「顧客我慢」を減らす方法を考えてみよーう!

ご近所学園祭報告のついでに、もう一本おつきあいください!
秋の夜長にマイスターです。

先日、「経験経済」という考え方についてご紹介いたしました。
詳細は、『[新訳]経験経済』を読んでいただきたいのですが、この経験経済に関連して、もうひとつ面白い言葉がありますので、そちらも簡単にご紹介しておきたいと思います。

それは、

「顧客我慢」という考え方です。

みなさん、書店のビジネス本コーナーなどで
「顧客満足度を上げよう!」なんてフレーズ、見ますよね。

顧客満足度は、「CS」(customer satisfaction)なんて略されることもあります。
現代のビジネスでは、このCSを向上させることが、非常に重要なこととして扱われています。

「どれだけこの店のサービスに満足できましたか?」
「お料理のお味はいかがでしたか?」
「店員の対応に不手際はございませんでしたか?」

のように、アンケート等を駆使して企業は顧客満足度を測ろうとします。

(※ちなみに某飲食系コンサルティング会社は、こうした顧客満足度を計るためのネットアンケートシステムを構築し、それをクライアントに導入させて使用料を稼いで儲けています。彼らが好きな言葉は「顧客満足度を上げましょう!」です。つーか、それしか言いません)

でも確かに、この顧客満足度を向上させることは、言うまでもなく非常に重要なことです。
こうした取り組みについては、みなさんもどこかで一通りのことを耳にされているでしょうから、ここでは詳細はご説明いたしません。

しかし、ここでもうちょっと、違った概念を持ちだしてみましょう。

それが、「顧客我慢」です。

顧客我慢とは一体何か?

『[新訳]経験経済』では、「顧客満足」と「顧客我慢」を、それぞれ以下のような式で説明しています。

【顧客満足】
 = 顧客が得られると期待しているもの
   - 顧客が得られたと認知しているもの

【顧客我慢】
 = 顧客が本当に求めているもの
   - 顧客が(心ならずも)受け入れたもの

例を挙げましょう。

最近のオーディオコンポには、実に様々な機能が取り付けられています。
ビデオカメラやラジカセ、パソコンなども同様です。
毎年、新機能がどんどん追加され、一体何ができて何ができないのか、持ち主にもわからないくらいの「進化」を遂げています。

メーカーは、「そうした機能のうちのどれかが顧客に魅力的であって欲しい」と願って作っているのですね。
でも、そうした機能のほとんどは、おそらく使われないままです。
メーカーは「平均的な顧客」というイメージをターゲットにして製品を開発しますが、実際にはそのイメージ通りの消費者なんて、ひとりも実在していないのですから。

その機能のせいで、多少なりとも製品価格が上がっているのでしょうから、消費者としては「そんな機能はつけないでくれ!私の欲しい機能だけを提供してくれ!」と思うでしょう。

しかしそうした声が「顧客満足度調査」で表れてくることは、滅多にないのです。

余計な機能がついているにしろ、顧客はその製品全体には「満足」していることになっているわけです。
彼らだって故障でもしない限り、メーカーにクレームを寄せることはないでしょう?
そもそも顧客はこうした余計な機能を受け入れることに慣れてしまっているのです。
わざわざ「この機能、要る?」と聞かれでもしない限り、不満を口にすることは滅多にありません。

ここで考えるべきは、

「顧客は、この製品を買う時、どれくらいの我慢を受け入れているのだろう?」

ということなんです。
そう考えれば、余計な機能について考えを巡らすこともできたはずです。

もう一つ、本書に掲載されている例をご紹介します。

飛行機の中で客室乗務員が、「お飲物はいかがですか?」とカートを押しながら聞いてくる場面をご想像ください。

-頑固なペプシ・ファンならば当然ペプシを注文するが、(多くの)航空会社では「コークでよろしいでしょうか」と返事をされる。ここでたいていの乗客は自分の本当に欲しいものをあきらめて、コークを飲むことにする。コークで我慢するわけだ。二回目、三回目、もしかしたら四回目も同じ航空会社で、同じ質問と注文と答えが繰り返される。やがてはペプシ・ファンも状況を受け入れて、何と自ら「コークを」と注文するようになるのだ!
航空会社は、好みの飲み物を載せていない事実を学ばせて、顧客が代用品を期待するよう訓練したのだ。ここに至り、皮肉にもこの航空会社は「期待に応える」ことができたわけだ。(略)
航空会社からすれば、この人も満足した顧客の一人に数えられる。顧客は常に「自分の期待したもの」を受け取るからだ。-
『[新訳]経験経済』より)

言うまでもなく、これは作られたニセ物の満足です。
航空会社は、「顧客は満足している」と考えるかも知れませんが、

「顧客は、何かの『我慢』を受け入れることを強要されているのではないか?」

という発想で考えると、表層に表れている顧客満足が、偽りのものだと気づくはず。
ここには、もっと少ない「我慢」で顧客に対応する方法が隠れているはずです。

以上が、【顧客我慢】という考え方です。

いかがでしょうか?

本ブログは大学職員が書いているので、やはり学校について考えが及ぶのですが、

学校は、様々な「顧客我慢」がひしめき合っている業態だと思います。

みなさんも、想像してみてください。

自分が、新入生として自分の勤める大学に入学したとします。
するといかがでしょう、あなたの大学には、
「これはこういうものだから仕方ないよね」
と、同意を強制されるものが、山ほどありませんか?

あるいは、社会人入学生として編入する場合や、何らかの障害を持って入学する場合を考えてみてください。
もっと、こうしたサービスの強制は増えたのではありませんか?

卒業するまでの間、
大きな問題から、細々とした不満まで、
いったいあなたはどれだけの我慢を受け入れているのでしょうか?

(おっと失礼、卒業してからも、大学との関係は続きますね)


その「顧客我慢」を一つずつ潰していくことで、大学の提供する「経験」の価値を高めていけるのではないでしょうか。

まずは具体的な「顧客我慢」を想像してみるが、第一歩ですよね。
それが、何か改善すべき点を見つけるヒントにつながるかもしれません。
ぜひ、お試しあれ。
これは大学だけでなく、初等中等教育の関係者やNPO、公務員、民間企業におつとめの皆様にも広くご利用いただけるメソッドです。

というわけで、今日ご紹介のワードは【顧客我慢】でした。

勤労感謝の日もブログは休まないマイスターがお送りしました。