マイスターです。
教育再生会議から、興味深い構想が出てきました。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「大学3年で卒業、院進学…再生会議提言素案」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20070412ur04.htm
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大学院に進学する学生については、3年間での学部卒業と院進学を標準としたうえで、現在は通常2年の修士課程を3年に延ばし、大学院での研究指導の充実を図ることが柱だ。さらに、大学院間の競争を促すため、大学院生の大部分を占める同じ大学の同一学部出身者(内部進学者)の割合を2割程度に制限することも打ち出した。同会議は第3分科会(教育再生)で検討を重ね、5月にまとめる予定の第2次報告に盛り込む方針だ。
(上記記事より)
なかなか大胆な構想です。
この案がいいかどうかはともかく、世論喚起の意味も含めて、こうして議論の過程が公開されるのはいいことですよね……って書こうと思ったら、ありゃ、教育再生会議のwebサイトではまだ公開されていませんでした。
それはともかく、気を取り直して読売オンラインの記事を見てみましょう。
大学院に進学する学生については、3年間での学部卒業と院進学を標準としたうえで、現在は通常2年の修士課程を3年に延ばし、大学院での研究指導の充実を図ることが柱だ。さらに、大学院間の競争を促すため、大学院生の大部分を占める同じ大学の同一学部出身者(内部進学者)の割合を2割程度に制限することも打ち出した。同会議は第3分科会(教育再生)で検討を重ね、5月にまとめる予定の第2次報告に盛り込む方針だ。
提言素案は、野依座長が自ら作成した。大学院を国際的に活躍する人材を養成する独立機関と位置づけているのが特徴だ。素案では、大学院教育を「国際社会を生き抜く直接的な原動力」と明記。日本の大学院教育を「極めて狭い領域の研究指導に偏り、組織的な教育がなされていない」と分析し、主な要因を「学部との連続的な縦割り構造」と、学部4年生の「囲い込み」にあるとした。
(上記記事より)
うーむ、なるほど。
「学部との連続的な縦割り構造」と、学部4年生の「囲い込み」ってのは、確かにあると思います。
他大学の大学院に進学する
= 母校の恩師では物足りないという意味
= とても失礼な行為
みたいに捉える教員の方も、少なからずいるようないないような。こうした点は、日本の大学の良くないところの一つだとマイスターも思います。
アメリカの大学に留学していた方の話を聞いたことがあるのですが、卒業時に、教授に進路を相談したところ、
教授「君は、卒業後はどうするの?」
学生「それなのですが、大学院に進学しようと思います」
教授「それはいいね。どこの大学院に?」
学生「どこって……ここの大学院です」
教授「……なんでまた、ここに?
君は、今までこの大学でちゃんと勉強してこなかったのかい?」
学生「いえ、十分に勉強してきたつもりです」
教授「だったらなにも、ここで学ぶ必要はないじゃないか。
他の所に行って、新しいことを学びなさい。
○○学なら、○○大学の大学院なんておススメだよ」
……みたいな感じだったそうです。
ただ、こうした縦割り云々の指摘と、「3年間での学部卒業と院進学を標準としたうえで、現在は通常2年の修士課程を3年に延ばし、大学院での研究指導の充実を図る」という案がつながっているかというと……うーん、どうなんでしょうね?
大学院での教育を充実させるというのには賛成ですし、能力を持っている方が能力に応じて飛び級できるようにするのにも賛成です。ただ「大学院進学者は学部を3年で卒業するのが『標準』」と言われると、なんかちょっと違うような気もします。
それに「学部3年間、大学院3年間」を標準にするとなると、海外の教育システムとかみ合わなくなるのでは。「海外と歩調を合わせる」という理由で9月入学を議論していたのに、修業年限は海外と違うの!? ……と、素朴な疑問を感じなくもありません。
素案は具体的な改革案として、〈1〉学部(学士)で対話力や科学的思考力など文理両面の教養教育を充実させる〈2〉その上で、現在、標準的な「4年(学士)・2年(修士)・3年(博士)」の構成を「3年・3年・2年」を標準にするよう見直し、大学院の指導充実を図る――としている。「囲い込み」防止策としては、内部進学者を1~2割程度に制限するほか、外国人学生を2割以上選抜することも提唱した。論文や研究計画書を重視し、大学院入試の公正性を確保。教員も国際公募で採用するとしている。
(上記記事より)
〈1〉の「学部(学士)で対話力や科学的思考力など文理両面の教養教育を充実させる」という案の背景には、近年見直されて来ているリベラル・アーツの存在があるのでしょう。これはわかります。「囲い込み」防止策も、ちょっと過激な(?)案ではありますが、個人的には、わりと納得のいく内容でもあります。
ただそんな中で、
標準的な「4年(学士)・2年(修士)・3年(博士)」の構成を「3年・3年・2年」を標準にするよう見直し
って案だけは、確かに大胆で興味深い内容ではあるものの、急というか、なんだか突拍子もないものであるような気がしちゃうのです。
こう感じるのはマイスターだけでしょうか……うーん。
5月にまとめる予定の第2次報告に盛り込まれるとのことなので、楽しみに待っていましょう。
以上、マイスターでした。
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※↓こんな提案もあるみたいです。こちらはこちらで興味深い内容が含まれています。
■「国立大授業料、学部で差…再生会議提言素案」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20070414ur02.htm
>標準的な「4年(学士)・2年(修士)・3年(博士)」の構成を「3年・3年・2年」を標準にするよう見直し
これはEU標準に合わせるということですね。
でもヨーロッパでは内部進学が常識ですから、そこだけはアメリカ式に変えようというのが理解できません。アメリカでは次々に別の場所に移り住むのが普通だそうで、文化がまったく違うのにアメリカの真似をしてもうまくいかないでしょう。
私立の大学・大学院の人気が高まるだけではないでしょうか。