ハーバード大学の基金運用担当者

最近寝不足のマイスターです。

実はこのブログ、最近、午前2~4時くらいの間に更新されることが多いです。

そして実は、深夜0時から4時間での間に本ブログにアクセスされる方が、毎日数十人くらいはいらっしゃるわけで、そんなみなさまには更新が遅れているのがバレバレです。
(しかし、お互い体調には注意しましょうね~)

昨日のニュースクリップで、ハーバード大学の大学基金について、ちょっと触れました。

-ところで日米の大学を比較する時に、独自の基金を持っているか否かという違いは、必ずと言っていいほど言及されます。

米国の大学でも飛び抜けて巨額の基金を持つハーバード大学の場合、その運用額は2005年6月の時点でなんと259億ドル。およそ2兆9785億円です。慶應義塾大学の100倍ですね。

極めて優秀な運用担当者がいたこともあり、絶好調だった2005年度の運用利回りは19.2%。単純計算してみると…な、なんと基金の運用収益だけで、ざっと5,700億円も儲かってますがな!

2位のイェール大学と比べても、ハーバードの基金が扱う額は倍以上であるとのことですから、日本の大学との比較対象とするにはあんまりなのですが…
いやしかし、世界を舞台にした場合、こんな組織と学術研究や人材育成の面で競うわけなのですね。-

…と、こんなことを書かせていただいたのですが、忘れないうちに、これについて補足をしておきましょう。

【教育関連ニュース】——————————————–

■「Harvard’s $12 billion man – 2004/10/29」(ハーバード留学記)
http://hbslife.exblog.jp/757528
■「Managing Money Managers – 2005/2/1」(ハーバード留学記)
http://hbslife.exblog.jp/1901198/

■「約3兆円!ハーバード大基金運用の行方は?」(PJニュース livedoor掲載)
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__1467998/detail

・大学基金:出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E5%9F%BA%E9%87%91
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ハーバード大学の基金については、上記の記事に詳しいです。
(特に「ハーバード留学記」はオススメ。普段からよく拝読しています!)

ハーバード大学が、他の米国の一流大学と比べても、圧倒的な規模の基金を運用しているのは先日申し上げましたが、その裏には、非常に腕のいい、ファンドマネージャーがいたのですね。

その名は、ジャック・メイヤー氏。

NIKKEI NETの記事によれば、ハーバード大学基金を、1990年の47億ドルから226億ドルに拡大させたとのこと。
1兆円以上の超過リターンを稼ぎ出したのですから、大変な運用成績です。

ところが、彼のこの働きに対する報酬額に、批判が集まりました。

こうした運用担当者の報酬は、基本的に「成果報酬」です。
ジャック・メイヤー氏とそのチームは、1990年の契約当時にはだれもが想定していなかったような規模で成果を上げたので、結果として、支払われる報酬も膨大になってしまいました。

基金の運用を担当する責任者数人の年収が、なんと数十億円にも達していたそうです。

日本でもアメリカでも、基本的に大学は非営利組織ですから、この高額な報酬に対して、批判が寄せられました。

そして結局、ジャック・メイヤー氏は辞任することになったのです。

「ハーバード留学記」では、この件について、以下のように述べられています。

-…今回の結果、ハーバードは経済的に損をする。運用担当者との間では、成功報酬8%で握っていた。もちろん、報酬規定を作った14年前には、彼らが数10億円の報酬を得ることになるとは夢にも思わなかったのだが。これを外部の凄腕マネージャーに頼むとなると、業界のスタンダードは成功報酬20%だ。卒業生の寄付によって成り立つ大学基金の運用によって、巨額の報酬を得ている人がいることに対して感情的に反感を覚えるのは仕方がないとしても、同じ結果を得るためには、彼ら以上の手数料を払わなければならないわけだ。しかも、世の中を探してみても、彼らほどの成績を上げられるチームがどれだけいることか。-ハーバード留学記より)

マイスターも、同感です。
批判はわかりますが、結果としては、ハーバードにとってはプラスの結果にはなりませんでした。
メイヤー氏ほどの人材はそうそう得られないでしょうし、ましてこのような辞任劇があった以上は、いたとしてもハーバードには来ないでしょう。

とは言え、このテーマって、考えるとけっこうややこしい問題を孕んでいますよね。

大学は非営利組織です。
その原理原則にそのまま従えば、収益の最大化を求める活動は、基本的にNGということになります。
…それでいくと、(HMCという運用組織を間に挟んでいるとしても)そもそも、成果報酬を求めて巨額のリターンを持っていくプロを雇うこと自体、なんだか矛盾っぽく思えてきます。

でも一方で、非営利組織であっても、マネジメントのために、保持している資産を最大限有効に活用することは必要なわけで。

うーん。

マイスターは基本的に合理主義者なので、結果として、教育と研究に最大のパフォーマンスが得られるのであれば、こういう巨額の報酬もアリだと思うのですが、
問題視される方も大勢いらっしゃることでしょう。

ちなみに、ハーバード大学の基金運用を紹介した記事は、これ。

■目からウロコのポートフォリオ設計塾:第4回 ハーバードのポートフォリオ
http://www.tabisland.ne.jp/news/library.nsf/
13f06819f58ff78549256fab00230352/2ef27bb3140d359149257065001bce68?OpenDocument

-彼らの基金運用は、日本の大学のそれとはまったくイメージが異なります。運用資産が、なんと、2兆4000億円。ちょうど北朝鮮のGDPと同じ金額です。総勢170人のスタッフたちが、机の上に積み上げられたいくつものディスプレイに神経を尖らせて運用業務を行う有様は、まさに投資銀行そのものであり、とても大学の事務室とは思えません。-(上記記事より)

すさまじいです。
こうなると、もはや、非営利とか、営利とかいったラベリングが、無意味なように思えてきますね。

そして、メイヤー氏のその後。

■「米ハーバード大学基金の元責任者がヘッジファンド設立(2/3)」(英フィナンシャル・タイムズ特約:NIKKEI NET掲載)
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/media/20060203NTE2IFT0503022006.html

さすがです。
実績があるからでしょう。既に50億ドル超もの運用資金を調達しているとのこと。
マイスターが資産家だったら、やっぱり、こういう方にお金を預けたいですもん。

「金融業界トップクラスのプロを、大学が活用する」という図式なのですね。

日本では、なかなかこういう事例は見ません。

最後に、メイヤー氏の後任の方に関する記事。

■「Harvard を攻める!:HMC の新理事長El-Erian とは」(永田清の「英語力でキャリアアップ」)
http://www.imca.co.jp/ad/magazine/html/nagataenglish_17.html

おそらく、前任者を上回る成果を上げられるとは、思われていないのでしょうね。
そりゃそうでしょう。
後任も大変です。

以上、今日はちょい短めのマイスターでした。

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