マイスターです。
現在、東京大学工学部・中須賀研究室と共同でスーパープログラムを実施しており、そのためほぼ毎週土・日は、プログラムの運営にあたっています。
■「スーパープログラム・ブログ:スーパー スペースシステムズ プログラム」(早稲田塾)
このプログラムのために、しばしば東京大学の本郷キャンパスを訪問するのですが、何度訪れても、あのキャンパスはすごいですね。
キャンパス全体が、日本の学術研究の歴史的文化遺産といった趣にあふれています。
一度も行ったことがない方は、ぜひ一度見学を。一番のオススメは、銀杏の葉が黄色く染まる季節です。
ちょうど今、旧東京中央郵便局の保存が議論されているようですが、建築史的な重要性はさておくとしても、長い歴史をもち、多くの人々の思い出に残ってきた建築物は、やっぱり失われると寂しいもの。
誰かにとっての青春の象徴だったり、大事な人生の一コマだったりするわけですからね。
というわけで、今日はこんな話題をご紹介したいと思います。
【今日の大学関連ニュース】
■「思い出の職場永遠に、九大女性職員らキャンパス見納め」(読売オンライン)
九州大の元・現職の職員ら女性34人が7日、移転を前にした同大六本松キャンパス(福岡市中央区)を見納めに訪れた。キャンパス内の保育所に子どもを預けて奮闘した現職員や30年以上六本松に勤務した元職員らがそれぞれの“歴史”を思い返し、キャンパスの最後を目に焼き付けた。
元職員松原克子さん(64)(同市城南区)らの呼びかけで県内から集まったのは30~80歳代。キャンパスを一周し、校舎や記念碑、集会所などを感慨深げに見て回った。
キャンパス南東に残る木造2階建ての教職員集会所「亦楽斉(えきらくさい)」を見て、現職員の上村千恵子さん(50)(同市城南区)と島田久美子さん(57)(同市早良区)が立ち止まった。建物の1階には、1973年から18年間、「ひまわり保育所」が開設されていた。教職員の子どもたち87人が同保育所を巣立った。
上村さんは同キャンパス在職中、長女と次女を3歳まで預けた。午前と昼休み、午後の3回、授乳のために保育所へ走った上村さんは「当時は産休も短く、乳児を預かる保育所も少ない時代に母乳で育てることができた」と感謝していた。
島田さんも「教員が古紙を集めては売った金を保育所の運営費に充ててくれた。本当にありがたかった」と振り返った。
(略)松原さんも1963年から42年間勤め、その半分近くを六本松で過ごした。幅広い学問分野の教員が職員と気さくに付き合い、「農学の先生の蛇やミノムシの話から、文学の先生の英語の話題まで、広く、深い知識が集まる場でした」としみじみ振り返りながら、「移転しても、六本松の伝統を受け継いで新しい大学の歴史を築いてほしい」と願っていた。
(上記記事より)
ぜひ上記の記事のリンク元で、全文をご覧下さい。
現在、九州大学は全学的なプロジェクトとして、箱崎地区、六本松地区、原町地区のキャンパスを統合移転した新キャンパス(伊都キャンパス)に居を移している真っ最中。
その過程で、六本松などのキャンパスから人がいなくなっているのですね。
そこで職員、および元職員の方々が、こうしてキャンパスと最後のお別れをしているのです。
このように、長い歴史の中で学生や教職員、地域の方々など多くの方々の思い出の場所になっていく点は、大学の魅力の一つだと思います。
■「九州大学・六本松地区」(九州大学)
1949年に、新制・九州大学が誕生。
その際に第一分校として統合されたのが、六本松の地にあった旧制・福岡高等学校です。
九州大学・六本松キャンパスの歴史は、そこからスタートしているのですね。
↓旧制高校の跡地をまわってレポートをまとめたサイトもありました。ご興味のある方はご覧下さい。
長く続いた場所の歴史が、一つの区切りを迎えます。
おそらく六本松地区には、旧制高校のものも含め、何らかの記念碑などが作られるのでしょう。
全国各地に、「○○学校跡地」や、「○○大学建学の地」といった記念碑が存在します。
今となってはその存在もあまり意識されなくなり、「知る人ぞ知る」といった記念碑もあると思いますが、もともとは、今回の記事にあるような方々の、
「どうか、この場所の歴史を忘れないでほしい」
……という想いが込められているのだと思います。
九州大学では現在、これまでのキャンパスを記録や記憶に残そうと、各種のイベントを実施しているようです。
■「イベント:『青春群像-さようなら六本松誌』刊行記念会」(九州大学)
■「九州大学ホームカミングデ-:さようなら そして ありがとう 六本松」(九州大学)
ホームカミングデーでは、六本松だけでなく、新しい伊都キャンパスを見学するツアーがちゃんと行程に組み込まれているのがポイント。
失われるものをただ惜しむだけでなく、新しい場所に気持ちを繋ぎ、記憶を伝承させるという点が意識されているのは、大事なことだと思います。
旧いキャンパスも、新しいキャンパスも、等しく大学に関わった方々の財産であることには、違いありません。
歴史や伝統を大事にしながら、新たな地で、新しい歴史を紡いでいってください。
以上、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。