最新の技術研究成果が見られる「大学見本市」に行こう

展示会や見本市が好きなマイスターです。

広報プロデューサーだったときには、企業の見本市を見るために幕張メッセや東京ビッグサイト、東京国際フォーラムなどによく出かけていました。マイスターは環境対策や、情報家電などをテーマにした見本市によく行っていました。国内で動員数が多いイベントは、東京モーターショーや東京ゲームショウなどでしょうか。海外だと、「Mac Expo」なんてのも聞きますね。

そういったイベントに参加されたことがある方はご存じかと思いますが、広い会場を使う展示会では、各企業とも威信をかけて(?)ものすごく凝ったブースを作ります。一体、いくらかけたんだ!?と思うようなド派手なブースも多いです。

それもそのはず。イベントにもよりますが、大体展示会にわざわざ足を運ぶのはその分野に強い関心を抱いている業界人や、業務でその分野の製品やサービスを使っているプロ、あるいはメディアの関係者などがほとんど。企業にとっては、最も自社の製品や取り組みをアピールしたい層の人々なのです。ですから多少コストをかけてでも、競合他社以上に印象的なブースを作って、PRに努めたいところなのです。

イベントのためにデザインした巨大な特設ブースや、かっこよくディスプレイされた最新の製品群、構想段階にある未来技術の数々などを眺めていると、確かに圧倒されます。もし、まだ一度も展示会や見本市に行かれたことがないという方がいらしたら、ぜひ何かのイベントに出かけてみることをオススメします。

というわけで、たまにはイベント情報でも。

【教育関連ニュース】—————————————–

■イノベーション・ジャパン2006 - 大学見本市
http://expo.nikkeibp.co.jp/innovation/
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ちょうど一週間後に開催されるイベントです。その名も「大学見本市」!
産学連携に使えそうな新技術を、大学がアピールする場です。関心を持った来場者(主に企業関係者)との間で、シーズとニーズをマッチングさせようという主旨のイベントなのですね。サイトには、<来場対象者:企業の研究開発担当者、研究者、大学関係者、研究者など>と書かれています。

【大学一押しの「知」が結集した「大学見本市」は持続的なイノベーションの創出の源泉】

大学の研究成果が社会に還元され日本を活性化する原動力となることを目指し、研究シーズと企業ニーズとの出会いの場を提供してきた「大学見本市」も今回で第3回となります。昨年のイノベーション・ジャパン2005‐大学見本市では、開催後、400件を越す共同研究開発や特許の実施交渉が行われ、うち100件以上が契約締結まで進展しています。このような素晴らしいマッチングの成果は、大学一押しの「知」と研究開発力旺盛な企業の熱意の賜です。持続的なイノベーション創出が実現される社会を目指し、独創的な研究成果の発掘や実用化に向けた企業とのマッチングを支援するJSTの総合的な支援策「大学見本市」を有効にご活用ください。
(「主催者挨拶」より)

この通り、昨年はなかなかの成果をあげたようです。

ブースを出すのは大学ですから、おそらく上述したようなド派手で巨大なブースはないと思いますが、それでも各大学が競って技術をアピールする場というのは、なかなか壮観ではないでしょうか。
マイスターはあいにく仕事のため参加できませんが、とてもおもしろそうだなぁと思ってサイトを見ました。

■「全参加者リスト」(イノベーション・ジャパン2006)
https://exponet.nikkeibp.co.jp/ij2006/matching/appoint/search.cgi?class=Appoint::Search&mode=list&s_type=zone

↑こちらから、参加団体のリストが見られます。
正確には、大学がブースを出しているのではなくて、各大学の研究者がブースを出しているのですね。個人単位での勝負です。

見てみますと、なんだか国立大学の比率がかなり高いという印象を受けます。
確かに理工系の技術研究は、質・量ともまだまだ国立大学に分があると一般的には言われています。一人一人のレベルもさることながら、「研究者の層が厚い」という指摘をよく耳にします。
ただ、それに加えてもしかすると、大学ごとの「産学連携に関係する組織的な取り組みの差」というものも若干影響しているかも知れません。

マイスターは日々、大学関連のニュースを個人的にクリップしているのですが、思うに旧帝大をはじめとする国立の研究大学には、産学連携のためにかなりの予算をかけているところが多いように感じます。専用のセンター施設を作り、その道のプロをスタッフとして雇用している、といった報道をしばしば目にします。
一方、私立大学には、一応「産学連携センター」みたいな組織を持ってはいるものの、実際には後者の片隅の一室に事務局があるだけだったり、技術に関して素人の職員が手当たり次第に電話をかけているだけだったりするところも少なくないように思います。

同じことをやっていても有名大学ほどメディアが取り上げやすい、というアドバンテージがありますから、正確な実態のほどはわかりません。ただ最近、国立大学がこうした取り組みに力を入れ始めているというのは確かだと思います。

さてこのイベント、上述した通り各ブースは大学単位ではなく、それぞれの研究者が個人単位で出しているものみたいです。ですからおそらく、ほとんどのブースでは、研究者ご本人が会場で技術の説明をされるのだと思います。どんな感じで説明されるのか、ぜひ見てみたいです。

(ここからは、こういったイベントでブースを出される研究者の方に…。)

この見本市、玄人向けのイベントではありますが、それでも普段学会で発表されているのとはかなり勝手が違うはずです。ブースを訪れる人のすべてが、専門分野の知識を持ち合わせているとは限りません。

中にはもしかすると、「商社マン」みたいな営業畑の方も来られるかも知れません。また、「理工系技術者+営業担当」という組み合わせも多いような気がします。
そのとき、技術者に説明するだけでなく、営業担当者にも、彼等がわかるような言葉でその技術のメリットを簡潔に説明することがとても大切です。

理工系の研究者の方の最先端のお話は、とてもおもしろいのですが、たまに

「おもしろい技術だということはわかったけど、結局、これを使うと、既存の製品やサービスと何がどう違ってくるの?」

という点が今ひとつわからない、なんてことがあります。
もちろん、最終的にはそれを考えるのは企業側なのでしょうが、こういった視点を交えて説明をしてあげると、企業の担当者達もがぜん興味を持つはずですよ。
(以上のこと、アタマではわかっていても、実際には不得意な方が多いです)

また、企業の担当者は、全ブースを見て回らないと行けませんから、どうしても、1ブースをじっくり見ているゆとりはありません。したがって、ビジュアルの美しさやインパクトも大事です。
参加者は、研究成果を実証しに来ているわけではないので、詳細なデータを全面に出す必要はありません。どういった研究で、どんな可能性が考えられるのかを、ビジュアルで前面に出すと良いですよ。
研究成果を解説するカラー刷りのハンドアウトを大量に用意しておくと、なおいいです。

ブースの設計や、当日の応対の流れなどは、実は結構奥深いです。

■「仕事の達人:イベントの達人」(コクヨ株式会社)
http://www.kokuyo.co.jp/yokoku/master/event/index.html

↑こちらは、見本市をどう乗り切るか、ということを解説した、コクヨのコンテンツです。参考になる部分も多いと思いますので、興味のある方はどうぞ。

それと、当日のサポートスタッフとして、大学院生を連れて行かれる方も多いと思いますが、ビジネス交渉の場ですから、ちゃんとそれ相応の接客トレーニングをさせておいた方がいいですよ。

以上、研究者の方々に、でした。

でもこういった見本市、大学関係者なら、一度は参加して損はないと思います。
世の中の「大学発の技術」が、分野横断的に一覧できるイベントというのはそうそうありません。しかもそれらが「産業の役に立つか否か」という指標で一斉に評価される場なのです。これは、なかなかおもしろいですよ。
「産学連携交渉の最初の一歩」がどのように始まるのか、ありのままの様子もわかると思います。

今回の「イノベーション・ジャパン2006」、会場は東京国際フォーラムです。
東京駅から歩いてすぐですから、参加する時間がとれる方は、ぜひ行かれてみてはいかがでしょうか。

以上、マイスターでした。