小学校は、地元の市立小学校で、家から歩いて10~15分くらい。
中学校は、やはり地元の市立中学校で、歩いて20分くらい。
3つくらいの小学校の卒業生が、中学校で合流している、という感じでした。
ともに、全国どこにでもある普通の「ザ・義務教育!」だったと思います。
自分が小中学生だった頃は特に不満もなく、公立学校で良かったと思います。
あの当時の環境であれば、自分が親だったとしても、迷わず子供を一番近い公立学校に通わせたでしょう。
ただ、当時とは環境がガラッと変わった現在、親だったら、いくつかの選択肢を吟味するのかなと思います。
私立は経済的に辛いけど、同じ公立の中でも、優れた試みをしている学校はありますからね。
学校選択制は、そんな保護者にとってはありがたい制度です。
選ばれる側の公立学校も、理想的な教育を求めて、試行錯誤の競争をしていると思います。
ただ、中央省庁によって制限されている部分が非常に多く、なかなか大胆な試みは実現できないのも事実。
そんな中で、こんなニュースが出てきました。
【教育関連ニュース】——————————————–
■「文科省 小中一貫教育検討へ 「9年一体型」「連携型」想定」(産経新聞 Yahoo!NEWS掲載)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051105-00000008-san-pol
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義務教育が「小学校」と「中学校」に分かれているのには、
学習面や、生徒の生活面など様々な理由があるのでしょう。
マイスターも、自分が小学校→中学校に上がるとき、その違いを特には考えませんでした。
中学になると男女ともに、身体的に成長しますし、精神的にも複雑な局面を迎えますので、まぁそのあたりが分ける理由かな、位に思っていました。
今でも、本当の理由はよく知りません。
いずれにしても、かつて「6・3制」が設計された時と比べて環境が変化し、
その辺の「小中を分ける理由」があいまいになってきているのは、確かなようです。
記事にある通り、既に東京都品川区など十四自治体が、構造改革特区の制度を利用して小中一貫教育を実験的に導入しています。
少しずつ、義務教育の在り方が各地で見直されているということでしょう。
では、品川区の例を見てみましょう。
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■「プラン21:小中連携教育」(東京都品川区教育委員会)
http://www2.city.shinagawa.tokyo.jp/jigyo/06/sidouka/p16.htm
・内容———————————
○中学校の教員が小学校へ訪問し、英語や算数、理科で少人数学習集団や課題別学習集団を編成しながら、TTで個に応じた指導をしています。
○体育や音楽、図工・美術、家庭科教員の相互訪問指導を実施しています。
○全教科でカリキュラムの見直しを通して、教材開発や授業改善をしています。
○児童会、生徒会の交流を通して、学校行事や避難訓練、挨拶運動などを合同で実施し、豊かな社会性や人間性を育成します。
○小学校の児童を中学校の部活動が体験できるよう体験入部を実施しています。
○図工・美術の連携による合同の作品展を実施しています。
○学校評価等を含め、小中連携に関する課題解決のための合同の職員会議を開催しています。
・ねらい——————————-
小学校と中学校が同じ教育観のもとで、児童・生徒を継続して指導することにより教育効果を一層高め、より連続性のある教育活動を推進します。
また、小学校と中学校のもつ文化や風土の違いを克服するとともに小学生が中学校に入学する際の精神的なストレスを軽減します。
さらに、小中連携を通して教員の異校種理解、指導法の工夫・改善をしながら、各連携校に応じた各教科・領域の9年間を見通したカリキュラムを編成するとともに、幅広い異年齢集団による活動の実践を通して、豊かな社会性や人間性を育成します。
また、小・中学校間にある教員の意思疎通の悪さや認識の違いを解消することも大きなねらいです。
(以上、上記の品川区教育委員会webサイトより)
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このように、品川区では主に「中学の教員が小学校を訪問する」という形で、小中の連携を強化しているのですね。
「小・中学校間にある教員の意思疎通の悪さや認識の違いを解消する」ため、
「学校評価等を含め、小中連携に関する課題解決のための合同の職員会議を開催」している、
というのも、非常に有意義だと思います。
様々なメリットがありそうですね。
ただもちろん、
「小学校と中学校の連携を強化」するのと、
「小中を一体化する」
のとは違いますから、そこは注意深く考えなければなりません。
報道を読む限り、文科省が検討している「義務教育学校」でも、
「一体型」や特区で実施している「連携型」など、様々なタイプを選択できる仕組みを想定しているようです。
小学校と中学校の数も全然違いますし、(小学校の方が中学校よりずっと多い)すべてを「一体型」にするわけにもいきませんから、現実的な検討案だと思います。
しかしこれ、地方の試みに引っ張られる形で、文科省が重い腰を上げた…という構図ですね。
もともと「構造改革特区」には、こうした、日本全体を牽引するタグボートのような役割が期待されている訳ですから、内閣官房・構造改革特区推進室にとってみれば、特区の制度がうまく機能したケースと言えるかも知れません。
ところで、今回の「6・3制の見直し、小中一体化」という報道を見て、
もう一つ、思い出した過去のニュースがあります。
それは、青森県の東通村が掲げた、「小中学校6・4制構想」です。
正確には、「教育環境デザインひがしどおり21」と言います。
これは30の施策で構成されているプランなのですが、この施策の中に、「小中学校6・4制」という内容があるのですね。
このニュース、[毎日新聞2005年3月18日 東京夕刊]などで報道されていたのですが、あいにくweb上の記事は、既に削除されてしまっています。
ですが、報道された当時、マイスターが個人的に東通村に問い合わせて送ってもらった資料があります!
当時はこのブログが存在していなかったので、これまで記事にしてはいませんでしたが、これもいい機会。
「教育環境デザインひがしどおり21」の主な特徴を、以下にご紹介します。
<青森県東通村 「教育環境デザインひがしどおり21」の概要>
○村独自の乳幼児教育プログラム創設
○小学校就学年齢の1年前倒し(5歳児就学)に伴う6・4制度
○中学校4年制における4年生の全寮制
→ 幼少中一貫教育
○PTA組織の発展的解消に伴う、幼少中を一括りにした新PTA組織(NPO法人化)によるスケールメリットを生かした学校運営関与・学校協力・学校監視
○1クラス2教諭制
○少人数・習熟度別クラス
○芸術教育の中学校コース選択制
このように、独創的な案が骨子として並んでいます。
この他にも、
・小学校、中学校における「学習塾等導入」
・幼稚園、小学校、中学校を区別しない住民参加の仕組み「住民参画組織」の創設
・平成30年には、学力検査において全国上位の結果を出す
などなど、きわめてドラスティックな案が目白押し。
もはやこれは「改革」といったレベルを通り越して、「教育の創造」という内容ではないかと思います。
おそらく、現行法では実現不可能と知った上で、それでも
「現状の制度的な枠組みから発想するのではなくて、自分たちが理想と思う教育制度を世に問おう。
世に問うことで、実現に向けて一歩先に進めるかも知れない」
と考え、議論の末に生み出した案なのでしょう。
マイスターが当時、青森県東通村「教育環境デザイン21特命主査」の方にメールでインタビューしたときには、以下のようなことをお聞きしました。
○各紙の報道では、どうしても5歳児就学と6・4制度が脚光を浴びているが、この実施のためには村独自の乳幼児教育プログラムを開発し、乳幼児教育を大切にしながら、5歳児就学に繋げていくということがあって、始めて可能だと考えている。
(ただ、各紙の報道では、大切なその部分が抜けてしまっている)
○これまで地域住民・児童・生徒からのヒアリングやグループインタビュー、シンポジウム、ワークショップ、村内全小学生・中学生・保護者への60項目にも及ぶアンケート調査(回収率95%)等がベースとなり、デザインは構成されている。
○よって、他市町村にもデザイン(施策)がそのまま当てはまるとは、考えていない。
○東通村の場合においては、現に学力低下が著しく、進学状況も芳しくない状況である。
村の子供たちにとって最も必要とされることを思った結果、まず学力の充実・向上を図ることが必要、という結論に至った。
子供たちが自分の夢をそれぞれ実現し、大きく羽ばたいていけることを村では様々な面から手助けをする。
それが21世紀の村づくりに繋がっていくことだと考えている。
(以上、青森県東通村 教育環境デザイン21特命主査様からのご回答の内容を整理)
いかがでしょうか。
もちろん、東通村がこうした案を村として打ち立てる背景には、
○独創的(変則的)な教育システムによって村民をつなぎ止める
○なるべく刺激的な案を出すことで、メディアにアピールする
といった、村の実益に直結する目論見もあると思います。
ただ、仮にそうだとしても、それは「政策提案によって自治体の競争力を高める」という、非常に健全な行動です。
ですから、案が実現するとしても、しないにしても、この提案自体は、称賛されてしかるべき行為だとマイスターは思います。
何より、そうした「全国を相手に、村をアピールする」という試みの旗印に「教育」を掲げたことはすばらしいです。
何しろこの「教育環境デザインひがしどおり21」、いたずらに派手なだけの案ではないのです。
マイスターは実際に資料を取り寄せて拝見しましたが、
非常に根本的、根元的なところから現代のあるべき教育について考え直し、
現状の仕組みについて、間違っていると思う部分は積極的に改め、
村民達の考えを問い、
最終的にはその道の専門家も交えて、激論を交わし合った末に生まれた、
そんなプランだと思います。
当時の毎日新聞の報道によりますと、この東通村の案について、
-文部科学省は「現行法では無理」とみるが、内閣官房・構造改革特区推進室は「敷地内に幼稚園を設けて、入学前から小1の内容を指導するなど、弾力的な運用で可能かもしれない」と話している。-(「毎日新聞2005年3月18日 東京夕刊」より)
というコメントが、それぞれの官庁から出ています。
今回の文科省の「小中一本化」という報道を見て、この東通村のことを思い出したマイスターの気持ち、わかっていただけますでしょうか。
地方自治体でも、優れた政策提案によって全国を先導する「タグボート」の役割を果たせるのかも知れない、という期待を、マイスターは抱くわけです。
他の自治体も、ぜひ、政策提案を競ってみてください!
(もちろん、実現に向けて最大限努力するのが大前提ですが…)
ところで、
東通村の公式webサイトの中に、このプランについてのページなんぞがあれば、
ただちにリンクを貼ってご紹介したいところですが……惜しむらくは、その情報公開体制。
「牧歌的」としか言いようがない、手作りバリバリのサイトしか見つからないのです…。
・東通村 公式webサイト
http://www.net.pref.aomori.jp/higashidoori/
せっかくここまで気合いを入れて作った挑戦的な案なのに、何やっているんですか東通村~!
今こそ、webサイトで全国に、その先進性をアッピールですよ!
世間が忘れても、マイスターは実現を応援していますから、
「日本のタグボート」を目指してがんばってください。
以上、
既存の「幼稚園」「小学校」「中学校」という日本の義務教育のシステムを
根本からデザインしなおそうとする、
中央省庁と地方の試みを、それぞれご紹介しました。
矛盾しているかも知れませんが、それぞれの案を応援したい!と思った、マイスターでした。
こんにちは。勝手な裏事情解釈をして、あちこちで批判されているカラです(笑。
小・中一貫は、特区構想が基で今度の中教審答申にも入ってますが、文科省が今これを強調している理由は、この間マイスターさんも言っていたように義務制の一体化を訴えて、中学校のみの義務教国庫負担金廃止を阻止するという狙いも大きいのでしょうね。
それと5歳児入学は、私立幼稚園団体が強く反対しているので実現しないそうです。私立幼稚園団体は、小選挙区における自民党の集票マシーンですから。私立幼稚園への就園奨励費補助金は、先の地方6団体の廃止リストに載っていましたが、昨年の政府・与党合意であっさり継続が決まっています。
こんにちは。いつもコメント、ありがとうございます。
私立幼稚園団体の件は、知りませんでした。
非常に興味深いですね。
それと、おっしゃるとおり、このタイミングで急に文部科学省が小・中一貫をアピールし始めたという点は、結構、露骨ですよね。
最近は『連携』というのが流行っているんですかねぇ・・・
小中連携。
いま話題の大学と企業の産学連携。
そして、最近じわじわときている高大連携。
教育システムと同時に、
親世代の教育も気になる今日この頃です。