弁護士のタマゴ達、就職先が見つからず?

マイスターです。

専門職大学院制度の第一号として社会からの注目度も高い「法科大学院(ロースクール)」。本ブログでもこれまで何度か、ニュースや用語をご紹介させていただきました。

ただ、新しいシステムであるだけに、学生さんや大学関係者の悩みも多いようです。

・調書の講義使用は『不可』 検察庁と法科大学院が対立
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50261219.html

↑実践的な教育を標榜するも、実際には実務と同じ訓練は難しかったり、

・「三振博士」とは?
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50131315.html

↑「大学院修了後、5年以内に3回」という司法試験の受験回数制限をオーバーしてしまう可能性もあって大変だったり、

・法科大学院 新司法試験に合格した学生は何パーセント?
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50247185.html

↑大学院によっては、司法試験合格率がゼロパーセントなんていうところもあったり、

・ニュースクリップ[-1/21]「司法修習卒業試験:落第者向けの追試を廃止 最高裁」ほか
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50283075.html

↑司法修習生になった後の卒業試験も、最近は合格率が下がっていたり、

とにかく、法曹になるまでの道は大変です。

しかし茨の道をを乗り越えて法曹資格を得られれば、そんな苦労も報われる……のかと思っていると、そうでもないようです。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「弁護士志望者:500人『就職困難に』司法改革で修習生急増、求人追い付かず」(MSN毎日インタラクティブ)
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20070208dde001040027000c.html
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司法試験に合格して07年中に弁護士事務所への就職を目指す2200人前後の司法修習生のうち、最悪の場合400~500人が就職先を確保出来ない恐れがあることが、日本弁護士連合会の調査などで分かった。司法制度改革の一環で合格者が急増する一方、求人数が伸びていないためだ。日弁連は先月「このままでは有為な人材を失い、弁護士全体の活力低下が大いに懸念される」として、全会員に採用増大を呼び掛ける緊急要請文を送った。企業や官公庁への働きかけ強化にも乗り出す。

(上記記事より)

司法改革を行うにあたり、従来以上の法曹が世の中に出て行くことは分かっていたわけです。
(というより、十分な数の法曹を送り出すために司法改革を行ったという言い方が正しいかも知れません)

ただ、法科大学院が予想以上にたくさん設立されたことなどもあり、当初の計算は合わなくなっています。7~8割と言われていた法科大学院卒業生の司法試験合格率も、実際には48%(注:法学既習生だけの数字)でした。供給が需要を上回っているのです。

予定より若干厳しくなった合格を見事勝ち取った方々は、その分希望に添った進路につけるのかと思いきや、まだ安心できないわけですね。

記事には以下のように書かれています。

司法試験合格者は99年に初めて1000人を突破。法曹資格を得る司法修習終了者の数も年々増加しているが、需給バランスはほぼ保たれてきた。約1500人が修習を終えた昨年も、求人数が弁護士志望者数を上回っていたという。

従来の司法試験と新司法試験の合格者の両方が修習を終える07年は、終了者数が06年比で約1000人増の2400~2500人に上り、その約9割が弁護士事務所への就職を希望すると見られている。
(上記記事より)

つまり従来の司法試験と新司法試験の合格者(法科大学院卒業生)が同時に修習を終えて雇用市場に出るタイミングだから、需給バランスが崩れてしまったということみたいです。
となると、ここ数年だけの一時的な現象で終わるのかもしれません。逆に言うと、ここしばらくは就職で激しい競争が繰り広げられるということでしょう。
こうしている間も次の「タマゴ」達が学んでいるわけで、来年は来年で大変です。何年も職を得られない方だって、出てくるかも知れません。

日弁連の飯田隆副会長は「後進の育成は弁護士全体の責務だという意識改革が重要」と強調。修習終了者は11年には年間3000人に達する見通しで「今後は企業や官公庁にも弁護士を採用するメリットを理解してもらえるよう働きかけたい」と話している。
(上記記事より)

企業や官公庁に売り込みをかけるのには大賛成です。

元々、法学未習者に法曹への道を開くという意味合いも持っている法科大学院制度。
例えば「メーカーで働いていたけれど、法科大学院に進学して弁護士を目指す」なんて方もいらっしゃるかと思います。
このように法学以外のバックグラウンドを持っている方々は、従来のような法廷弁護士としてだけでなく、知的財産権の扱いやM&Aに強い企業弁護士として活躍する手もあります。世界的なメーカーであれば、多少高いコストがかかっても本当に実力のある人材を社内に置こうと考えるかも知れません。

今のところ弁護士の雇用には及び腰とのことですが、自治体や官公庁にもPR活動をするといいですよね。
それが難しいのなら、

「弁護士事務所に対して自治体や官公庁が、今以上に様々な仕事を依頼する状況を作り、結果的に弁護士事務所の人材募集を活発にする」

という形のPRでも良いと思います。弁護士の仕事を多様化させ、色々な場面で活躍できるようにするのです。

最近では司法書士の方々が、「身近な法律のプロ」「ホームロイヤー」といったキャッチフレーズで、積極的に自分達の存在を社会にアピールされているようです。
(電車の車内広告でもよくこういったものを見かけます)

いずれにせよ今後弁護士がどんどん増えていくのは確実ですから、弁護士でもこういったPRに力を入れていかないといけないのかも知れません。
「約9割が弁護士事務所への就職を希望」と記事にありましたが、法科大学院の学生の皆様にも、従来の弁護士とは違った新しい活躍の仕方があることを早めにお伝えしていくと良いのかも知れませんね。

法律のプロが身近にいたら心強いだろうな、とマイスターは思います。
社会からの期待は大きいと思いますから、せっかく大学院や司法修習で苦労して身につけた知識やスキル、世の中のために活かしていただきたいです。

以上、マイスターでした。

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(参考)
コトラーのプロフェッショナル・サービス・マーケティング

マーケティング界の大御所、フィリップ・コトラー氏の著作です。マーケティングや商品企画に携わるビジネスマンの方はよくご存じでしょう。
この本では医者や弁護士、公認会計士といった専門職の方々のサービスを「プロフェッショナル・サービス」と定義し、それを顧客や社会に売り込むための戦略について解説しています。
今後、日本は知的基盤社会になっていくと言いますから、知的プロフェッショナルを目指す方は1冊お手元に置いておくといいかも知れません。

本書はどちらかというと独立した事務所を持って活動する「士業」の皆様向けの内容ですが、研究者や大学アドミニストレーターの皆様にとっても、一度読んでみる価値があるかも知れません。類書が他にほとんどないですし、なかなか面白い内容です。

1 個のコメント

  • 法科大学院はボクの大学でも噂になりました。なんせ新しい校舎が一つ建ちましたから(笑)
    ただ、そこまで勉強したのに報われる人が半分以下とは厳しい現実ですね。日本の大学院は、意外にきょうつけなくてはいけない世界かもしれません。