場合は何らかの障害がある可能性があり、学生相談室や医務室に取り次ぐことを促している。また「悪質商法の被害に遭った」という場合は、消費生活センターなどの相談機関を紹介することを説いている。

このハンドブックは、同大学学生相談室が作成した。執筆者の一人で、同大学学生相談員の中村家子(やすこ)さんは「悩みを抱えている学生にどう対応したらいいか、苦慮している教職員が多いこともハンドブックを作成した理由の一つ。学生の日常生活の問題点や精神衛生(メンタルヘルス)について、教職員が適切な知識を持って対応することが大切」と話す。同大学ではハンドブックを1300部作成し、教職員に配布した。
(略)
「大学生のトラブル&マナー」の編集委員長を務めた東海大学教学部学生生活支援室長の曽田成則さんは「今の学生は具体的なアドバイスをしてほしいと願っている。教職員は冊子を通して、学生の悩みを解消し、充実した学生生活を送るための手助けをしてほしい」と話している。
(上記記事より)

これは非常に大事な取り組みだと思います。
昨今、メンタルに問題を抱えた学生に対する接し方は、大きなテーマになっています。発達障害を持った学生に対しては、ある程度の知識を持った上での特別な対応が求められることもあります。
カウンセラーなどの専門家の存在はもちろん重要ですが、日常の生活の中で学生に接するのは教職員ですから、自分達も適切な対応ができるようになっておかなければなりません。
こういったハンドブックを制作するということは、大学としてそういった対応を重視しているということなのかなと思います。どのような内容なのか、ぜひ一度、見てみたいですね。

止まらない、後期日程廃止の動き。
■「一橋大、商学部の後期日程入試を廃止 09年春から」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200704040324.html

一橋大は4日、商学部の後期日程入試を09年春から廃止すると発表した。法学部や社会学部でも09年から後期の募集人数を減らし、前期を増やす。各学部の全体の募集人数は変わらない。来春の入試はこれまで通りの要領で実施する。

商学部は、現在の前期220人、後期50人、面接などだけで合否を決めるAO(アドミッション・オフィス)入試5人の募集から、前期260人、推薦入試15人の募集に変更する。09年からは、推薦入試にも大学入試センター試験が課せられる。
(上記記事より)

国立大学の中で、後期日程のあり方を見直し、その分を前期にまわしたり、あるいは推薦やAO入試の形で展開したりといった動きが起きています。
このたび、一橋大学商学部も「後期日程廃止」を発表しました。

もともと国立大学の後期日程には、前期とは異なる選抜方法によって多様な人材を募集しよう、という意図もあったのでしょう。しかし実質的に、前期で落ちた学生のための単なる救済措置のような位置づけになっていることも多いようです。
それに加えて、私大が入試を早期化させた結果、学生が早々と進路を決めていく流れがあります。国立大学の側としては、二度の試験で手間も時間もかかっている割に成果が得られていない、という考えもあるのでしょう。

画期的な研究者検索システム。
■「北大が新検索システム、平易な文で研究者探しやすく」(NIKKEI NET)
http://www.nikkei.co.jp/news/retto/20070329c3c2900x29.html

北大は研究者やその文献を検索する新たなシステムを開発し、ホームページ上に立ち上げた。共同開発したいテーマなどを平易な文で打ち込めば、専門的な用語とも結び付け関連文献の多い順に研究者を検索して一覧表示する。共同開発などの申込窓口も設定。企業側の研究者探しやアクセスを容易にして産学連携を加速させる。

従来のHP上の公表情報は専門的、難解な言葉が多く、企業側は探したい研究者にたどり着けないケースが多かった。

立ち上げた「ニーズシーズ(NS)ハイウェイ」は例えば「ひざ関節の専門家は」「植物の栄養について研究している人は」といった平易な話し言葉でも、文献や特許などの関連語と結び付けて検索。研究者とその文献数を年別に表示し、経歴や文献の題名、特許番号もわかるようにした。
(上記記事より)

これは面白そう!
というわけで、↓こちらがその、「ニーズシーズハイウェイ」の検索ページです。

■「NS Highway」(北海道大学)
http://nsh.cris.hokudai.ac.jp/cbsearchj/cbswebgw

試しに「橋が壊れた」と入れてみたら、地震工学の研究者の方がトップに出ました。
なるほど、シーズを探す企業の側の視点を取り入れたシステムというわけですね。これは使えそうです。
期待と違った結果が返ってくることもありますが、それでも従来型の研究者データベースに比べたら、ずっとわかりやすいです。
また、在学生が所属研究室を選ぶときの参考にしたり、オープンキャンパスの会場で研究室案内をするときのガイドとして取り入れたり、色々な展開もできそうです。

地味かもしれませんが、実は非常に大きな効果を持った取り組みではないでしょうか。

どーんと。
■「資産家が4億ドル寄付 コロンビア大学」(U.S. FrontLine)
http://www.usfl.com/Daily/News/07/04/0411_015.asp?id=53164

米総合メディア企業の創始者の資産家が母校のコロンビア大学に対して少なくとも4億ドルを寄付することが 10日、分かった。死亡時の財産に基づいて寄付額が決まり、最大で6億ドルに達する可能性がある。1回の寄付額としては同大学史上で最大になるという。ウォールストリート・ジャーナル電子版が伝えた。

寄付を決めたのは1937年に同大学を卒業、放送、広告関係のメトロメディア社を創設したジョン・クルーゲ氏(92)。86年にはテレビ局をニューズ・コーポレーションに約20億ドルで売却した。

これまでにも1億1000万ドル以上を同大学に贈っている。
(上記記事より)

いつものことながら、アメリカの大学が集める寄付の額にはびっくりさせられます。4億ドルですか。東大が2004年に「東京大学基金」を立ち上げ、3年間で130億円を集めるという目標を立てていましたが、これ一発だけで達成ですね。うむむ。

社会貢献に対する意識の差もさることながら、日米の税制の違いによるところも大きいという話は、よく耳にします。

(参考)
■「連邦政府とアメリカの大学: Tax Power」(アメリカの大学事情)
http://ameblo.jp/yanatake/entry-10008137791.html

こうした寄付のためのシステムが、アメリカの大学の強さを支える一端であることは間違いありません。9月入学もいいのですが、こういった点も議論していただきたいなぁ、なんて思ったり。

以上、今週のニュースクリップでした。

今週も一週間、本ブログを読んでくださいまして、ありがとうございました。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

マイスターでした。

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※14日にアップした記事の公開日が誤って15日に設定されていたため、15日のニュースクリップが、14日の前に表示されるという現象が起きておりました。ご指摘を受け、先ほど修正しました。大変失礼いたしました。