マイスターです。
学校というのは、社会で最も安全な場所であるべきです。
高校でも大学でも、それは同じです。
しかし大学のキャンパスは、不特定多数の人間が出入りしても不審に思われず、セキュリティも甘く、警察のパトロールもないなど、実際には犯罪の温床になる条件を備えている、危うい環境でもあります。
■関西大学キャンパスで大麻密売 学生を逮捕
↑以前ご紹介したニュースでは、大学キャンパス内で大麻を売っていた容疑者が、調べに対して
「キャンパスは夜間も出入りでき、警察のパトロールもないので安心だった。白昼、学内で購入した学生らと一緒に吸うこともあった」
「大学のキャンパスなら自治が保障されていて警察が来ないので安全と思った。」
……などと供述していたことが報じられました。
この他、キャンパス内での窃盗を報じるニュースも少なくありませんし、通り魔的な犯行もしばしば起きています。
キャンパスの安全をどう確保するかは、大学の大きな課題です。
さて、今日はこんな記事を見つけましたので、ご紹介します。
【今日の大学関連ニュース】
■「学風か防犯か悩める京大 事件急増でも警察に拒否感」(Asahi.com)
5月25日未明、同区の吉田キャンパスで、自転車に乗って帰宅しようとした留学生の男性が金属バットを持った男3人に取り囲まれ、「カネを出せ」と脅された。男性が「ない」と断ると、バットで頭や下半身を殴られて負傷。6月16日昼には、同キャンパスの理学研究科の研究室から、学生約800人分の個人情報が入った教授のノートパソコンが盗まれた。いずれの事件もまだ未解決だ。
京大構内での傷害や盗難などの事件は、06年度の14件から07年度は38件に急増。今年度も8月までで21件に上る。下鴨署は6月末、大学に防犯カメラの設置増など警戒を強めるよう要望した。
京大は創立以来、「自由の学風」を校是に掲げる。権力からの独立や自治を重んじる言葉だが、こうした学生の自主性を尊重する運営が防犯面でマイナスとなっているとの指摘もある。
東大・本郷キャンパスでは、計10カ所の門のうち車両の出入り口となる「龍岡門」を除き夜間は閉鎖。他の大半の大学でも門を夜間閉鎖しているが、京大は吉田キャンパスの校門27カ所のうち20カ所で夜間も通行が自由。暴走族らが立ち入ることもしばしばあるという。
事件が起きない限り、警察官の立ち入りも認めないのも京大の特徴だ。安保闘争が盛んだった69年、大学と学生側との対立が激化。大学側の要請で入った機動隊員約2千人が構内に立てこもる学生らを強制排除した。こうした対応には教員からも批判が相次ぎ、それ以来、警察官が入構する際は学生代表が立ち会うのが原則となった。
警察側は「夜でも不審者が立ち入りやすく、巡回もできないので取り締まりにくい」と指摘するが、大学側は「学生の了解がなければ警察は入れられない」との姿勢だ。
(上記記事より)
京都大学の安全問題に関する記事です。
他にもこういった事件が起きている大学はあるはずなので、京都大学だけが危険というわけではないでしょう。それに犯罪が増加している理由が、大学の環境だけにあるのかどうかは明らかではありません。
ただ、記事で紹介されているような京都大学の特徴の数々が、より犯罪をしやすくする方向に働くものであることは、否定できません。
京都大学が「自由な学風」を良しとしていることはよく知られていますし、それを批判する人はいないでしょう。
警察などの権力から一線を引く姿勢を貫いている点も、これまでの歴史的な経緯などを考えれば、一概に批判はできません。
というか、こういったことは、学生も含め大学の関係者が決めることですから、外部の人間がどうこう言うことではありません。
ただ結果として、キャンパス内の犯罪が増加し、学生の安全が脅かされる環境になっているという点は解決すべきではないかと、個人的には思います。
学生の安全以上に大事なものは、ありません。
それは、いかなる大学であろうと、同じであるはずだと思います。
また窃盗などの犯罪が増加すれば、大学が保有する個人情報や、研究データなどの類だって安全とは言えなくなります。
昨今では、セキュリティが甘いという理由で、全国の国立大学を渡り歩きながら窃盗を繰り返す「専門家」だっているくらいです。
↓2006年には、こんな報道もありました。
東北大学に忍び込み現金を盗んだとして山形県警に逮捕された58歳の無職男が、「全国の国公立大ばかりを狙い盗みを繰り返していた」と供述していたことが15日、分かった。判明分だけでも、約5年間に29都道府県36大学で計190件敢行。“成果”は総額約1000万円に及んだ。「私大より警備が手薄だから」と“志望動機”を語り、日本列島をまたにかけていた。
(略)侵入先は北海道大、東北大、埼玉大、名古屋大、九州大など、北から南まで津々浦々。手口は、深夜に建物の換気扇などを壊すなどの“裏口入学”だ。研究室の机などから現金や金券を盗んでいたが、中には研究室の引き出しから鍵を盗んで、同じ大学で十数回も盗みを繰り返していたケースもあったとか。
(略)「中肉中背で見た目はどこにでもいそうな普通の人。大学に入っては、職員のように装ってとけ込み、ウロウロしてひと気がなくなるのを待って犯行に及んでいた。国公立大を狙うのはクセであり得意技ですな」(同署)。被害のほとんどがなぜか理系だった。
(sanspo.com 2006年6月16日「国公立大だけ狙い1000万円!36大学から盗み行脚」より)
大学を狙う窃盗犯の記事は、この他にも少なくありません。
このように、昔ながらのポリシーを貫いている京都大学のような場所は、今や犯罪を考える人間にとっては、ユートピアのような環境に見えるかも知れません。
記事では、京大出身の竹内洋・関西大教授が以下のようなコメントを寄せています。
昔の大学の門にはオーラのようなものがあって、部外者が立ち入ることはほとんどなかった。しかし、今はセールスマンも遠慮なく教授室に押しかける時代。警察を入れずに大学の安全と自治を両立させたいなら、学生ボランティアで防犯組織をつくるぐらいの覚悟が必要だ。
(上記記事より)
マイスターも同意見です。
嫌であろうとなかろうと、残念ながら犯罪を考える人間は大学にやって来ますから、何らかの対策を立てないわけにはいきません。
しかし警察や監視カメラに頼りたくないのであれば、後は自由の学風に則り、他の方法で自分達の安全を確保するしかありません。
そうしてまでも、「自治」と「安全」の両方を守ろうという動きが出てきたら、「さすが京大」と、世間も評価するのではと思います。
ちなみに京都大学は、深夜巡回のガードマンを2倍の6人に増員し、盗難事件があった理学研究科は6校舎に防犯カメラ約20台を設置する方針、とのこと。
この他にももちろん、ロックなどの設備を強化したりはしていると思います。
これで十分かどうかは、結果を見てみないとわかりませんが、逆に、こういった対策などにより、「警察が入らなくても大丈夫」と証明されたら、それはそれで興味深いです。
以上、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。