近未来の日本社会で、大学に求められる新たな役割とは?

家の至近距離にコンビニがあるので、しょっちゅうそこで買い物をするマイスターです。

夜中の0時を過ぎても、行きます。というかむしろ、深夜にしか行ってません。
最近は自炊の時間が取れず、毎晩コンビニに行ってる気もします。
そんな、ちょっと人としてどうかと思う生活をしている都市居住派、現在一人暮らし…。

ところで都心では深夜にコンビニに行くと、7割くらいの確率で、店員さんが外国籍の方です。

マイスターの部屋の近くのコンビニでも、若いアジア系の男性が2人、1日おきに働いています。
以前務めていた職場(やっぱり港区)のエリアでも、深夜のコンビニ店員はだいたい若いアジア系の方でした。
留学生かな?と思ったりもしますが、確認したことがないので、そのあたりはわかりません。

そういう周囲の様子から、
既に日本の社会は、労働の手が足りないところで外国籍の方が仕事を担って成り立っているのだなぁ、と漠然と感じます。

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■「今週の指標:建設業労働者は2005年半ば以降に不足が顕在化」(内閣府 参事官 植田博信氏)
http://www5.cao.go.jp/keizai3/shihyo/2006/0110/690.html
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内閣府の参事官(経済財政分析-総括担当)の方が書かれたレポートです。
「本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、内閣府の見解を示すものではない。」とありますので、そこはご注意ください。

さて、レポートの内容は、大まかに言えばこういうことです。

○2005年前半ころまで、建設需要は落ち込んでいた。そのため、建設業就業者数は緩やかに減少し続けてきた。
おまけに、もともと建設業就業者の年齢構成は全産業と比較して20歳代前半の比率が低く、50歳代の比率が高いなどやや高齢に偏っていた。したがって団塊の世代が定年を迎えると、建設業労働者はさらにガクンと減ることになる。

○しかし、マンションなどの建設需要が、ここしばらく、増加に転じてきている。
それに伴い、建設業労働者の求人も大きく増えている。

○結果として、労働市場にミスマッチが発生し、人材不足の問題が起きている。

このレポートでは、これが一時的な問題なのか、それとも今後ずっと継続的に問題になることなのかまでは、論じていません。
個人的には、一時的な需要供給のミスマッチというだけの話ではなくて、今後ずっと日本の産業の課題になっていくことであるように感じました。

マイスターも建築を学んでいたので、このレポートをとても興味深く読んでいたのですが、読んでるうちに、これは建設業だけに限らず、もう少し、関連して考えられるテーマが隠れているんじゃないかと思い至りました。

そんな訳で、本日ここから先は、「このレポートを読んで、マイスターが漠然と思ったこと」を書かせていただきます。

<減った分の労働者を、どこから供給するの?>

建築の型枠工や鉄筋工が不足しているとのことですよね。
まず前提条件なのですが、こうした職種の仕事というのは、アルバイトでできる仕事ではないんです。

道路工事では日雇いの労働者などを活用することがあるようですが、建築の鉄筋工事、型枠工事となると、ちょっと勝手が異なります。
鉄筋工も型枠工も、専門の技術が必要で、それは一朝一夕に身に付くものではありません。(様々な資格もあります)
こうした職種に就く方の多くは、「その仕事に専門的に従事している方」です。
少なくとも数年間は続けるつもりでないと、こうした仕事はできません。

さて、今後こうした職に「専門的に従事したい」と考える若者は、はたしてどれだけいるのでしょうか。

高校卒業者のおよそ半数が、大学または短大に進学する時代。
4年間にかかった時間とコストを考えると、建設労働者として働いていくことを、「割に合わない」と考える若者、多そうです。
『ガテン』のような仕事情報誌もありますから、ゼロとはいいませんが、以前より日本人労働者の供給が減っていくのは確かなんじゃないかと思います。

さらに、昨今ではアウトソーシング化を進める産業が多いですから、派遣社員やアルバイトなどで必要最低限の暮らしはできてしまいますよね(派遣社員の市場は拡大しています)。そうなると、仕事として、なお、若者を建設業に連れてくるのは大変そうです。

安価な労働力の供給元を考えた時、やはり一番最初に思いつくのは「海外」です。

冒頭でマイスターが述べたコンビ二の深夜バイトと同様に、安くて大変な仕事でも、海外からやってきた外国人労働者なら、従事してくれそうです。
今後、日本の労働者不足を解消するためには、どうしても外国人労働者の力が必要になりそうです。

…というのは、マスメディアなどでも良く聞く意見でしょうが、
上述したとおり、建設労働者は、バイト感覚でできるものでもないんです。
単純に、「人手が足りないから、外国人に頼ろう」と言って、人を連れて来られればいいという話でもないみたいです。
海外から日本での就労を希望してやってくるみなさんに、なにがしかの研修(日本語、日本文化、建設労働者としての技術や知識など)を行う必要が出てくるのでは?と考えてしまうのです。

他の製造業なら、「工場を海外に移転」すればいいんですよね。
実際、日本のメーカーは海外で製造を行っていますもんね。
現地で人をどう教育するか、という悩みはありますが、日本に連れてくる必要はないわけですから、必要なのは労働者としての、仕事に関する知識とスキルだけです。

でも、「建設」の労働者というのは、どうしても日本に来てくれないと仕事ができないわけです。
(建設業だけでなく、サービス業や、自治体業務の一部など、同じように労働者が不足してくる仕事はまだ他にも出てきそうです)

ここに、これまで日本が経験してこなかった「外国人研修」という課題が待ってるんじゃないか? と思ったりするのです。

<外国人労働者の研修を、誰がどこで行うの?>

従来なら、外国人労働者に対する必要最低限の研修は、それぞれの企業が、企業の責任で行っていたのでしょう。

でも、今後、本当に「大量に」外国人労働者が必要になったとして、果たして中小企業がそんな研修を十分に行えるのでしょうか…。
それこそ、あまり教育レベルの高くない、ちょっとぶっそうな方々を、どこかから連れてきて働かせる、なんて企業が出てこないでしょうか。

今後、労働力として海外から人が大量に流入してくるのだと仮定したとき、

 1:海外で、日本についての研修を受けられるような体制を作る
 2:日本で、日本についての研修を受けられるような体制を作る

という2通りの対応が、求められるようになってくるんじゃないか、と思うのです。
理想は「1」なのでしょうが、これが十分でないのであれば、「2」の対応方法が求められるようになるのかも知れません。

日本での就労を希望する外国人の中にも、そういう研修を希望する人はいると思います。
また、外国人労働者を採用したい企業の側でも、そういう研修機関の設立を希望するところはあると思います。

じゃあ、誰がそういう研修を担えばいいのかな?
と、考えるのです。

<大学や短大が、外国人労働者向けの研修事業を行う?>

例えば、アメリカのコミュニティ・カレッジは、
「誰でも入学できて、最低限の社会的な教養から学べる」
という学校だと聞いています。
成人した後も、アメリカ人としての教養を身につけるために通う方々がいるのですね。
(日本は識字率の高さを始め、国民全体の教育レベルが総じて高いので、こういう教育機関についてのニーズは、これまでありませんでした。
アメリカの場合、英語が書けない、英語が読めない、簡単な計算ができないという方もいるわけです)

もっとも、アメリカのコミュニティカレッジが、外国人労働者の教育に使われているかどうかは知りません。本来はそういう位置づけの学校ではないんじゃないかと思います。
でも、ヒントにはなりそうです。

これはふと思いついたことなのですが、

日本の大学や短大が、外国人向けに、労働者としての研修事業を行ってみることはできないでしょうか。

正規の学位を与える課程ではなく、「研修」の事業です。

山形県にあった酒田短期大学は、正規の留学生を受け入れていると言いながら、実際には学生の大半が首都圏で暮らしていると問題になり、文部科学省から解散命令を出されましたが、これとは違います。

留学生ではなく、初めから、「就労ビザを持ってきた人のための最低限の研修を、大学が行う」のです。

夜間のキャンパスを利用するなどして、こういう研修事業を展開する可能性、ありそうな気がするんです。
特に、経営に苦しむ短大の中から、こういう研修事業に力を入れるところが出てきてもいいのではないでしょうかね。

その際の学費を、学生から集めるのか、企業からとるのか、現地の自治体からもらうのか、日本政府からもらうのか、それとも労働者を送り出してくる外国政府からなんらかの形で集めるのか、そこには色々なやり方がありそうです。
(全額を誰かからもらうのではなく、補助金などで各方面から少しずつ集めるという手にも現実味があります)

現時点では制度的に不可能なのかも知れませんが、そんなに遠くない将来、こういう役割が大学や短大に求められてくるような気が、マイスターはするんです。

いま、こういうことを声高に主張すると、大きな反発を、地元から受けるでしょう。
「そんなことをわざわざやったら、外国人労働者がわんさか来ちゃうじゃないか。なんでわざわざそういうことをするんだ。街に外国人があふれるのには反対だ」と。

もちろん、今すぐ行う必要はないのかも知れません。

でも、
いずれ日本は、外国人労働者無しでは社会の機能を維持できない国になっていく、
というシナリオには、結構、現実味があるわけです。

今は、確たる根拠屋裏付けがあるわけではありませんが、
そんな日本の遠くない未来において、
外国人労働者向けの研修機能を、大学や短大が持つようになるというのは、
そんなに的はずれな予想でもないように、マイスターは思っています。

みなさんは、どうお考えでしょうか。

以上、内閣府のレポートを読んで、ふと考えたことでした。

どうせ海外から多くの人がやってくる社会になるのであれば、
やってくる労働者も、日本の企業も、日本の社会も、
安心して働いてもらえるような仕組みがいいよなぁ、と思います。

そのとき、大学や短大は、すごく重要な役割を担えるような気がします。

そんな近未来の社会のことを、ちょっと想ったマイスターでした。

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(関連記事)
※↓以前も、内閣府参事官のレポートをご紹介しました。
・家計の教育支出を増やしている原因は、これ?
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50006542.html