マイスターです。
毎年、日本中いたるところの大学で、新しい学部学科がつくられています。
ゼロから組織を新設することもあれば、既存の学部学科を改編・改称する場合もありますね。
そんな学部学科にも、流行という物があります。
ちょっと前は、情報学部や薬学部などをつくることが流行していたように思います。
そのさらに前は、「環境」「総合」「政策」などがそうでした。
最近では、観光学部や、「こども学部」などの新設が相次いでいるように思います。
現代社会を読み解くために、新しい学問領域をつくってやろうという、野心的、挑戦的なケースもあるでしょう。
産業界のニーズに対応し、不足している人材を育成して世の中に送りだそうというケースもあるでしょう。
「高校生はこんなことに興味があるらしい。こういうのをつくったら、受験生が集まるんじゃないか」というマーケティング的な分析によって生まれた学部学科もあるでしょう。
さらに「最近、こういうのが他大学で人気を集めているらしい。うちにも似たような分野の教員はいるから、同じように新しい学部に再編させたら、受験生が少しは増えるんじゃないか」という、「右に倣え」的な行動の結果、つくられる学部学科もあるでしょう。
(実際には、上記のすべてが理由、という場合が多いんだろうと思います)
さて、つくられる理由は色々でしょうが、最近の流行は↓こんな分野のようです。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「スポーツ・健康学部新設相次ぐ」(MSN産経ニュース)
http://sankei.jp.msn.com/life/education/071222/edc0712221128000-n1.htm
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健康志向の高まりで、全国の大学に「スポーツ」や「健康」と名の付いた学部・学科の新設が相次いでいる。入試に実技はなく、中学・高校の保健体育教員免許がとれる大学がほとんどで、科学的トレーニングや高齢者の予防医学などを学べるのが特徴だ。ここ数年、体育教師やスポーツトレーナーを目指す学生が増え、その動機も「部活指導をしたい」から、「健康のためにスポーツの大切さを教えたい」へと変化しつつあるという。勝利至上主義の典型的体育教師にさようなら?
(略)体育教師人気は、団塊世代教員の大量退職により、ここ数年で採用枠が広がっていることも一因という。中学保健体育の教員採用試験で、大阪市は平成13年度に採用8人で倍率14・8倍だったが、18、19年度は採用が20人、20年度には38人で倍率も5倍前後に落ち着いた。同市教育委員会では今後も受験者は増えるとみている。
神戸市は中高一括採用で、16年度は17倍だった倍率が、20年度は9・8倍に下がり、採用人数も12人と2けたにもどった。
スポーツ科学に詳しい関西学院大社会学部の河鰭(かわばた)一彦教授(43)は、体育教師が実技だけを指導していればよかった時代は終わったと指摘する。「これからは、科学的な根拠に基づいて健康を守る指導が求められる。競技しか教えられない昔ながらの体育教師は駆逐され、知的な教員が増えるだろう」と話している。
(上記記事より)
スポーツを実技だけではなく、理論的、科学的にも学べる学部。広い言い方では、「健康のマネジメントを学べる学部」でしょうか。
日本社会の高齢化が進み、健康の維持管理が社会的な課題になっていく昨今において、これは時代のニーズに合った学問領域だとマイスターは思います。
記事では特に、体育教師の需要増について大きく触れられていますが、メタボの影に怯える現代人のマイスターとしては、健康に関わる幅広い領域に人材を供給するという側面にも強く期待したいところです。
科学的理論に基づく正しい専門知識と、実践的な指導法を持ち合わせた「健康のプロ」は、プロ・アマ含めた各種スポーツチームの他、企業や行政、教育機関、行政、各種のメディアなど、多くのステージで活躍できるんじゃないでしょうか。
ところでちょっと話がそれますが、マイスター、従来から日本の一部の大学が実施している「スポーツ推薦」という仕組みに、今でもあまり共感できないのです。
高校生の間、各種のスポーツ競技で好成績を収めた者を、「大学での学び」に関係のない形で入学させる。そして大学四年間、スポーツ活動に注力させ、授業は二の次、三の次で卒業させる。これは、大学がやることではないと思っています。
スポーツで活躍したという功績を持って、AO入試などで合格し、入学後に、授業ですばらしい活躍をするというのならいいのですが、そうではなく、入学した学部学科の専門カリキュラムをおざなりにするのは、いただけません。それなら、他の学生とは区別し、大学付属のアマチュアスポーツチームか何かに所属させればいい話ではないですか。
(過去の関連記事)
・「箱根駅伝と大学広報(2)」(2006年01月03日)
https://unipro-note.net/wpc/archives/50127127.html
↑以前の記事でご紹介したのですが、箱根駅伝に出場する学生の所属学部として一番多いのは、「経済学部」です。体育系学部を持たない総合大学などで、その傾向が強く見られます。理工系はほとんどいません。医療系に至ってはゼロです。
こういった出場選手、特に毎年常連で箱根を走る強豪校のチームの中には、スポーツ推薦で大学に入学した学生も、少なからず含まれています。
そんな彼らの所属先、どうして経済系に集中しているのでしょうか。どうして理工系はほとんどいないのでしょうか。
この事実に対し、ある大学関係者は、
「理工系や医学部では授業が厳しいし、実験や実習にみっちり出ないと卒業できないからねぇ」
と言っていました。
ってことは何かい、経済学部は、授業が厳しくなくて、みっちり出席しなくても卒業させられるのかい。だからスポーツ推薦の選手を経済学部に所属させているってことかい。それを不思議に思わんのかいと、思わずつっこみたくなりました。
こんな状況をおかしいと思わない業界の常識が、マイスターは未だに、不思議でなりません。
まるで、大学にとっての「必要悪」と考えられているかのようです。
アメリカなどの大学でも、スポーツに力を入れているところはたくさんありますが、それは「知識だけではなく、体力的にも優れている、バランスの取れた人材を育成しよう」という、リベラルアーツ的な考え方によるものです。スポーツだけやって卒業する学生なんていません。
日本でも、大学スポーツが、色々な競技の振興に一役買っているという意義はあるでしょう。
ただそれでも、学位を出して卒業させるのであれば、四年間、他の学生と同じ内容を同じ量だけ、みっちり勉強させるべきではないのかと思うのです。
で、話を戻しますと、こういった学生に「ちゃんと勉強させる」ための受け皿として、スポーツ系学部を機能させている大学も、(どことはいいませんが)ちらほら出てきているように思ったりします。
これは、別に悪いことではないんじゃないでしょうか。
もともとスポーツに秀でている学生に、スポーツ理論を専門的に学んでもらう。
これなら、学んだことが自分の競技成績アップにも活かせますし、選手を引退していつか指導者の側に立ったときにも、役立ちます。
それに、競技者としての自分の普段の取り組みと直結しているとなれば、真剣に興味を持って学べるでしょう。
というわけで、色々な社会的要請や期待、大学の思惑等を背負ってつくられるスポーツ系・健康系学部。
果たして、これからどのように機能していくのでしょうか。
以上、マイスターでした。