マイスターです。
さて、日曜日になりましたので、今週も一週間の教育ニュースの中から、いくつかを選んでご紹介します。
【新たな判例。】
■「大学側に授業料返還義務=推薦入試、4月辞退でも-大阪高裁」(時事ドットコム)
推薦入試で合格し新年度の4月1日以降に入学を辞退した学生が、大学側に払い込んだ授業料など計約800万円の返還を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁の一宮和夫裁判長は9日、藤田学園(愛知県豊明市)に約700万円の返還を命じた。入学金100万円の返還請求は認めなかった。
学納金訴訟で、最高裁は2006年11月、年度内に辞退した場合、入学金を除き返還義務があると判断。一方、推薦入試などに関しては、代わりの入学者が確保できる時期に申し出たなどの事情がない限り、返還を求められないとした。
一宮裁判長は今回のケースについて、大学側は4月7日まで、補欠合格により辞退した分を補充していたと指摘。「辞退は織り込み済みで損害は生じておらず、返還しないという特約は入学金を除き無効」とした。
(上記記事より)
入学金や授業料の返還義務については、これまでの裁判で、様々な判例が出ています。
報道されている額を見る限り、藤田保健衛生大学の医学部医学科でしょうか。
今回は、推薦入学による合格を、4月に入ってから辞退したというケース。
これまでの事例に従えば、授業料も返還されないのかな、と思わせるところですが、
●大学側は4月7日までに、補欠合格により辞退した分を補充していた
●辞退は織り込み済みで損害は生じていない
……ということで、授業料も返還すべしという判決となりました。
個人的には、補欠合格がいつ頃確定したのかが気になります。
「辞退は織り込み済み」というのは、どの時点で織り込み済みだということでしょうか。
【スポーツで高大連携。】
■「高校アスリートに大阪市大がアピール」(産経関西)
大阪市大(大阪市住吉区)が、スポーツを通じて新しい高大連携に取り組んでいる。野球や剣道、水泳など、競技ごとに大阪近辺の高校部員をキャンパスに招待して合同練習や試合を行う「スポーツフェスタ」を実施し、大学の魅力を体験してもらおうという試み。クラブの垣根を越えて大学ぐるみで高校アスリートを招待するのは、国公立大学ではめずらしい。
3月、大阪市大第2体育館で行われた剣道部のスポーツフェスタでは、大阪、兵庫、和歌山などから29校、321人の高校剣士が参加して招待試合と合同練習が行われ、大いに盛り上がった。
「大学生活の一端を見ることができ、進路を決めるうえでも貴重な体験になるので、高校生は毎年、招待試合を楽しみにしています」
毎年参加している岸和田高校剣道部顧問の八倉孝仁教諭がそう話すなど、高校側の反応はいい。
(略)スポーツフェスタ全体の運営を統括する徳尾野徹OCUSA事務局長は「スポーツによる学校活性化は私学ではさかんだが、国公立大も積極的に取り組むべきだと思う。素質のある選手を発掘するいい機会にもなる」と話していた。
(上記記事より)
こういった取り組みは、意義がありそうですね。
大学のキャンパスのスポーツ環境を見て、「ここに進学したい!」と一念発起し、勉強をがんばるという高校生がいるかもしれません。大学は、スポーツをするだけの場所ではありませんが、進学先を選ぶ際の、魅力のひとつにはなると思います。
それに、仮に他の大学に行ったとしても、参加によって刺激を得た経験は、生かされることでしょう。
【留学生達の悲願。】
■「福岡にモスク完成、留学生ら10年がかりの夢かなう」(読売オンライン)
九州・山口で初の本格的なモスク(イスラム教礼拝所)「福岡マスジド」が福岡市東区箱崎に完成した。
九州大学(福岡市)の留学生らが中心となり、10年がかりで建設にこぎ着けた。九州に約1000人いるとされるイスラム教徒の交流の場になるとともに、地域へ開放し、イスラム文化への理解拡大も目指す。
(略)福岡県には、インドネシアやバングラデシュ、エジプト、リビア、アフリカ諸国などからの留学生とその家族を中心に、約600人のイスラム教徒がいるとされ、九州全体では約1000人に上るという。介護
九州大学ムスリム学生会の留学生らは同大の留学生会館の一室で礼拝を行っていたが、自前の施設が欲しいと、1998年に資金集めを開始。国内外のイスラム教徒らの寄付で約5000万円が集まり、2005年に建設用地を購入した。
しかし、地元では米同時テロなどの影響でイスラム教施設への不安感が根強く、住民らが建設に反対。学生会は住民らを礼拝や食事会に招くなどして3年がかりで説得し、昨年着工した。モスク建設費約2億円は、アラブ首長国連邦が同国の赤新月社(イスラム圏の赤十字社)を通じて寄付した。
地元自治会長の原田秀徳さん(72)は「国際化の時代なので、異文化を受け入れることも必要。熱心に祈る姿には感心する」と理解を示す。
「信者の心のよりどころができた」と、学生会会長でエジプト出身のサイード・モハメドさん(29)は完成を喜び、「イスラム教は本来、平和の宗教。日本の人々がイスラム文化に触れる拠点にもなれば」と期待する。
古い民家や倉庫などを使った礼拝所は全国各地にあるが、本格的なモスクは東京、神戸に続き、全国でも三つ目という。12日の式典では日本人向けのイスラム文化紹介講演が予定されており、今後も文化講座や見学会を開催していく方針だ。
(上記記事より)
このモスクを建設するプロセス自体が、大切な異文化交流経験になったのではないかと思います。
日本人向けの講演なども行われるようですし、大学や大学生達などとも連携してことで、色々な展開ができそうですね。
【厳しい就職戦線の影で、密かに消えていく言葉。】
■「第二新卒の終焉 その価値は終わったのか?」(INSIGHT NOW!)
リクナビNEXT第二新卒が、2009年4月をもって休止となります。バブル期の人手不足頃からもてはやされ、リクルート社が一大市場にまで育て上げた「第二新卒」という存在は、今回の大景気後退とともに消えて行くのでしょうか?
私自身は昭和60年代に新卒で就職しましたが、当時から新卒の早期退職はありました。しかしやはり何かしら「ダメ」っぽいイメージがあり、決して「マーケット」では無かったと言えるでしょう。
それを、その後のバブルによる「大」人手不足が救い、取り合えずまっさらの新卒よりは、最低限の社会人マナーを身に付けている?とかの、私自身は疑問に感じる強引な理由で、かなり堂々と募集などもされるようになって行きました。リクルートグループが、その局面で大いに貢献したことは言を待たないでしょう。
これが「第二新卒」だけの求人サイト「リクナビNEXT第二新卒」につながって行ったことになります。
振り返って現在です。さらの新卒でさえ「内定切り」「採用抑制」が言われます。現在の就活中大学生・院生はたいへんな環境下で日々格闘しています。
企業の立場は昨年までと完全に逆転し、完璧に「買い手市場」となりました。中小企業で未だに人手が足りないところも実はあるのですが、「大手」と呼ばれる企業はかなりの充足感を得ていると、私の知る限りでは思えます。
(上記記事より)
「リクナビNEXT第二新卒」というサービスが、この4月で休止になるとのこと。
「第二新卒」という言葉は、今でもしばしば耳にします。
企業側にとっては、新卒採用を控えていた時期に空いた年齢層の穴を埋めたり、新卒採用したけれど辞めていった社員の代わりにしたりと、色々な意味で便利と思われている時代もありました。
しかし、「内定取り消し」や「派遣切り」などが全国的に問題になっているいま、第二新卒の採用に魅力を感じる企業は減っているのでしょう。
こうした変化は、大学生のキャリア観にも、影響を与えるかもしれません。
【中国を代表するエリート校、清華大学に、日本研究センターが。】
■「中国・清華大が日本研究機構 キヤノンなど日本企業と協力」(NIKKEI NET)
中国の清華大学(北京市)は10日、キヤノンなど日本企業と協力し、日本の社会研究や日中間の人材交流などを進める研究機構「日本研究センター」を設立したと発表した。国内外の研究機関と連携するのに加え、日中の企業とも共同研究を手掛け、政府に政策提言も行う方針だ。
日本研究センターの運営には、キヤノン、セコム、野村総合研究所、三井住友海上火災保険、全日本空輸などが支援。総額で1億―2億円の資金を提供し、中国人学生らの日本での研修費用なども負担する。
(上記記事より)
清華大学と言えば、中国を代表するエリート大学。
特に自然科学系の学問分野に強いとされ、技術系出身者が多い中国の政治家や高級官僚にも、この清華大学の卒業生が少なくありません。
清華大学や北京大学が位置する「中関村地区」は、IT系を中心とする産学連携の拠点でもあります。
(過去の関連記事)
■【キャンパス・ウォッチ】 中国の頭脳(2) 清華大学
■アメリカ 博士号(Ph.D)取得者の出身校トップは清華大学、北京大学
そんな清華大学に、日本研究センターができたというのは、両国にとっては大きな話題。
国際展開している日本企業にとっては、中国の優秀な人材を採用するという狙いもあるでしょう。
また今後、中国を引っ張っていくリーダー候補生に、日本のことを理解してもらうという点も重要だと思います。
ところで、日本の理工系大学にも、中国研究センターをつくっても良いかもしれません。
日本の年輩の方々には、中国をはじめ、アジアの国々から学ぶことを嫌がる人が多い、なんて意見をしばしば耳にします。「これらの国々から、我々が学ぶことなんてない!」と思っているのかもしれません。
でもこれからは、そんなことも無くなると思います。
お互いに研究しあえばいいのではないでしょうか。
以上、今週のニュースクリップでした。
今週も一週間、本ブログを読んでくださいまして、ありがとうございました。
来週も、お互いがんばりましょう。
マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。