マイスターです。
■それぞれの卒業式
ちょうど一年前に、大学の卒業式に関する話題をご紹介しました。
今年も、大学の卒業式の報道がたくさん、メディアを賑わせています。
それではさっそく、様々な報道をご紹介……といきたいところですが、その前にまずはこちらをご覧ください。
■「香山リカのココロの万華鏡:開き直りの境地 /東京」(毎日jp)
精神科医のほかに大学教員の仕事もしている私は、この時期、講義を受け持っているいくつかの大学の卒業式に出席する。
今年の特徴は、学長や来賓の祝辞の中に、必ずといってよいほど「経済危機」「不況」というキーワードが登場することだ。当然のように、スピーチのトーンも明るくない。
「大学の外の社会はかつてないほどたいへんな状況だが、希望を捨てずにがんばって」などと言われて、卒業生たちも何となくうつむきがち。
こんな門出じゃかわいそうだな、とつい同情してしまった。
(上記記事より)
香山リカさんのコラムにあった文章です。
マイスターも今回、数多くの卒業式報道を見ましたが……学長のコメントとして、「不況」とか、「決して明るくない時代ですが」とかいったキーワードが非常に多かったです。
おそらく、ほとんどの大学の卒業式で、こうしたキーワードが語られていたのではないでしょうか。
でも、そんな暗い時代を切り開き、明るい未来を構築するのが、大学を巣立つ学生達に対して社会が期待している役割であり、どうかそれを忘れないでいて欲しいもの。
スピーチをした方々の真意も、そんなところにあるのではないかと思います。
【最後の卒業生。】
■「神奈川大学第二部、最後の入学生が卒業/横浜」(カナロコ)
神奈川大学(横浜市神奈川区)と同大大学院の卒業式・学位授与式が二十五日、横浜市西区のパシフィコ横浜で行われた。二〇〇六年度から学生の募集を停止した同大第二部(夜間部)の最後の入学生のうち約百五十人が、旅立ちの日を迎えた。留年生が残るため学部自体は存続するが、第二部の卒業生からは「非常に残念だ」との声が上がった。
(上記記事より)
■「文化女子大室蘭短大で最後の卒業式、40年の歴史に幕」(室蘭民報)
文化女子大学室蘭短期大学(青栁宏主事)の最後の卒業式が16日、同校で開かれ、第39期生保育科の34人が2年間の思い出を胸に学舎を巣立ち、開学40年の歴史に幕を閉じた。
(略)謝辞では、卒業生代表の小林陽子さんが「保育実習で得た多くの人々との出会いを、一生大切にし続けたい。最後の卒業生として誇りを持ち続けたい」と感謝の気持ちを伝えた。
(上記記事より)
二部(夜間部)が廃止される、神奈川大学。
閉校になる、文化女子大学室蘭短期大学。
「最後の卒業生」となる学生達、そして、それを送り出す教職員の方々の胸中はいかばかりでしょうか。
募集停止が決まる瞬間は衝撃的ですが、こうして最後の卒業生を送り出す瞬間もまた、重い意味を持っているのだと思います。
【個性か、それとも勝手気ままな行動か。】
■「【京都】アニメキャラで旅立つボクたち」(毎日jp)
京都大の卒業式が24日、京都市左京区の京大総合体育館であり、10学部2767人が巣立った。恒例の卒業生による仮装は、動物の着ぐるみやアニメキャラクターが目立ち、「ボクたち草食系」との札を下げたキリンなどが笑いを誘った。
(上記記事より)
京都大学の卒業生達の様子……らしいです。
折田先生像だけでなく、こんな伝統もあったとは。
もしかして、着ぐるみやキャラクターが好きなのですか?
ただ、その一方で
■「卒業式の仮装に・・・京大総長が苦言」(Asahi.com)
京都大の松本紘総長は25日の定例懇談会で、卒業式の「恒例」となっている仮装や着ぐるみによる参列について、「自由の学風と言うかもしれないが、自由と勝手気ままとは違う」と苦言を呈した。24日に総長として初めて臨んだ式典の様子に違和感を感じたという。
(略)松本総長は「個人の判断だから、頭から抑えつけようとは思っていない」としつつも、「注目を浴びる、テレビに映るといった浅薄な考えで行動しているなら悲しい。そうでないことを祈る」と嘆いた。
(上記記事より)
……と、新総長はこの「恒例行事」に苦言を呈しておられる模様。
確かに、人によって評価が分かれそうな行動ではありますが、さて、来年以降は一体どうなることでしょうか。
【ここでも大人気。】
■「和大で卒業式」(読売オンライン)
卒業証書を授与した後、小田章学長は「大きな志と夢を持って常にチャレンジしていってほしい」と激励し、「Yes You Can!」と言葉を贈った。
(上記記事より)
■「卒業式:社会貢献目指し巣立つ--長崎大 /長崎」(毎日jp)
片峰茂学長はあいさつの中で、オバマ米大統領の「チェンジ」を引き合いに出し、「今は(明治維新、第二次世界大戦の敗戦に続く)第三の変革の時。直面する課題や矛盾は地球規模で起きている。国際的視野を養い、変化を恐れることなく、最先頭で前向きにチャレンジしてほしい」とエールを送った。
(上記記事より)
■「大阪市立大で卒業式 JR事故の犠牲者の両親に「在学記」」(MSN産経ニュース)
式辞で鷲田清一総長は「新しい責任の時代」という言葉で結んだオバマ米大統領の就任演説に触れ、「他者からの呼びかけや訴えかけをきちんと聴き取り、その小さな声にすぐに応じることができる。そういう意味での『責任』の意識を強くもった社会人になってもらいたい」とはなむけの言葉を贈った。
(上記記事より)
おそらく世界中でその言葉が引用されているであろう、オバマ米大統領。
日本の大学の卒業式でも、引用回数ナンバーワンかも知れません。
相手の心を揺さぶり、「やってやろう!」という気にさせる言葉の数々は、若者へのはなむけの言葉としてもぴったりなようです。
日本の首相の言葉が引用されたという報道は、(ご本人が出席した防衛大学校をのぞけば)今のところ、見つけられていません。残念です。
ただオバマ大統領も、日本では大人気な一方で、ご自身の国では↓こんな報道が。
■「米名門大の卒業式を司教が欠席へ、理由は『オバマ大統領』 」(CNN)
米インディアナ州サウスベンドのカトリック教区司教ジョン・ダルシー氏が24日、当地にある名門カトリック大学、ノートルダム大学の卒業式を欠席すると発表した。欠席の理由として、ヒト胚性幹細胞(ES細胞)研究助成を解禁したオバマ大統領が、式に招待されていることを理由に挙げている。
(略)ノートルダム大学の卒業式は5月17日。オバマ大統領は同大学から名誉学位を授与されることになっており、卒業式に招待されてスピーチをする予定となっている。
しかし、中絶を否定するカトリックの名門校であることから、オバマ大統領の出席に否定的な論調も強く、中絶反対団体などから卒業式への招待を取り消すよう求める声が挙がっている。
また、カトリック系列の米大学において、カトリック教会の主張を広める団体が、オバマ大統領の式典出席を反対するウェブサイト「NotreDameScandal.com」を立ち上げた。同サイトによれば、出席反対に向け5万人の署名が集まったという。
(上記記事より)
政治家というのは、自分の国ではやはり何かと、難しい立場に立たされがちなのかもしれませんね。
【卒業は自分のペースで。】
■「早大の総代、今年も3年生 『早く法科大学院へ』」(毎日jp)
大学を3年で卒業する学生が増えている。「3年卒業」は、文部科学省が99年、大学改革の一環で学校教育法を改正し、可能になったが、早稲田大学法学部では2年連続、3年生の女子学生が、卒業生の総代に選ばれ、25日の卒業式で卒業証書を受け取る。
(略)早大で、3年での卒業ができるようになったのは01年から。法学部も04年の入学者から、卒業に必要な「124単位を取る」「全科目の平均点が80点以上」などの条件を満たす学生について3年での卒業を認めている。昨年は、初めて、05年に入学した女子学生が3年生総代となった。
早大法学部では今春、3年生の3.5%にあたる36人がこの制度で卒業。多くは法科大学院に進む。
(上記記事より)
昨今では、学士課程を3年で終える「飛び級」を制度として取り入れる大学が増えています。
学ぶ意欲と能力があれば、ペースを速めて卒業することも可能。
そんなわけで早稲田大学法学部では、2年連続で、3年で卒業する学生が総代を務めたとのこと。
今後は、こうした話題を様々な大学で聞くことになるかもしれませんね。
【ともに学んだ証。】
■「大阪市立大で卒業式 JR事故の犠牲者の両親に『在学記』」(MSN産経ニュース)
大阪市立大の卒業式も同日、大阪城ホール(同市中央区)であり、約1600人が卒業した。式典後には、JR福知山線脱線事故で亡くなった経済学部1回生の平郡恭介さん=当時(19)=の両親に、学業に励んだことを証明する「在学記」が手渡された。
(上記記事より)
■「秋葉原事件で犠牲武藤さんに『卒業証書』 東京芸大 音楽の夢 天国でも」(東京新聞)
東京・秋葉原で昨年六月に起きた無差別殺傷事件の犠牲者の一人、東京芸術大四年の武藤舞さん=当時(21)=に「卒業証書」が贈られた。二十五日に行われた東京芸大の卒業式。音楽、芸術への夢を追いかけ、志半ばで悲運に見舞われた武藤さんも、同級生とともにキャンパスを旅立った。
卒業証書は学位の授与ではないが、大学側が武藤さんの実績と努力を「東京芸大生の模範」と評価し、追悼の意を込めて贈られた。卒業式に先立ち、宮田亮平学長から遺族に手渡された。
(略)大学側は「武藤舞さんの芸術に対する気高い情熱とひたむきな努力は、東京芸大生の模範だった。優秀な学生を失った大学と在学生との追悼の気持ちを込め、卒業証書を遺影の前に捧(ささ)げる」とコメントした。
(上記記事より)
痛ましい事故によって、尊い学生の命が失われました。
本当に悲しい出来事で、周囲の方々、特に遺族の皆様の悲しみの大きさを思うと、ただただ胸が痛みます。
そんな中、大学が上記のような例外的な対応をとった……という報道。
それぞれの記事の大学、ともに、こういった対応が学則などで定められているわけではないでしょう。
ただ、大学としてできることを考えた結果の行動なのだと思います。
大学から、遺された方々へ。様々な意味が込められたメッセージです。
以上、卒業式に関する話題をご紹介していますが、ちょっと数が多いですので、続きは明日に。
以上、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。