「進路選択に関する振返り調査-大学生を対象として」経済産業省

文・理を分ける教育には反対!のマイスターです。

・理系白書「文理分け教育を問う」
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50118180.html
・文系、理系という分け方の弊害
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50020633.html
・『理系白書』 理系は報われているか
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50084789.html

上記のような記事も書きました。
若者のほぼ全員を「文」「理」に分ける現在の教育は、おかしい!
そう、考えています。

なので、こういう記事には、反応しちゃいます。

【教育関連ニュース】——————————————–

■平成17年度経済産業省委託調査報告書
『進路選択に関する振返り調査-大学生を対象として-(概要版)』
http://www.benesse.jp/berd/center/open/report/shinrosentaku
/2005/gaiyou_pdf/shinrosentaku_gaiyou.pdf#page=7

調査:株式会社ベネッセコーポレーション
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ベネッセが、大学生10,000人を対象に行った調査です。
詳細は、実際に見て頂ければと思います。

マイスターは、以下のような点に特に興味を持ちました。

大学生の過半数が、小・中学校時代に文系・理系を意識している。

これはびっくり。
ホントかよ!? と個人的には思う結果です。
早くからみなさん、「俺って文系だからさぁ」とか言っているのでしょうか。

みなさん、目的意識がはっきりしてらっしゃる!

…と思ったのですが、そうでもないみたいです。

「大学での専攻分野を意識した時期」の回答は、小学生の頃1.1%、中学生の頃13.7%という結果でした。
つまり回答者全体のうち35%程度の方は、将来何を勉強したいのかもわからないまま、「とりあえず、自分は理系だな」などと、小中学生のころから意識していたってことです。

こういう実態を見ると、
「文理分けは、生徒の希望に早くから対応するためのシステムなんだ」
という説が嘘くさく思えてきます。
実際にはどうも、文系、理系というレッテル貼りが先にあって、その中で、なんとなく進路を考えているというのが近いんじゃないでしょうか?

なお「職業を意識した時期」は、小学生の頃9.4%、中学生の頃15.4%です。

○半数以上は、高校時代に「自分の適性」「就きたい職業」がわからなかった。

これにもビックリ。

いや、適性なんて、そう簡単にわかるものではないのは存じ上げています。

「じゃあ、なんで日本の教育は、高校生に<文or理>なんて選択を強制しているんだ」

という、現実と調査結果との乖離っぷりにビックリなんです。

適性も就きたい職業もわからないうちに、
文理分けして、受験のために学部学科を絞らせて、受験教科を決めて、教える。

我が国の教育関係者がずっと維持してきた教育システムの、これが実態なのでしょうか。

「とりあえず大学に行けば、やりたいことはそのうち見つかるよ」なんて、みなさん本気で思っているのでしょうかね。
そんなにうまくいきませんよ…?

ちょっと話がそれてしまうのですが、多くの日本の大学の学部・学科による教育システムは、特定の学問分野を教えたいと強く思っている、専門知識が同じである学者の皆様が、それぞれデザインしているのです。

うまくその学問分野にはまれば、興味を刺激してくれますし、4年間でり深い学問のおもしろさにも目覚めることができるでしょう。
でも、学問の垣根を越えて、進路や興味を際限なく広げる方向ではありません。

最近、教養系学部がにわかに注目を集めています。
いわゆる「リベラルアーツ」志向の教育が叫ばれてきた背景には、こんな現状への強い反省もあるんじゃないかと思います。

さて、調査結果に話を戻しましょう。
この経済産業省の調査では、若者の「理科離れ」を意識した内容が、テーマの一つになっているようです。

中でも「物理」についての調査が充実していました。
理工系の象徴ということでしょうか。

○女子は機械やものづくりに関心があっても、高校で「物理」を履修しない。

これ、なんだかもったいない話ですね。
もちろん、ほとんどの場合、生徒自らがこういう希望を出しているのだと思うのですが、それは何故なのでしょうね。

「自分は文系だから、と自分で決めつけてしまっている」
「生物系の方が人気で、高校でも充実しているから」
「将来、物理を活かせる選択肢が少ないから」

などなど、色々な可能性がありそうです。
高校で、物理を専門で教える教員が減ってきていると聞きますから、学校側の都合もあるんじゃないか、とちょっと思います。

ちなみにマイスターの出た高校は理工系大学の付属校だったので、1年生は全員、物理と化学を履修することになっていました。
その結果、女子生徒にも、物理で優秀な成績を出す方は少なからずいましたよ。

○教育学系統の学部学科に在籍する、教員志望者は、全体の数値と比べて「物理」の「未履修」が多い。

そもそも、「教員の卵」が、物理を勉強してないのでした。

「教育学系統の学生」に聞いた結果ということですから、この中には小学校の教員になる方も大勢いらっしゃることでしょう。
物理は、先生にも嫌われちゃってます。物理好きの子供がますます減りそうで、悲しいです…。

小学校だと、
電気回路の仕組み(豆電球を光らせて、並列とか直列とかやるアレ)、
光の性質(虫眼鏡で紙を燃やしたりしましたよね)、
のあたりが、物理の内容として個人的に印象に残ってます。

マイスターは小学校で理科が大好きになったので、教員志望の方にも物理を履修して欲しいです。ちゃんと学べば面白いですよ。

高校物理のメインテーマとして最初に学ぶことになるのが「力学」なのですが、小中学校ではあんまり印象がありません。他の分野と比べると、数式が多くて理詰めの印象を与えてしまうかも(本当はそこが面白いのですが)。
あ。力学を最初に教えるから、高校で多くの生徒さんに敬遠されてしまうのかな?

マイスターがご紹介するのは、このくらいにしておきましょう。
詳細は、実際の調査結果をご覧ください。

現在、教壇に立っている教員の皆様(小学校教師から大学教授まで)も、若い頃からこの「文・理」の別に馴染んでいるわけで、もはや「文理分けナシ」の日本社会を想像する教育関係者の方が、圧倒的に少ないのかも知れませんね。

文・理分け教育は、人間の可能性を広げるのではなく、狭めている。
興味を「深堀り」させてくれるのならまだしも、大部分の若者にとってはそうなっていない。
マイスターは、そう感じています。

こう感じているのは、マイスターだけではないと思うのですが、誰も変えられないのですね。

教養系学部が注目を集めていることで、こうした現状に対する社会の意識が、少しでも変わればいいなと思います。

やりたいことを早くに見つけた人は、自分次第でそういう道を選べるようにするべきです。
でも基本的には、迷うのが人間なのだから、迷うことを許容する教育システムこそ理想だと、マイスターは思うのです。

小中高校や大学4年間のみならず、社会人になっても、それは同じだと思います。
そうした教育の思想が、今後の日本社会では、もっと求められてくるんじゃないかと個人的には考えています。

みなさまは、どう思われますか?

以上、マイスターでした。

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(参考)

■「文系か?理系か?さぁ、どっち!!」(大学職員.net -Blog/News-)
http://blog.university-staff.net/archives/2005/0421/0704post.html

おなじみ「大学職員.net -Blog/News-」で紹介されていた記事。
「高校生の7割が、希望大学の入試科目によって文系か理系かを決めている」
という調査結果についてのものです。

今回の経済産業省の調査結果とはまた異なりますが、それぞれ、興味深いです。