ニュースクリップ[-6/11] 「大学の特許収入最高 名大断トツ2億円弱」ほか

ワールドカップが始まって、授業への影響がちょっと心配なマイスターです。

深夜から早朝まで試合が放映されていますから、朝の1限とか、出席者が減ったりするんだろうな…と予想。一体どのくらいの影響になるのか。何しろ四年に一度のことなので、職員になってまだ一年半のマイスターには予測が付きません。
っていうか、まさか先生達、休講にしてないよね?

さて、そんなわけで、今週も、恒例のニュースクリップをお届けします。

大学の特許収入、増えてます。
■「大学の特許収入最高 名大断トツ2億円弱」(中日新聞)
http://www.chunichi.co.jp/00/sya/20060610/mng_____sya_____006.shtml

2005年度に国内の大学が得た特許収入の総額が初めて6億円を超え、過去最高になる見込みであることが文部科学省の調べで分かった。これまでに調査した国立大の05年度の特許収入が総額約4億5000万円で、集計途中の公立、私立大の分が約1億9000万円に達した。文科省は「知的財産の活用が組織的、戦略的になってきた証しだ」と評価している。
携帯電話や大型スクリーン、信号機など広く使われるようになった青色発光ダイオード(LED)技術で03年度に4億円以上、04年度も3億円以上のずばぬけた収入があった名古屋大は、一部の特許権が切れたが依然2億円弱を確保した。
(上記記事より)

すごいですねー名古屋大学。2003年度のときは、全大学で5億円超の特許料だったうち、4億円が名大のものだったということですからね。
元々の研究レベルの高さもありますが、他の大学にこれだけ圧倒的な差を付けるというのは、やはり特許に対する取り組み姿勢も大きいと思います。

以前、↓こんな記事もご紹介しました。名大、財務戦略に気合い入れてますね。

・ニュースクリップ[-2/26] 「名大『基金』目標200億円 国立大で最大級」ほか
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50157999.html

重要な法案が、ひっそりと成立です。
■「『認定こども園』法成立 幼稚園と保育所を一元化」(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/flash/2006060901000849.html

幼稚園と保育所を一元化した総合施設を創設する認定こども園設置法が9日午前、参院本会議で与党や民主党の賛成多数で可決、成立した。10月1日から実施される。
親の就労状況にかかわらず、ゼロ歳児から就学前までの子どもを対象に、教育や保育、子育て支援を総合的に担う「認定こども園」を都道府県が認定する。親子の集いの場提供など一定の要件を備えていることが必要。
既存の幼稚園と保育所が連携したり、幼稚園に保育サービスを、または保育所に幼稚園の機能を追加する場合も可能。
(上記記事より)

教育基本法の陰に隠れて、いつの間にか成立していたこの法案。実はとても画期的な内容なのですが、メディアはインパクトの強い方を取り上げますから、あんまり報道されていません。もっとも、この法案で、全国の幼稚園や保育園がいきなり全部合併するとかいうわけではありませんからね。
しかし幼保一元化や幼児教育の義務教育化、少子化対策などなど様々な議論に英挙を与える制度には違いありません。あなたの地元に認定こども園ができたら、どんなものか、説明会などに出てみるといいかもしれませんね。

教育現場にも影響を与えているエレベーター問題。
■「東工大キャンパスにも『危ない』エレベーター」(JINビジネスニュース)
http://jp.jinbn.com/2006/06/05230000.html
■「札幌医科大で緊急点検 シ社製、過去に閉じこめ2件」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/national/update/0610/TKY200606100186.html
■「シンドラー社製エレベーター、都立工芸高で点検」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/national/update/0610/TKY200606100367.html?ref=rss

みなさまも、お住まいのマンションや、勤務先、通学先のエレベーターに載っている間、製造元表示につい目をやってしまったのではないでしょうか。死亡事故を起こしたということで、「シンドラー」社の名前が大きくメディアに取り上げられました。
上記のように、同社のエレベーターを使っている教育機関も対応に追われてるようです。

マイスターがちょっと気になったのは、同社の広報姿勢です。

■「プレスリリース:事故に関する一連の報道について」(シンドラーエレベータ株式会社)
http://www.schindler.co.jp/jpn/WEBJPNJP.nsf/pages/new-060607-01
■「プレスリリース:当社製エレベーターでの事故について」(シンドラーエレベータ株式会社)
http://www.schindler.co.jp/jpn/WEBJPNJP.nsf/pages/new-060606-01
■「プレスリリース:本社前で行われた報道関係者向け報告について」(シンドラーエレベータ株式会社)
http://www.schindler.co.jp/jpn/WEBJPNJP.nsf/pages/new-060607-02-01
■「シンドラー社は説明拒否、住民怒り エレベーター事故」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/national/update/0607/TKY200606060639.html

事故がありましたエレベーターは、シンドラーエレベータ株式会社が1998年に設置を行い、2005年3月までは当社が保守を担当し、その後は2社が保守を行っております。
捜査による詳細が出るまで、事故に関するコメントは差し控えさせていただきます。しかしながら、2006年6月6日時点では、この事故がエレベーターの設計や設備によるものではない事を確信している旨を述べさせていただきたいと思います。(シンドラー社プレスリリースより)

…と、「自分達には責任はない」という表現は随所に見られるのですが、肝心な、事故に関する情報が公開されていないのです。

マスメディアの報道にも、ちょっと行きすぎがあるような気はします。「海外でも事故相次ぐ」といった報道が続いていますが、エレベーターで世界第2、エスカレーターで世界第1のシェアがあるなら、事故の例があっても不思議ではありません。他社のエレベーターと比べて事故の確率が高いのか低いのか、そういった情報なしに、他社製品より危険だという報道をしているからです。(もっともシンドラー社は世界では世界2位、エスカレーターでは世界1位のシェアがあるとされていますが、報道によると日本でのシェアは1%しかないそうですから、その中でこれだけトラブルがあるのであれば、やっぱり問題があるのでしょうね)

しかしそれでも、シンドラー社の対応はいただけない。死者を出した製品のメーカーだとは思えません。例えば港区の事故に関して、住民説明会に参加する旨、区長が要請したにもかかわらず、同社は出席を拒否したとのこと。自社に非がないと思うのなら、説明会に出ればいいのです。
事故の原因がまだわからないのですから、現時点で非をすべて認めることはないと思います…が、だからといって情報を出さず、メディアから逃げ回っているというのは、間違っています。

と思ったら、↓こんな記事がありました。

「シンドラー本部幹部が来日へ、来週初めに事故の見解」(NIKKEI NET)
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=STXKG0001%2010062006&g=K1&d=20060610

広報に問題があったと認めているようです。(でも、9/11現時点でwebサイトはまったく変わっていませんけど…)

さて、実は、東工大で使われていたシンドラー社のエレベーターの挙動がおかしいということで、2005年10月04日、mixi内に↓こんなコミュニティが立てられていたのですね。

■「J2棟のエレベーターがおもしろい」(mixiコミュニティ)
http://mixi.jp/view_community.pl?id=341668
※mixiのIDを持っていないと閲覧できません

さすが理系の名門大学。最初はおもしろ半分で立てられたコミュニティですから、今から思えば不謹慎な表現もありますが、エレベーターの挙動について、詳細に報告されています。ドアが斜めになったとか、操作通りに動かなかったとか、読んでいる方が「げっ」って思う内容です。たまたま東工大に入ったから、こういう記録が残ったのかも知れません。

ところでシンドラー社は、管理を委託している会社が悪いと言っているようですが、東工大は同社の直接管理らしいです。あれれ?

うーん、シンドラー社、緊急事態の対応事例としては、真似しちゃいけない部類にリストされることになりそう。とりあえず皆様は、キャンパス内のエレベータがどの企業のものか、チェックを急いでくださいね。

核融合研究センターと連携大学院。
■「国がITER施設と大学の連携を提案」(東奥日報)
http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2006/0609/nto0609_5.asp

国際熱核融合実験炉(ITER)の本体に替わって六ケ所六ヶ所村に建設される関連施設「青森国際核融合エネルギー研究センター」について、文部科学省の板倉周一郎・核融合開発室長が八日、青森市の青森グランドホテルで講演し、研究センターを運営する日本原子力研究開発機構と、核融合研究などに取り組んでいる複数の大学が同村で共同研究を行い、人材育成も担う“連携大学院”の創設を提案した。
(上記記事より)

フランスと誘致合戦を繰り広げ、最終的にはフランスに建設されることが決まった国際熱核融合実験炉(ITER)。
国際的な実験施設ができないのは、研究者にとっては残念でしたでしょうが、このような形で教育に役立つ施設ができるのであれば、これはこれでよかったかも知れませんね。ITERの本体じゃ、大学院教育に使えたかどうかわかりませんし。

しかし、これだけ貴重で大規模な実験施設になると、「複数大学が、施設をコアにして集まり、大学院が生まれる」ということがあるのですね。物理的なリソースを分け合う形で教育・研究組織が結成されるというのも、確かにこういう場合は有効なのかも知れませんね。

経済教育の動きが、国内外で起きています。
■「金融教育促進で一致へ」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20060606mh01.htm
■「『経済教育ネット』発足、産学連携“健全な資本主義”発信」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20060609ur02.htm

9日にロシアのサンクトペテルブルクで開幕する主要8か国(G8)財務相会議で、G8が金融教育の促進で一致することが5日、明らかになった。投資信託などの金融商品が高度・多様化しているため、金融商品の仕組みや元本割れのリスク(危険)など、金融に関する正しい知識を普及させ、金融市場と経済の健全な発展につなげたい考えだ。10日採択する共同声明に盛り込む。
G8は、学生などに対する早期の教育だけでなく、社会人も含む幅広い年齢層への教育が重要だとの認識で一致する見通しだ。
「金融教育促進で一致へ」より)

社会人について触れるあたり、どちらかというと、投資活動を促進して経済を刺激しよう、という意図の方がメインであるような気がしないでもありません(G8だし)。でも、金融に関する教育を行うというのは賛成です。

経済教育にかかわる研究者や教師、企業などを結びつけ、情報の共有を通じて教育界への貢献を目指す「経済教育ネットワーク」の設立総会が8日、東京・大手町の読売新聞東京本社で開かれた。
株式投資の過熱に伴う拝金主義的思考の広がりや、所得格差の拡大が社会問題となる中、健全な資本主義のあり方を学ぶ教育が必要、とする篠原総一・同志社大教授が設立を呼びかけた。
「『経済教育ネット』発足、産学連携“健全な資本主義”発信」より)

こちらは国内の動き。国内ではこのところ、投資家や起業家にあまりよくないイメージがつきまとっていますから、イメージ悪化を食い止めようという財界の思惑もあるのでしょう。でも、こちらもやはり、必要な活動だと思います。

↓こんな資料も見つけました。ちょうど一年越しの計画なのですね。

■「経済教育に関する研究会 中間報告書 概要(平成17年6月)」(内閣府経済社会総合研究所)
http://www.esri.go.jp/jp/archive/hou/hou020/hou013.html

子供の安全を守るための
■「教員の卵に安全教育──リスク管理や『心構え』など、大学で広がる」
http://www.nikkei.co.jp/kansai/news/33667.html

学生らに子供の安全や地域の防犯について学ばせる試みが各地の大学で広がっている。
(略)
大阪教育大は2004年度から講義「学校と安全」を約550人が履修した。07年度からは教員免許取得課程の必修とする。事件では犯人とすれ違ったにもかかわらず不審者だとは思わずに素通りさせたり、児童を避難誘導せず置き去りにしたまま警察への通報に走るなどのケースがあった反省を踏まえる。
安全教育学に詳しい南哲・神戸大名誉教授は「安全教育の必修化は画期的な取り組み。国を挙げて意識を高める時期にきている」と話している。
(上記記事より)

安全教育、これからは必要ですよね。必修化というのも頷けます。ぜひ現職教員の皆様にも、公開講座などの形で、講義内容を伝えて欲しいところです。

以上、今週のニュースクリップでした。

最近、おかげさまで多くのメールをいただいています。みなさま、ありがとうございます。
ただ、あまりにも数が多いため、すぐにお返事を返せないことがありますので、その点だけ、なにとぞご了承いただければと思います。(ブログのコメント欄は、既に回答に手が回らなくなりつつあり、申し訳ありません)
でも、メールをいただけるととても嬉しいです。よろしければ、みなさまもどうぞ。お返事は遅くなってしまうかも知れませんけれど、仕事の愚痴とか、遠慮なくお送り下さい。(とか言って、愚痴メールが何十件も押し寄せたらどうしよう…)

今週も一週間、本ブログをごひいきにして頂き、ありがとうございました。
来週も、どうぞよろしくお願い致します。

マイスターでした。