「工学部志望、10年で半減 私学、相次ぎ再編」

マイスターです。

一応、学士(工学)なので、理工系学部の動向には特に強い関心を持っています。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「知りたい:工学部志望、10年で半減 私学、相次ぎ再編--『資格なく不利』克服へ」(MSN毎日インタラクティブ)
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/wadai/archive/news/2006/10/20061025dde001040031000c.html
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文部科学省の学校基本調査によると、95年は57万4000人いた工学部志願者は、05年に33万2000人にまで減少。逆に医・歯・薬学部は同23万9000人から28万5000人に、看護・医療・保健学部も5万人から11万人に倍増している。医療系学部は理学療法士などの資格が取れるため、就職を見越した受験生が殺到する状況だ。

 一方、工学部の不人気の理由としては、(1)就職に有利な資格取得に直接結び付かない(2)学問の内容が多岐にわたり、高校側が進路指導しにくいなどが考えられるという。
(上記記事より)

というわけで、危機に立つ工科系学部。前々から、医療・生命科学系の伸びに対して、工学部が衰退している事態は知られていましたが、それにしてもすごい減り方です。もともとは57万人だった志願者が、10年間で、20万人くらい減ったんですね。

高度経済成長期などと比べれば、技術者の需要自体が減っていると思いますから、ある程度の減少はやむを得ないと思います。しかし、理由はそれだけではなさそうです。

考えられる理由のひとつが「資格に結びつかない」ということなんだそうです。
もともと、工科系の人気を支えていたのは、「手に職がつく」「就職がいい」ということだったはずですが、ここに来て急に逆の評価に。
資格という、目に見えるモノがないとダメなんでしょうかね。

なんとなく、工科系学部の、PR不足という面もあるような気がします。

【就職に不利?】
大学にもよりますが、例えば大都市圏の工科系大学の就職状況は、社会科学系や医療系の学部などと比べても質・量ともにそう悪くはないはずです。
主要な就職先である各種メーカーなどは、なんだかんだ言っても、日本の経済の重要な部分を支えています。

また、工科系学部の教育内容を支えているのは、基礎科学の知識と、ものづくりに必要な統合能力、発想力です。これらに加え、他の学部以上の情報処理の知識が必要になります。こうして身に付けた知識やスキルは、あらゆる産業に対応できるものです。企業は、こうした能力を求めているはずです。
事実、最近では工学部を卒業して、金融系や情報産業に就職する方も増えてきているようです。
つぶしもきくし、就職にも有利だと個人的には思うのですけれど、さていかがでしょうか。

【資格に結びつかない?】

これは、高校の教員の皆様や予備校関係者が広めた誤解、&大学のPR不足だと思います。

技術者が取得できる資格は、山ほどあります。ただ、その位置づけが若干、わかりにくいのです。
確かに、「理学療法士」や「薬剤師」のような、わかりやすい国家資格はそんなに多くありません。その代わり、非常に数多くの資格が、「技術別」に用意されています。それらを組み合わせることで、市場価値の高いエンジニアを目指すというのが、工学系の特徴です。

例えば建築学。「一級建築士」「二級建築士」などの、非常に強力な国家資格があります。「不動産鑑定士」なんてのもありますね。建築出身者には有利な資格の一つです。「測量士」なんてのもあります。
また建築学が学べる大学では、学芸員課程が開設されていることも多いです。建築学が、文化史や美術と密接に関わっているためです。

化学系には、危険物取扱主任者などがありますが、種類が異様に多いので、マイスターはよく知りません。電機系も、電気主任技術者や各種の無線技術士関係など、非常に多くの資格があります。機械系も、機械設計技術者等、やはりいくつもの資格に関わっています。大学のwebサイトなどを詳細に見てみると、数多くの資格を取れることがわかります。
ただ、この通り工科系出身のマイスターですら、建築以外の資格はあまりよく知らないのです。まして、文系出身の高校の先生は……ご存じないでしょうね。

工学部で取得できる資格の多くは国家資格で、それを持っていないとできない業務がある、という類のものです。したがって特定の産業においては、常に需要があるのです。勉強を続けてこれらの資格を「複数」取得し、厚みのあるエンジニアを目指すわけです。「理学療法士」など、それ一本で世間をわたっていくタイプの資格とは若干性質が違いますが、工科系もちゃんと資格と結びついているのです。

ちなみに、工学系全体を通じて、最も重要な資格の一つが「技術士」です。能力あるエンジニアであることを証明するためのもので、取るのはとても大変ですが、それなりのステータスを持っている資格です。
ただ、この資格、一般にはあまり知られてません。このことひとつとっても、工科系大学のPR不足は否めない観があります。

というか、ここまで書いておいて何ですが、実を言うとそもそもマイスターは、

「なんか有名っぽい資格が取れる = 就職して、将来も安泰」

……という発想自体が、何かとても単純で、誤解にあふれたものであるような気がしてなりません。

今、歯科医院の数が非常に増えているそうです。そのため、一部の地域では競争が激化し、経営に困る歯科医師が出てきているのだとか。
特定の職能に結びつく資格ほど、市場環境の変化に対応するのは大変なんですよ、と高校生には伝えたいです。

【工科系の学問は、何が学べるかわかりにくい?】

学問の内容が多岐にわたり、高校側が進路指導しにくい

と、冒頭の記事にはありました。
その結果、危機感をもった大学が対策をとり、学部名称などが多様化しているそうです。
どれどれ、と思って某大手予備校の大学一覧表を見てみました。エンジニアリングを学べる学部をざっと抜き出してみたら、↓このようになりました。

化学生命工学部
環境都市工学部
基幹理工学部
生産工学部
基礎工学部
工芸科学学部
都市環境学部
都市教養学部
芸術工学部
環境情報学部
電気通信学部
創造理工学部
コンピューター理工学部
繊維学部
国際環境工学部
グローバルエンジニアリング学部
未来科学部
システム情報学部
工学資源学部
システム科学技術学部
先進理工学部
情報理工学部
コンピュータ学部
医用工学部
生命システム工学部
産業科学技術学部

上記は、マイスターが気づいた分だけです。
実際には、「工」の文字が入っていないけど、ウチでもエンジニアリングが学べるんだい!というところがまだまだたくさんあるのでしょう。この上、学科名称がまた、さらに多様ときます。

学べる内容をうまく表現できている学部名称もありますが、中には、迷走ぎみのものもあるような……。教員だけで考えた名称なんだろうな、と思うものも結構あります。かえって受験生が減ってしまわないことを祈ります。

ただし、「学問の内容が多岐にわたり、高校側が進路指導しにくい」ということですが、工学技術はもともと、そういうものなのです。受験生対策でシンプルにするとしても、限界はあります。
高校の先生方にもある程度は学んでいただかないと、工学系志望者の進路指導は成立しません。イメージだけで指導が行われないよう、大学側も高校教員に対して、わかりやすい良質な資料を提供する必要があります。
そういう点でも、大多数の工学系大学は、まだまだ広報に改善の余地があるような気がします。

そんなわけで、以上、工学系の動きが気になるマイスターでした。