じめじめした天気にまいっているマイスターです。
さて、日曜日になりましたので、一週間集めたニュースクリップの中から、これはと思うものを独断と偏見でご紹介します。
高校の内容を「到達度検定」で測定?
■「高校生に到達度検定 大学入試に活用も 文科省検討」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/national/update/0713/TKY200707130486.html
文部科学省は、高校での学習状況を評価するため在学中に検定試験を実施することの検討に入った。大学入試の合否判定資料としても活用することで、全国で昨年相次いで発覚した必修科目の未履修問題のような、大学入試を過度に意識した一部の高校のあり方を是正することを期待する。その一方、大学側が検定をどう活用するのか未知数の部分もあり、同省は幅広く意見を聞いて実現の可能性を探る方針だ。
文科省は、13日に開かれた中央教育審議会(文科相の諮問機関)の教育課程部会に提案。導入を検討すべき理由として(1)高校卒業までの到達度評価は結果的に、大学入試の合否で決まってしまっている(2)高校や第三者機関が学習成果を客観的に評価し、大学が選抜に活用する仕組みが考えられる――ことを挙げた。
この案には複数の委員が賛同。「大学入試センター試験を資格試験のような形としたうえで教科ごとに2級、3級といったグレードをつけ、大学ごとに入学のための条件を設けることも考えられる」(市川伸一・東大教授)、「履修したことを認定する第三者機関があれば、高校教育もより妥当になる可能性がある」(渡久山長輝・元日本教職員組合書記長)などの意見が出た。
実施する場合はセンター試験のように高校の終了段階ではなく、「在学中に受けられたり、複数回の受験が認められたりすべきだ」という検定の方法に踏み込んだ意見もあった。
(略)
学習指導要領を検討する同部会は学校教育法の改正案が成立したことを受けて、年明けの答申を目指して作業中。検定制度の導入を含めた到達度評価のあり方についても検討する。答申を受けて指導要領が年度内に告示された場合、早ければ11年春から施行される。(上記記事より)
「7・5・3」という言葉があります。授業の内容が理解できている児童・生徒は、小学校で7割、中学校で5割、高校で3割だとする言葉です(この後にやってくる「大学」での学力低下が進んでいるというのも、むべなるかな、です)。
教わったことをすべて理解できていなくても、日本では、次に進学できます。
「卒業試験にパスしなければ卒業できない」という出口チェックが日本にはありません。出口ではなく、「次の進学先の入学試験にパスするかどうか」という入口チェックに頼ってきたわけです。そのため、大学受験を3教科で受けると早々に決めてしまった高校生は、該当教科以外については内容をあまり理解していなくても、けっこう卒業できてしまうわけです。これは、日本の教育制度の問題のひとつとされています。
この問題を改善するにはどうすればいいか、ということで「センター試験の資格試験化」であるとか、「高等学校卒業程度認定試験」の大学入試活用であるとか、様々な議論があるわけです。
上記の報道の「検定」案も、そういった話の延長線上にある物だと思います。
加えて、センター試験が段々と大学の合否判定に使えなくなってきているという話もあります↓。
(過去の関連記事)
・センター試験の得点が4割以下でも入れる大学、62校(2007年05月05日)
https://unipro-note.net/wpc/archives/50310752.html
そんなわけで新たに浮上してきた「到達度検定」案。
「大学入試センター試験を資格試験のような形としたうえで教科ごとに2級、3級といったグレードをつけ、大学ごとに入学のための条件を設けることも考えられる」なんて意見も出ているようです。実施する場合は、「在学中に受けられたり、複数回の受験が認められたりすべきだ」とも。
もしこれが本当に実現したら、日本の高校での教科指導がかなり変わりそうです。
今後、どのように展開されていくか、要注目です。
学内感染。
■「順大生24人が赤痢症状…細菌培養実験中」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20070713-OYT8T00050.htm
順天堂大医学部(東京都文京区)で、細菌学の授業で赤痢菌などの培養実験を行った医学生24人が発熱や下痢など赤痢の症状を訴え、このうち7人が入院したことが12日、分かった。いずれも軽症で快方に向かっているという。
(上記記事より)
実験や実習は、大学の授業にはつきもの。医学部なら、こういった事故が起きる可能性は常にあるわけです。
ただ、やはり起きてはならないこと。現在発症している学生さん方のケアと、再発防止のための改善案が求められます。
博士課程の学生に奨学金「給付」。
■「横浜国大、博士課程入学者に最高360万円」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20070713-OYT8T00050.htm
横浜国立大大学院工学府が今年度から、大学院博士課程の入学者に最高360万円を支給する制度を導入した。国立大では最高水準の支援という。國分泰雄・工学府長は「優秀な学生が経済的な理由で進学をあきらめないようにしたい」と話す。
出願前に、研究の業績や計画に基づいて毎年10人程度を内定する。原則として3年間、毎月10万円または5万円を支給し、3年間で最高360万円になる。授業料免除や各種奨学金との併願も可能。今年度は8人が決まっている。
米国では博士課程の学生はTA(ティーチングアシスタント)やRA(リサーチアシスタント)などとして、給与をもらいながら研究するのが普通だが、日本では逆に授業料(同大では年額53万5800円)を払って研究するのが一般的だ。
(上記記事より)
経済的な理由で学び続けられないという事態は、いいことではありません。博士課程ともなると、貸与制の奨学金はかなりの確率で申請が通りますが、やはり大変は大変です。
そこで横浜国立大学は、「独自の」給付制度で、博士学生をサポートするそうです。
先日、教育再生会議が、東大を始めとする国立大の大学院について、「自校の関係学部の出身者を3割以下に抑える」という方針を打ち出したばかり。
大学院は今後、優秀な学部学生を他大学と奪い合うことになります。そんなときに、こういった制度の充実というのも大きなポイントになるのでしょう、きっと。
開示の必要有り?
■「奨学寄付金の企業名を、大学は開示求める 内閣府審査会」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/national/update/0712/TKY200707120455.html
内閣府の情報公開・個人情報保護審査会は12日までに、高知大学が保有する企業からの奨学寄付金の記録について、企業名を開示するよう求める答申を出した。同様の文書で大学に企業名開示を求める答申は国では初めて。
同審査会は05年1月、企業名を不開示にした大分大学の決定を「妥当」とする答申を出したが、今回はこれを覆した。05年の答申を理由に開示を拒む大学は多く、今後見直しが進む可能性がある。
(上記記事より)
こちらも奨学金の記事ですが、内容はこの通り。
企業からの奨学金について、「どの企業からどのくらいもらったか」を、開示せよとのことです。
報道には、
同審査会は、答申で企業名を明らかにしても、企業活動に影響を与えるほどではないと判断。さらに「企業と国立大学との関係の透明性を確保し、あらぬ疑念を抱かせないためにもその実態を明らかにする意義は大きい」とした。
(上記記事より)
との記述も。「あらぬ疑念」というのが、ここでの争点のようです。
世界最古の大学、復元?
■「ナーランダー大学、復元に向けての第一歩」(Voice Of INDIA)
http://www.voiceofindia.co.jp/artdisplay.php?art_id=200707132302&art_aid=2303&art_sid=16&art_ssid=17&news_category=Tourism&news_subcategory=Historical&setlang=jp
7月13日、シンガポール(UNI):ビハール州に位置する世界最古の大学、ナーランダー大学の修復プロジェクトに向けての会議が、13日から3日間に渡りシンガポールで開催されている。このプロジェクトは、インド政府が発足したナーランダー・メンタル・グループによって行われる。
ノーベル賞受賞者のアマルティヤー・セン教授を会長とするナーランダー・メンタル・グループは、今回の会議でナーランダー大学への国際協力、管理構造、財源などの枠組みについて話し合う予定だ。
(上記記事より)
「世界最古の大学」というと、イタリアのボローニャ大学が浮かびます。現代の大学の原型となった大学であり、かつ、現存している大学となると、最古はボローニャ大学でしょう。
ただ、こちらのナーランダー大学も、歴史上、なかなか興味深い存在だったようです。マイスター、恥ずかしながら上記の記事で初めて存在を知りました。
↓こちらでも紹介されていますので、ご興味のある方はどうぞ。
■「ナーランダー:インドの教育の灯火」(NIKKEI DESKTOP)
http://dp.nikkei.co.jp/colm/india2.cfm?i=20070403cq002cr
以上、今週のニュースクリップでした。
今週も一週間、本ブログにアクセスしてくださいまして、ありがとうございました。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
マイスターでした。