京大に初の女性事務部長誕生

マイスターです。

男女共同参画社会と言いますが、実際には女性が活躍できていない場面も少なくありません。教育現場においても、その傾向が見られます。

(過去の関連記事)
・女性教員が少ない現状を是正するには…?(2006年09月11日)
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50242899.html
・女性を研究者に!(2006年06月27日)
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50214766.html
・教育現場での、女性の比率(2005年05月31日)
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/23597412.html

女性を起用しない組織風土、いわゆる「ガラスの天井」が存在しているのか。
女性が働きにくい環境であるため、結果的に男性ばかりになってしまうのか。
おそらく、色々なケースがあるのでしょう。

(「教員全体の女性比率は結構高いのだけれど、教授や学長になる人の割合となると、なぜかガクンと落ちる」なんてところもあるのでは)

これまで、そんな女性教員の状況について何度か書かせていただきましたが、そういえば、さらに女性が進出しにくい職がありました。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「京大、初の女性事務部長誕生 元総長時に電子図書館プロジェクトも」(京都新聞)
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007040600166&genre=G1&area=K10
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京都大(京都市左京区)の4月異動で、初めて女性の事務部長が誕生した。長坂みどり付属図書館事務部長(58)で、「教育研究の支援と社会への情報発信に向け、最初から全力で走りたい」と意欲を見せる。
(略)
 初の女性事務部長という立場については、「男女共同参画という動きの中のことですが、女性だからというよりも、京大の図書館で仕事を続け、大学の個性も知っている者としての期待と責任を感じている」。篤志家の寄付が白紙となった桂キャンパス(西京区)の図書館建設など難題もあるが、「愛着と愛情がある京大の図書館を、より充実させるため頑張りたい」と話す。
(上記記事より)

大学職員のトップで、女性が活躍しているケースというのは、どのくらいなのでしょうか。

正確なデータがないので何とも言えません。
ただ、女子大のようにもともと職員の多くが女性という場合はともかく、共学の、それなりに大きな規模の大学では、まだあまりおられないような気がします。
とりあえず京都大学では、新聞が取材に来てしまうような出来事だったようです。
皆様の大学ではいかがですか?

わりとどの大学でも、大学の事務組織には、女性が多いみたいです。
(市役所と同じで、仕事の時間が安定しているため、働きやすいのかもしれません)

なので一見、男女平等であるかのように思えますが、実際にはそうでもなかったりします。

マイスターが聞いたある大学の話ですが、そこには「学部・学科事務室には、女性職員しか配置しない」という暗黙のルールがあるとのことです。

学部・学科事務室というのは、教員に最も近いところにいて、様々なサポートをする部門ですね。その大学では「先生に対して秘書的な業務を行うには、女性が良いだろう」という判断をしているらしく、どの学部・学科事務室にも、原則として女性職員しかいないそうです(学生アルバイトとしては男子もいるみたいですが)。
明文化されておらず、あくまでも「暗黙のルール」だというのが、いやらしいところです。明文化したら、男女差別をしているということにつながりますからね。

この

「先生のサポートをするには女性の方がいいだろう」

という意識と、

「教授会などと渡り合うには、男性の事務部長でなければやはりだめだろう」

という意識。
マイスターにいわせれば根っこは同じで、単なる思いこみです。
本当に「男性だから」「女性だから」と限定してしまうことが正しいのかどうか、今一度、考え直してみるべきです。
女性でも教授陣と渡り合える人がいるかもしれないし、男性でもサポートに向いている人がいるかもしれません。それを、「この職は男性」「この職は女性」とさきに決めつけているのは、やはりおかしいです。

こうして考えてみると、大学の職員組織を男女平等にできるかどうかは、教員の意識次第だということも見えてきます。
教員側が「やっぱり学科事務室は女性の方の方がいいなぁ」とか、「事務のトップが女性になって、腹を割って話せなくなったよ。やっぱり男性でないと。」とかいった意見を根強く持っていると、なかなか組織は変われません。

そんなわけで男女共同参画という点では、実は教員組織と同じくらい、職員組織にも問題があります。教員と違って数字があまり表に出てこないため、誰も指摘しないのですが。

皆様の大学ではいかがでしょうか。

以上、マイスターでした。

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(参考)
・ハーバード大学に初の女性学長が誕生(2007年02月14日)
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50290000.html

17 件のコメント

  •  いつも勉強させていただいています。
     私の大学でも、女性事務職員で役職の方はほんのわずかです。なんでも、役職になるためには4年制大学卒業でなければならないというルールがあり、実際は、女性職員のほとんどが短期大学卒業であるため、どんなに力があっても、役職になることができない状況です。このため、力がある方ほど、他の企業・団体に移ってしまっています。本学が失ったものを考えると歯がゆいばかりです。
     また、元々が男性社会である大学のようで、上司に意見を述べてしまったがために、異動対象となったり、契約を打ち切られた嘱託職員もいます。
     少しずつ、意識を変えていただけるようこつこつ努力するしかありません。

  •  「文部科学省関係幹部名鑑」を読んだのですが…プロパー扱い(国立大学法人京都大学人事課所管)の方だったのか、全国異動扱い(文部科学省大臣官房人事課所管)だったのか微妙なんです。
     課長補佐級までは京都大学一筋です。
     問題は課長級ポスト。最初に就いたのは福井医科大学(現:福井大学医学部)。次が京都府内の大学共同利用機関。で、京都大学附属図書館事務部総務課長から事務部長へ昇格。
     まあ、課長級で福井に行ったのが、本間政雄さんが京大事務局長になる前だったことからして、おそらく全国異動の方の可能性が高いのではっと…

  •  前に10以上のコメントを連発して、国立大学の人事制度を説明しました。
     が、一応ここで念のため補足します。
     国立大学(正確には法人)の部局(学部、大学院、研究所、附属病院、附属図書館など)のトップには課長級が置かれる場合と部長級が置かれる場合があります。
     附属病院のトップはすべて部長級です。(役職名は事務部長以外に病院部長なども使用されています。)
     附属図書館は、旧帝大など規模が大きい(というよりは格上の)大学ですとトップが事務部長(部長級)、規模が小さい(というより格下の)大学ですと事務長(課長級)です。
     それ以外の部局は、旧帝大クラスで規模の大きい場合(京大ですと工学研究科事務部など)だとトップに事務部長(部長級)が置かれています。

  •  国立大学法人の管理職はランクとしては、事務局長(東大、京大のように廃止して総務担当理事で代替しているところも有り)、部長、課長級の3つが基本線です。
     法人化後に独自の人事制度を導入している法人も有りますが…
     部局の事務長(課長級)は、原則として生え抜き職員の就任ポストです。
     本部事務局の課長や室長(課長級)は、徐々に生え抜きの登用が増えてきましたが、まだ文部科学省ローテーション人事で来る(法人からすると外部から来る)方のほうが多いかと思います。
     部局の事務部長や本部事務局の部長はほとんどが文部科学省人事の方です。(名古屋大学を皮切りに生え抜きを登用する例も若干出てきていますが…)
     で、事務局長は全て文部科学省人事です。

  •  さて、この文部科学省ローテーション人事の方ですが、文部科学省が直接採用した方は、むしろ少数派です。
     国家公務員Ⅰ種試験合格者で採用された方は全員文部科学省人事です。
     が、国家公務員Ⅱ種試験合格者の場合は…
     最近は直接文部科学省が採用する数が増えておりますが、ほんの10年前まで本省直接採用は無しでした。
     Ⅱ種試験合格者で文部科学省人事に乗るには、28歳までに文部科学省に人事交流で行くか(現在は研修生という名目で)、大学(法人)で係長級以上に昇進後に課長登用試験を受けるか、でした。
     
     つまり、Ⅱ種試験の場合、かつては大学経由だけ。今は、本省直接採用と大学経由の両ルートがあるということです。

  •  以上を踏まえて、エントリの長坂さんの話に戻しますと…
     多分、課長登用試験を受けて、もちろん受かって、京大人事から文部省(当時)人事に変更された方だと思います。あくまで推測ですが…
     ですから、人事上の扱いは京都大学プロパーでなく、文部科学省ローテーションの全国異動者の可能性が大です。
     だから、形としては、文部科学省人事課が全国異動対象者として受け入れ大学を検討した結果、京都大学に部長として受け入れてもらえた、ということです。

  •  とは言え、文部科学省関係の(2)と違う幹部名鑑をざっと見たところ、京都大学で初めて部長級ポストに就任した女性というのは、どうも事実のようです。
     また、法人化前と違って、最近は幹部職員の人事に学長の意向が強く出る傾向があります。
     それに加え、附属図書館の総務課長から事務部長への昇格という点からしても、学長(あるいは理事や他の部長も)からの信任が厚い方だったことは容易に想像できます。
     その点では、やはり素晴らしい方なんでしょうし(面識がありませんので想像ですが)、素晴らしい事象ですし、画期的なことです。

  • 名無し様のおっしゃるように、エントリの長坂さんの部長就任は、経歴からすると、文部科学省人事の文脈で読むべきで、「京都大学において男女共同参画の意識改革が進んだ!」という文脈では読みづらいところがあると思います。
    とはいえ、これも名無し様の最後のコメントにありますが、文部科学省人事であっても、採用大学の部長にそれも女性が就任されたということは、全体から見るとほんのごくごくわずかですが、男女共同参画が進みつつあるといえるかもしれません。
    マイスター様の「そんなわけで男女共同参画という点では、実は教員組織と同じくらい、職員組織にも問題があります。」という問題意識に応えられる大学(特に国立)は今後あらわれるのでしょうか。私は下っ端なので具体的にできることはまだありませんが、せめて意識改革に努めたいと思っています。

  •  国立大学法人九州大学職員様、(8)のコメントの最初の段落で適切な補足ありがとうございました。
     少々気になった点を補足します。
     (3)のコメントで、格上の大学、格下の大学という表現をしています。
     お気を悪くされた(特に国立大学法人職員)の方もいるかと思いますが…これは、様々なところで指摘されていることです。
     文部省が長年、国立大学を序列化してきたことは、当方の個人的な感覚からしてもほぼ確実です。
     さらに、天野郁夫先生をはじめとする相当数の方が指摘しているように、法人化にあたって、格差や序列化をまったく是正しなかったことも事実です。
     ですので、数ヶ月前に別のエントリで、10以上のコメントを連ねて財務当局寄りの書き込みをされた方に反論し、かつ意見を求めたわけですが…(あれは尻切れとんぼ?)

  •  この国立大学の序列については以下を参考にしてください。
     既に統合で無くなった大学もありますが…
     序列はいまも残存じています。ある意味さらにシビアに…
     http://www.shutoken-net.jp/2001/09/0193ranging.htm
     長坂さんに絡めて述べさせてもらえば、そもそも京都大学に部長級のポストがあったからこそ就任できたわけです。
     言い換えれば、最初に採用された大学が部制を敷く大学だったから文部科学省人事に移ったのに、採用された大学で事務「部長」になれたわけです。
     しかも、京都大学の部長ポストの数は国立大学法人でも上から数えて片手で数えられるほど多いはずです。
     事務局長(か総務ないし人事担当理事は前法人にポストがあります。一時空席の場合もありますが)の下に部長ポストがなくすぐに課長級だったら、そもそも部長にはなれません。

  •  【注釈】(10)のコメント、「上から数えて片手で数えられるほど多い」(←多分上位5位以内という意味です。)
     「京都大学初の女性部長」となればニュースバリューはそこそこあるでしょう。(その割に報道が京都新聞ってことが気になりますが..)
     でも、課長止まりだった人が部長まで行った人よりも能力的に低かったとは必ずしも言えないわけで、センセーショナルな見出しに振り回されない冷静さも必要かと思います。
    (自分への戒めでもありますが…)
     国立大学法人九州大学職員様、昨年もらった名簿によれば九大は京大について国立大学マネジメント研究会の会員が多かったはずですが…できれば7月の総会でお会いしましょうか。シンポと懇親会含めて4時間程度のイベントに格安航空券でも最低3万円程度は掛かるでしょうから、無理強いはできませんが…ってかそもそも会員ですか?

  • 京大の話題でかなり書き込みがあるようですが、あまりにも寂しい議論ではありませんか。
    そもそも国立大学法人職員のキャリアパスの問題をいかにすべきかを真剣に考えるときではないでしょうか。
    前向きな議論をしようじゃありませんか。

  •  とある国立大学法人職員様へ
    >あまりにも寂しい議論ではありませんか。
     どの点がでしょうか?
     というか、前に財務当局の際にも同様の主旨のことを(おそらく別の方に)述べさせていただきましたが、
    >前向きな議論をしようじゃありませんか。
     とおっしゃるなら、自らの論を述べていただきたいものですが…
     感想を言うだけなら、もっとキツイ表現をするなら、相手に反対意見を言ったり、揚げ足を取るだけなら、大抵誰にでもできます。
     まるで昔の社会党みたいですね。
     繰り返します。
     そこまでおっしゃるなら建設的な意見をお待ちしております。
     今度は前の財務当局ネタの方(当方はIPとか解りませんが、多分別の方でしょうけど)と違って尻切れトンボにならなければ良いですけど…

  •  当方は、今回の京大の長坂さんの件について、「京大初の女性部長誕生」といった記事の内容の背景を解説したまでです。
     別に現行の制度が良いとは思っておりません。
     東大がリクナビを使ってまで、能力とやる気のある方を集め、結果今年4月の採用時には、国立大学法人職員統一試験合格者よりも独自試験合格者が圧倒的に多かったことを見習いたいと思っています。(東大の上杉理事は結果的にそうなったという言い方をしていますが…)
     またそもそも理事が文部科学省の全国異動者であることには反対です。
     よって、こういった意見には基本的に同意します。
     http://university.main.jp/blog/archives/001968.html
     既に当法人内の有志数名にはこのことは述べております。

  •  運営交付金で縛られていようとも、将来的には文部科学省とは人事的な関係を断ち切り、部課長はもちろんのこと、理事や事務局長も生え抜き事務職員が取り返すべきだと思っております。
     (国大協は小規模大学の意見を汲んで反対意見が多数派のようですが)課長登用試験も廃止するべきです。
     狙ってできることでもありませんが、できれば、生え抜き女性職員初の女性部長はうちの法人から、とも思っております。
     もっと言えば、理事ポストの半分以上は生え抜き事務職員が取ったうえで、事務出身理事は副学長を名乗るべきではない。その一方で、教員出身者は、理事を兼ねる副学長と理事を兼ねない副学長がいる、というのが健全なあり方だとも思っております。
     国立大学法人法の主旨に則り、「法人」と「大学」を区別するのなら…です。

  •  そもそも、これまでも国立大学事務職員の人事制度設計や現状認識(いまだに、文部科学省大臣官房人事課所管の全国異動があぶれていることなど)を踏まえないで、これからの国立大学法人職員の新しい人事制度設計やキャリアパスなど考えられないと思いますが…
     上で使えている団塊の世代の…特に課長級ポストに就いている方々の首を今すぐ切れるだけの権限が、とある国立大学法人職員様に、お有りなら別でしょうが…
     いくら能力欠如していようと、今組織に属している方の生首はそうそう切れません。
     それを前提に人事制度を設計せざるを得ないもんです。
     で、さらにそれを前提にキャリアパスとやらを考える必要があるかと思いますが…
     趣味で難関資格を取得したり、大学院に行くのは別に個人の自由ですが、それを仕事に役立てたり、人事評価の対象に加えてほしいのならそんなことは当然かと思います。

  • 私はまったくの他人ですが、名無しさんの文章では、一体何を言いたいのかがよくわからないのです。議論したい内容は16をよんでやっとわかるといった感じです。
    マイスターさんの書いた文章と比較してみれば、内容の可否はともかく、何を訴えたいのかを明確にしている文章とそうでない文章の違いがよくわかかります。
    だからこそ、「国立大学法人九州大学職員」さんにいきなり補足されてしまっているのです。
    知識をひけらかすのはご自由ですが、国立大学の事務職員の文章力はこんなもんか、だから文部科学省から人を呼んでこないとダメなんだよ、と言われないように…と余計な心配をしてしまいそうです。
    少なくとも私はそう思いました。
    ちなみに私は職員じゃないので議論に加わるつもりはありませんので。。。