マイスターです。
高校の科目「情報」がデビューしたのが2003年度。
「情報A」
「情報B」
「情報C」
と3種類あって、どれか1科目は必修として全生徒に学ばせることになっています。
さて、この「情報」という科目を入試に導入する大学が、少しずつですが増えてきているようです。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「教科「情報」を入試科目に 23大学で導入」(MSN毎日インタラクティブ)
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/news/20070208org00m040017000c.html
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今春の入試で高校の必修教科「情報」を一般入試科目に取り入れる大学が、東京農工大、専修大、武蔵工業大、神奈川大など、国立、私立合わせて23大学あることが分かった。前年に比べ8大学増。来年には国立奈良女子大が導入を決めており、入試科目にする大学は増えつつあるが、少子化時代を視野に、複数の入試日や選択科目を設定したり、求める学生像に沿った試験をする大学が増えている中で、「情報」はまだ少数派と言える。
(上記記事より)
この通り、現在23大学あります。
ただし実際には「情報」を選択できる学部学科が限定されているケースが多いようです。記事ではその辺りの情報もリストされていますので、詳細をご存じになりたい方はご覧ください。情報学部や経営学が目立っているようです。
ちなみに、「情報」という科目の目標は大きく3つありまして、
ア:日常生活や職業生活において、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を適切に活用し、主体的に情報を収集・処理・発信できる能力を育成。
イ:情報及び情報手段をより効果的に活用するための知識や技能を定着させ、情報に関する科学的な見方・考え方を育成。
ウ:情報化の進展が人間や社会に及ぼす影響を理解し、情報社会に参加する上での望ましい態度を育成。
……とされています。
……で、
「情報A」では、上記のうち「ア」の目標に、
「情報B」では、上記のうち「イ」の目標に、
「情報C」では、上記のうち「ウ」の目標に、
それぞれ重点を置いているのです。
マイスターが思うに、大まかに言って「A」は最低限のコンピュータリテラシーを含めた実用的な部分、「B」はコンピュータの仕組みや原理、「C」は情報が社会の中で果たす役割、という感じでしょうか。
昔はコンピュータと言えば「B」のような内容を連想したのかも知れませんが、今は様々な視点から情報について教えるようになっています。高校にも色々と教育上の特色や理念があるでしょうから、それにあわせて選択できるようにしたのでしょう。
このこと自体は、いいことだと思います。
では、大学入試では「情報A」、「情報B」、「情報C」のどれを選べるのか?
見てみると……大学によってバラバラですね。大学側も、学生に求める能力にあわせて、A、B、Cを選んでいるのです。これも、いいことだと思います。
ただ今後、「情報」の入試利用が増えていくと、こういった状況が崩れていくかも知れません。
つまり、
高校側は「どうせ教えるなら、A、B、Cのうち、大学入試でよく使われているものを教えよう」と考え、
大学側は、「高校では『情報○』がよく使われているみたいだから、これを入試で選べるようにしてはどうだろうか」と考える、
そんな展開になることも考えられるからです。
実際には「文系進学コースは『情報A』で、理系進学コースは『情報B』を学ぶ」みたいな形になるでしょうか。
こうなるとせっかくの「A」「B」「C」の選択制も、意味合いを変えてしまいます。
本来、(少なくとも学部生くらいまでの段階においては)情報の扱いに理系も文系もないとマイスターは思うのですが、入試の都合によってそんな学習の機会が狭められてしまったら嫌だなぁと心配です。
ただ「あくまでも自分達が学生に求める能力に従って入試科目を設定する」という態度を大学側が貫いていれば、そんなマイスターの心配も杞憂に終わります。
大学によってどの科目を選ばせるのかが違っていれば、高校側も色々な内容を生徒に教えることになりますよね。
そもそも大学の教育内容よって「情報A」「情報B」「情報C」のどれを入試に用いるのが適切かはバラバラのはずです(例えば新入生全員に、コンピュータの使い方をゼロから教えるのであれば、「情報A」の知識を入試段階で問う意味はあまりないかも知れません)。
せっかくの新科目なのですから、あまり周囲の大学に合わせず、まずは自分達がこれだと思うものを入試で問うてみてはいかがでしょうか。
また、情報という科目の性格上、
「情報」の試験だけは合格or不合格だけを問うことにして点数争いにはしない、なんていう選択肢もあるように思います。
それぞれにあった方法を模索してみてください。
以上、マイスターでした。
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※教科「情報」の詳細については1年前にご紹介しましたので、よろしければご覧ください。
(過去の関連記事)
・教科「情報」を入試科目に 14大学が来年度入試で
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50096203.html
※高校によっては、「情報」で学んだ知識を元に↓こんなコンテストに参加させているところもあるようです。
■シンククエスト
http://thinkquest.jp/index.html
オープンなweb教材を制作し、その出来を競うコンテストです。著作権の扱いから、各種の調査やデータ集め、情報の表現方法、英語など複数言語での情報伝達、社会に与える影響度等々、総合的な知的能力が求められる内容になっています。
国際コンテスト部門の応募者等、レベルの高い参加者になると、制作の過程で大学の研究者にインタビューするなんてこともあるようです。
国内、国外を問わず、大学のAO入試の場で自己アピールする材料にもなるんじゃないかと思います。
■「ThinkQuest:先輩からのメッセージ」(シンククエスト)
http://thinkquest.jp/community/message.html
本文で取り上げた内容とは若干意味合いが異なりますが、面白い取り組みですのでご紹介させていただきました。
はじめまして。いつも楽しく拝見しております。元SEで、現在は情報系の専門学校で教員をしている者です。
普通教科情報が導入されるということで、情報系に興味を持つ高校生が少しでも増えればと期待していました。
今年、その普通教科情報を履修してきた学生を受け持ったのですが、内容を聞いて愕然としました。Word、Excelの使い方を教える学校はまだいいほうで、情報の時間に数学や理科をやっていたとか。(拡大解釈というか、いわゆる履修漏れですね)
結局、受験科目じゃなきゃ高校は本腰入ないし、そもそも教えられる教員も少ないんでしょうね。ほとんどの学校が「情報A」を選択していることからもわかります。
情報に携わっている者の実感としては、数学や物理の先生が片手間に教えられるほど浅い内容でもないと思うのですが・・。「ソフトの使い方=情報」じゃない!!と声を大にして言いたいです。