大学webサイトの考え方(5):「お問い合わせ」コンテンツを軽視すると失敗する(後編)

マイスターです。
「大学webサイトの考え方」というテーマの連載を、気が向いたときに書かせていただいています。(適当でごめんなさい)

今日は、昨日の続きで「お問い合わせ」に対応するときに気をつけておきたいことについてご説明します

突然ですが、イメージしてください。
ユーザーから、あなたの大学へメールでお問い合わせが来たとします。
内容は……何でも結構です。例えば、

「経営学科に入りたいと思っている高校生なのだけれど、自分は将来、福祉の世界で働くことにも興味を持っている。そういう業界に関連した授業があるのか、福祉関係の資格でどういうものがとれるのか教えて欲しい。またそういう進路を選んだ卒業生が現在どのくらいいるのかも、参考として知りたい」

という質問だったとしましょうか。

これに対する返答として、最悪なのはこんなのです。

「大学案内に書いてありますから、そちらをご覧ください」

(「webサイトに書いてありますので、そちらをご覧ください」とだけ書いて、該当ページのURLを教えてくれていない返答も同じです)

これ、聞いた側からすれば、何にも答えてもらえていないんです。でも、回答した側からすると、ちゃんと回答した気になってしまうんですね。危険な落とし穴です。
(「説明するので直接キャンパスにお越しください」というのは、質問の内容によっては有りですが、基本的にはNGです。キャンパスに来られないからメールで問い合わせているわけですし)

え、まさか自分のところでは、そんな失礼な返答をしているはずないって?
いやいや、そうとも限りませんよ。

不思議なことなのですが、世の中にはなんとなく

「カウンターの窓口だったら絶対にやらないような不親切な返答も、何故かメールだとあまり気にせずやってしまっている」

という傾向があるようなのです。
(ちゃんと調査したわけではなく、マイスターの個人的な経験から感じることなのですけれど)

メールでお問い合わせの返事をする場合は、担当部署の職員が直接回答するケースが少なくないのではないかと思います。「○○さーん、こんなメールが来てたから、対応しといて~」なんていって、メールがそのまま「丸投げ」の形で転送されてきた……なんてケース、皆さんもご経験があるのではないでしょうか。

でも現場の担当者が全員、普段からメールでのお客様対応に慣れている方だとは限りません。自分の業務もたくさんある中で、ひとつひとつのメールにそれほど時間を割けないという事情も加わります。
その結果、「大学案内をご覧ください」「webサイトをご覧ください」といった、「手抜き回答」も飛び出すことがあるわけです。
ここまでひどい手抜きではなくても、「こちらが回答しやすい部分だけはちゃんと答えるけれど、答えにくい部分は適当」みたいなことだってあるでしょう。

こういった問題を未然に防ぐ方法ためには、すべての回答を、特定の部署(通常は広報課)が行うようにすることです。

まず、すべての質問を一度広報課が受け取ります。そして、広報課の職員が、各担当部署に「こんな質問がきているけれど、ウチではどうなってたっけ?」と直接確認をとって、回答に必要な情報を集めます。そして、その広報課の職員が、返答のメールを書いて送信します。
これなら、広報課の職員がちゃんとした対応に努めている限り、そうそうひどいことにはなりません。

実を言うと、先ほどあげた質問の内容は、大学によっては教務課と就職課など、二つ以上の部署にまたがるものです。ですからなおさら、広報課(もしくはお客様対応を担当する専門部署)がすべての窓口になり、ユーザーの代わりに情報を集めて整理してあげることが大事なのです。

企業でも通常は、こうした仕組みを採っているところがほとんどでしょう。
ただ、以前は企業の対応もひどいものでした。マイスターが以前いたwebプロダクションでは仕事の参考にするため、企業のサイトで実際に「ちょっと込み入った内容のお問い合わせを送ってみる」、ということをしばしばしておりました。すると、超がつくほどの大企業が、上記のようなひどい手抜き回答を送ってくることがあったのです。企業ですら、webサイトでのお客様対応となると、店舗での窓口対応と比べてレベルがガクッと落ちる、ということがよくわかりました。
ただ、現在では、企業はそういった状況をかなり改善してきているはずです。心ある企業は、サイトを全国の店舗のカウンターと同じように考えるようになってきています。

ちなみに、上記はメールでの問い合わせに対する返答についてですが、電話で質問が寄せられたときも基本的には同じ。ユーザーが大学に詳しい方で、担当部署に直接、明確な質問をしてきたのなら別ですが、そうでない場合は広報課が窓口になるべきです。

電話の場合、すぐには正確な情報がわからない、確認が必要だということも多々あるかと思います。その場合は面倒でも先方の連絡先を伺い、詳しい内容を調べた後でこちらから折り返すのが基本です。

電話対応の仕方については、「ライター石渡嶺司のブログ」で非常に丁寧に解説されていますので、こちらをご覧いただいた方が良いと思います。

■「広報上手・出題編2/電話対応、どこまでやる?」(ライター石渡嶺司のブログ)
http://reiji0.exblog.jp/5791323/
■「広報上手・ケース編2『電話対応』」(ライター石渡嶺司のブログ)
http://reiji0.exblog.jp/5806427/
■「広報上手・解説編2『電話対応」その2」(ライター石渡嶺司のブログ)
http://reiji0.exblog.jp/5828518/

石渡氏は実際、非常に多くの大学を取材してこられた方ですから、そんな方がこうした記事を書かれているということはつまり……けっこうひどい対応をする大学が少なくないってことなのでしょうか。うーむ、いけませんね。

「お問い合わせ」についてはもっと色々書きたいところですが、長くなってきたのでこの辺で。
でも最後に一言だけ。

「お問い合わせ」は、非常に強力な広報手段です。興味を持った方が直接あちらから、コミュニケーションを働きかけてくださっているわけです。うまく対応すれば大学のファンになってくれるかもしれませんし、逆におかしな対応をすれば即座に見限られます。非常に重要なチャンスなのです。ですから「100点」の回答では不足で、「120点」の回答を目指すべきです。「試しに問い合わせてみたけど、あの大学はとても対応が親切だなぁ。ビックリした」と思わせられるように心がけましょう。

しかし上述したようにwebサイト経由だと何故か対応がおざなりになってしまいがちですので、ぜひ、「お問い合わせ」を千載一遇のチャンスだと考え、メールでも電話でも120点の回答を出せるように、学内の体制を見直してみてください。

さしあたってはまず、(あんまり大きな声では言えませんが)試しに自分の大学に充てて、仮名で何らかのお問い合わせを送ってみることをお勧めします。その際は大学側の都合など考えないで、ユーザーの立場に立った質問をするように心がけましょう。
質問する立場に立ってみると、自分の大学の対応力が「次第点」なのかどうかすぐにわかりますよ。

以上、マイスターでした。