マイスターです。
海外の話題をいくつかご紹介します。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「【社説】世界各地に続々出現する韓国の「教育難民村」」(朝鮮日報)
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2007/01/09/20070109000033.html
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中央大の張致順(チャン・チスン)教授の研究グループは、韓国国民が海外への留学や研修に使う費用の総額が、2011年には103億ドル(約1兆 2235億円)になるという予測を発表した。2000年に10億ドル(約1188億円)だった海外留学・研修費が、11年で10倍になるというわけだ。今年1年間の海外留学・研修費は45億7000万ドル(約5432億円)になると推定している。
(略)これでは、親たちが教育環境やカリキュラムの優れた国へ子どもたちを行かせようと思うのは無理のないことだ。
教育をつかさどる省庁が本来なすべきことは、良質な学校をもっと多く作ることだ。それができないのならば、東南アジア諸国がやっているように、先進国の著名な学校を誘致し、教育界に刺激を与えればよい。数年前から、シンガポールの米国系、英国系の中学・高校には韓国人生徒の入学が相次いでいる。タイの国際学校107校や、中国・北京の国際学校 30校でも同じ状況にある。米国、英国、カナダはもちろん、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、タイ、香港など各国の街角に、韓国人の母親と子どもたちによる「教育難民キャンプ」が続々と生まれているという現実に対して、韓国政府は一体いつまで目をつぶっているつもりなのだろうか。
(上記記事より)
韓国では、「高校平準化」という政策をとっています。国公私立すべての学校(普通科のみ)を学区に分け、共通試験の合格者を学区内の学校に抽選で機械的に配分するというの政策が、「平準化政策」です。かつて受験競争が過熱化したことがあり、今ではその反動で、高校の序列化を非常に恐れているのですね。
(過去の関連記事)
・韓流受験戦争の後ろにあるもの ~韓国の大学事情~
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50102792.html
しかしその結果、「子供を早いうちから海外で学ばせよう!」と考える親が急増しているのでは? と、この記事は指摘しているわけです。
最近では、テレビなどでも、「子供が母親と一緒に早期から海外に留学し、父親が韓国で留守番している」様子などがしばしば取り上げられるようになってきました。そういった番組では、特に「語学力は成功のために必須」と韓国の親たちが考えているということが紹介されます。
そんな番組を見ていると、韓国の親が子供を海外に連れて行く一番の理由は語学だと思えてしまうのですが、この記事にあるように、平準化に象徴される韓国中等教育への不満も、多かれ少なかれ、あるのかもしれませんね。
続いては、↓こちら。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「世界の経営大、続々進出 シンガポール 教育(8)」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/international/weekly-asia/TKY200611280155.html
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教育・研究分野でもアジアのハブ(中心地)に――シンガポール政府は98年、「グローバル・スクールハウス」構想を打ち出した。
教授陣や学生、大学関係者が集まれば消費が増える。大学の集積で研究型企業の誘致に弾みがつき、留学生がそのまま働いてくれれば、人手不足も補える。構想を推進する経済発展局(EDB)によると、現在の経済成長を続けるためには、毎年1万人の人材を確保する必要があるという。
この構想を受け、米シカゴ大学ビジネススクールやINSEADなどのほか、米マサチューセッツ工科大学、独ミュンヘン工科大学などが次々進出を決めた。08年までに世界の有力大学10校を誘致するという目標を上回り、すでに16大学の誘致に成功している。
EDBの担当者は「現在の留学生は7万人で、国内総生産(GDP)への寄与は3.6%。これを15年までに15万人、5%に引き上げたい」と意気込む。
(上記記事より)
海外の大学を積極的に誘致し、「教育・研究でアジアのハブになる」ことを目指すシンガポールの取り組みを紹介している記事です。
グローバル!という印象を感じさせる言葉が目白押しで、とても華やかですが、この記事は「問題点」についても触れています。
「英国や米国のMBAが取得できます」。毎日、新聞にこんな広告が掲載される。ビルの一室などを使った講義と、欧米の大学院と提携した通信教育でMBAが取得できるとうたうビジネスが盛んだ。その数は100を超えるとも言われるが、教育省も「正確な数は把握しきれない」という乱立ぶり。教育水準のばらつきも指摘されている。
あるビジネススクールの担当者は「我々は学位を与えるにあたって厳しい条件を守っている。しかし、コースの乱立は、学位そのものの価値を下げてしまうかもしれない」と懸念する。
(上記記事より)
と、課題もあるようです。
とは言え、通常は「いかに自国の大学を世界レベルに育成するか」ということを考えるのが普通ですから、シンガポールのこうした取り組みはやはり新鮮に感じられます。あくまでも保護ではなく、競争原理で大学を鍛え上げようということなのでしょうか……?
(今度、機会があればちゃんと調べてみたいと思います)
シンガポールの若者達は、母国の大学も含め、どういった思いで大学選びをしているのでしょうね。聞いてみたいです。
最後に、↓インドについてのごく最近の報道をご紹介します。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「インドが外資規制の緩和加速、鉱山探査や大学など」(NIKKEI NET)
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20070110AT2M0902709012007.html
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インド政府は外資規制の緩和を加速する。鉱山探査事業や大学を外資に開放するほか、保険や民間航空への出資上限を引き上げる。小売部門でも家電量販店に外資が参入できる道を開く。インドは各国と自由貿易協定(FTA)締結を急いでおり、産業の開放を通じて競争力を高め、雇用を増やす狙いがある。今年度は前年度比倍の約110億ドルに達する対印外国直接投資も、規制緩和でさらに拡大しそうだ。
(上記記事より)
中国と並んで急成長中のインドが、大学を外資に開放するとの報道です。
「外資に開放」というのが、イコール「大学の大学が、本国と同じような内容で活動できるようになる」というわけではないかもしれませんが、ちょっと気になる報道ではあります。
以上、海外の報道を3つ、ご紹介しました。
韓国の記事は中等教育で、シンガポールとインドは高等教育ですから単純に比べることはできませんが、
「海外と国内の教育レベルの差や、教育環境の違いをどうとらえるか」
「国内の教育産業と、海外のそれとを、どのように関係させるか」
ということについて、それぞれの記事から考えさせられるものがあるなぁと思い、取り上げてみた次第です。日本は、またこれらの国とは違った事情を抱えていると思いますから、「他国で成功しているから我々も!」と単純に考えてはいけないでしょう。ただ、良い点悪い点の両方を含め、参考になる部分もあるかと思います。
以上、マイスターでした。