ディ○ニーキャラクターというのは、デザイナーでも企画担当でも、一度は扱ってみたいと思う、あこがれの素材です。
マイスターも、小さな頃からディ○ニーのアニメや、キャラクターたちが登場する絵本などに親しんできており、ディ○ニーのキャラには結構詳しいです。生まれてから二十歳過ぎまで千葉県民だったのはダテじゃありません。
そんなわけで張りきったマイスター、普段の二倍は入念なリサーチを行い、あふれる愛とみなぎる気合で企画書を書き上げました。
そのうちの一つは、郵便屋さんに扮したミッ○ー○ウスが、様々なクイズを解きながら、手紙を持ってミニー○ウスのところに向かうという、ストーリーのあるゲームコンテンツでした。(ゲームの中でクイズを解いたりしているうちに、自然にその企業の製品に詳しくなっていくという、まぁ構成そのものはよくある宣伝コンテンツです)
が、このゲームに、依頼先企業から「待った」がかかってしまったのです。
依頼主:
「あー、この企画じゃダメですねぇ」
マイスター:
「えっ、ダメですか! ゲーム、面白くなかったでしょうか…?」
依頼主:
「いや、ゲームの内容はいいんですけど、キャラクターの使い方にまずい点があるんですよ。これじゃ絶対、ディ○ニーが認めてくれませんよ」
ディ○ニーのキャラクターを使う際には、非常に細かく定められたルールを守らなければならないのです。キャラごとに、許される性格や振る舞いが設定されているので、それを逸脱してはいけないのです。
その依頼主企業は、もう長いこと、ディ○ニーキャラクターを使った製品を扱っているので、ディ○ニーがどんなキャラクター利用を認め、どういう場合だと認めないのか、知り尽くしているのです。
したがって、その依頼主さんがダメということは、ディ○ニーが許可しないのは明らかでした。
マイスター:
「あの、私どもも、キャラクターの使用ルールは熟読したつもりだったのですが、一体どこがまずかったのでしょうか!? もしかして、使っちゃいけないキャラクターを使ってしまっていたとか?」…?」
ディ○ニーキャラクターを使用する際には、契約のパッケージがあるのです。
ミッ○ー、ミ○ー、ドナ○ド、○ーフィーなどは基本セットに含まれています。
この他、例えば白雪姫を使おうと思ったら、「プリンセスパッケージ」というコースを新たに追加契約しなければなりません。
(ちなみにプリンセスパッケージには、マーメイドやシンデレラも付いてきます。使いどころが難しいセットです)
もしかして、つい個人的な好みで多用してしまったシマリスの二人組は、基本セットに含まれてなかったのか!?
…などと、あせるマイスター。
依頼主:
「いえ、チッ○とデー○は使ってもOKです」
マイスター:
「じゃあ一体何が……」
依頼主:
「ミッ○ーなんですよ。」
マイスター:
「えっ、ミッ○ー? このゲームでは、ミッ○ーはクイズを解きながら、クルマを走らせてミ○ーの元までドライブしているだけなんですけど…それに何か問題が…?」
依頼主:
「このゲーム、解き終わるまでにどのくらい時間がかかりますか?」
マイスター:
「およそ10分から15分程度です。ご家庭で、お母様と小さなお子様が楽しめるゲームを目指しましたので、そのくらいの時間に設定しました」
依頼主:
「でしょう。10分はかかりますよね。それがいけない。」
マイスター:
「(???)」
依頼主:
「いいですか、ミッ○ーはミ○ーちゃんのことが大好きなんです。いつでも一緒にいないといけないんです。
10分も離れ離れになっていたら、ものすごく寂しい思いでいるはずでしょう?
だから、10分以上二人が離れているゲームは、ディ○ニー的には認められないんです。
ミッ○ー、10分も我慢していたら、
寂しさに耐えられなくなっちゃってる
はずですからね」
マイスター:
「………」
10分くらい我慢してよミッ○ー!
…と、マイスターが心の中で叫んだことは、言うまでもありません。
ディ○ニーのキャラクターコードが厳しいと聞いてはいましたが、まさかこれほどとは!
どうも彼を10分間ガールフレンドから引き離すことはディ○ニー世界の大罪だったらしく、結局、その企画は通りませんでした。
彼女に10分会えないくらいで、悶死でもするんかいと、うらみがましくあのかわいいネズミさんを見つめたものです。以上、ウソのような本当の話。
上記のディ○ニーは、おそらく世界で最も、キャラクターの使用に関するルールを厳しく設定している例です。キャラクターを使う際に、ここまで細かくあれこれ言われることは、普通はあまりないと思います。
とはいえ、既製のキャラクターを使う際に、様々な制約がある程度かかってくることは事実です。
今日は、<人気キャラクターを大学の広報に活用する!>というテーマで考えてみたいと思いますが、まず、上記のような制約があるということは、前提として知っておいていただいた方がよろしいかと思います。
さて、このように扱いの難しい面はありますが、
人気キャラクターのイメージをそのまま借り受けることができるという点は、広報的にはやっぱりプラスです。
ただでさえ、大学が提供している価値は、わかりにくいものばかり。
本来なら無限の楽しみを与えてくれるものであるはずの「学び」が、頭の良い皆さんの手によって、
「意図的に難解にしているんじゃないか?これ」
と思わせるような、へんてこな広報表現にされてしまうのは、(残念ながら)よくあることなのですよね。
マイスターなんかは、内容のレベルにかかわらず学びというのは「とても身近な楽しみ」だと思っていますので、その身近な楽しさを率直に伝えてみたらどうかなとよく思うのです。
…が、我が国の大学には、学びは高い頂の上に行ったものだけが楽しめる高尚な行為だと考えておられる方が多いらしく、学びの「楽しさ」の部分を伝えるのがうまくいっていないように思います。
「学びの魅力」というテーマになると、「20年山にこもった修験僧が岩山のてっぺんでようやく悟りを開いたときの喜び」、みたいなレベルの話になることが多いような……(本当は、もっと手前の段階にも、いっぱい学びの魅力はあると思うのです)
うまくやらないと、なんだか縁遠い存在に感じさせてしまう「学び」。
その近寄りがたい感じを緩和させるにも、キャラクターは有効です。
というわけで、その具体的な事例を。
■「東洋大学 入試情報」(東洋大学)
http://www.toyo.ac.jp/nyushi/index.html
■「Between:キャラクターでアイキャッチし、教育内容の理解につなげる」(Benesse)
http://benesse.jp/berd/center/open/dai/between/2004/01/01toku_13.html
大学のキャラクター活用、というテーマで、真っ先にこれを思い起こされた方も多いのではないでしょうか。
それくらい定着した感のある、東洋大学のムーミンです。
パンフレットやwebサイトの他、交通広告でも活用されており、
大学業界では珍しい駅ジャックや、都電のラッピング広告も行われました。
<キャラクター使用+交通広告ジャック>
というのは、お互いの効果を高める、素晴らしい組み合わせだと思います。
イメージキャラクターの採用を検討し始めたのは開学100年を越えた節目の90年頃で、入試部内で「東洋大学のイメージをつくり変えたい」という声が上がった。大学の存在をより多くの高校生に認識してもらうためには、視覚に訴える必要があるという方向で議論を重ね、アニメーションキャラクターの採用を決定した。日本の若者に知られているアニメの中でもムーミンは、その家族や友人たちも含めた「社会」を単位としたキャラクターであることが選定のポイントとなった。(上記の「Between」記事より)
「社会」を感じさせるというのが、ポイントだったのですね。
東洋大学入試サイトを開いた時に、「みんなの大学」というコピーが表示されますが、確かにムーミンのキャラクターとよくマッチしてます。
これまでマイスターは<東洋大学=哲学系が発祥>というイメージから、物事を哲学的に考えていそうなキャラクターにしたのかな?くらいに思っていたのですが(ほら、スナフキンなんて哲学者っぽくないですか?)、ちょっと予想がずれていたようでした。
でも、
「どういう場面で使っても大きな違和感を与えない」
というのは、かなり大きなポイントだったんじゃないかなと推察します。
知名度の割にムーミンってキャラクターとしては無色透明というか、静かな印象をたたえたキャラクターだとマイスターは感じるのですが、いかがでしょうか。
大学ロゴと並べても、そんなにロゴの存在を圧迫しないし、
公式の封筒にプリントしてあっても問題無さそうだし。
でもそれでいて、ムーミン一家がならんでいると、つい見てしまう、適度な存在感。とっても使いやすいキャラクターだと、個人的には思います。
親世代から見て悪い印象がないというのも、大きいですね。
【キャラクターは、あらゆるメディアをつなぐもの。だから、あらゆるメディアで徹底的に使うべし】
…という点で見ても、東洋大学さんはうまくやっておられると思います。
↓キャンパスの中にも、ちゃんといます。
■「入試インフォメーションセンター『ムーミンサルーン』の
開室について」(東洋大学)
http://www.toyo.ac.jp/nyushi/news/0511/051121.html
他大学の皆様の中には、「ムーミンを使った」というところだけに目がいってしまっている方もおられるのではと思いますが、<どう使ったか>という部分からも、学ぶところは多そうです。
これはまったく根拠のない、個人的な予想に過ぎないのですが、
大学のキャラクター活用という点でいうと、
今後は、大学オリジナルキャラクターの展開よりも、
既存の人気キャラクターをどう使うか、というところが、
大学広報の大きな勝負ポイントになってくるような気がいたします。
普通、キャラクターの版権は、1業界につき1社の契約が上限です。大学同士、人気キャラクターの取り合いになることだって、あるかも知れません。
わりと早い者勝ちなので、これはと思うキャラクターを見つけたら、すぐにおさえておいた方が良いかも知れませんよ。
さて、長くなってきましたので、最後にもう一例だけご紹介して終わりにします。
それはマイスターが高校生のとき、たまたま手に取った大学案内冊子のこと。
今でもよく覚えています。それは『サイボーグ009』のキャラクターをつかった、芝浦工業大学の大学案内でした。
工学系なので、テクノロジーを感じさせるキャラクターを起用したのだろうと思うのですが、単にキャラクターのビジュアルを使うだけではなく、内容も工夫されていました。
機械や材料工学、センサー工学などを専門とする様々な研究者達が、自分の専門の見地から、サイボーグ009の各キャラクターに使われている技術の実現可能性について解説する、という構成だったのです。
「007(自由に変身できるサイボーグ)は将来実現可能です」などと専門の研究者が語っている文章は、理工系への進学を考えていた高校生の自分には非常に面白く、気づけばじっくりと、何度も読み返していました。
思えばあのパンフレットは、『サイボーグ009』で描かれるような近未来の世界・テクノロジーの世界と、大学との学び、そしてそのときの自分とを、キャラクターを使うことでうまく結び付けていたのですね。
実によくできた、魅力的なパンフでした。
誤解されている方も多いと思うのですが、キャラクターのイラストを多用すれば高校生が興味を持ってくれるかというと、必ずしもそうではないのです。
キャラクターとは、内包する様々な概念やストーリー、世界観なども含めて、全部がキャラクターです。そういったキャラクターの力を活かすには、使う方にも相応の工夫が必要なのですよね。
あのときに読んだ芝浦工大のパンフは、そんなキャラクター活用の好例だったと思います。
高校生にはなんだかよくわからないものに感じられるであろう大学の「学び」を、
「あぁ、この大学で学んだら、こんな近未来の世界に近づけるかも」
という具体的な夢のカタチにして見せてくれる、そんな役割をキャラクターが担っていました。
キャラクターって、見た目だけではないのですよね。
魅力的で愛されるキャラクターというのは、必ず付随するストーリーや世界観を抱えています。
そうしたものもすべてひっくるめて、うまく活用してあげてください。
うまく使えば、これほど強力かつ効果的に、学びの楽しさを伝えてくれるものはありません。
以上、マイスターでした。
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(関連記事)
・大学のキャラクター活用(2):キャラクターを使った大学広報の実例
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50166452.html
・大学のキャラクター活用(3):人気キャラクターを自校の広報に利用する
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50166950.html
どーしようもなく重箱で恐縮ですが、「変身するサイボーグ」は 007です(^_^;)
キャラクター利用ではありませんが、これもなかなかのインパクトで、マスコミによく取り上げられてましたっけ(^_^;)
KIT金沢工業大学_ガンダム創出学
http://www.kitnet.jp/gundam/
JAXA のスタッフに「ガンオタ」が多いという証言もあり(NHK-BS でガンダム特集をやったときに、JAXA の人が出てきて劇場版ガンダムの大気圏突入シーンを「検証」していた(^_^;))、理系の大学はこっち系の作品とは相性がよさそうです。
変身は007でしたか、失礼しました!
(そうか、008は水中で活動できる男の方でしたっけ…)
ご指摘ありがとうございます。さっそく直しました。
理工系はロボット好きそうですよね。
そう言えば自分が出た理工学部でも、
「ロボットは人間にどこまで近づけるか」という授業があって、鉄人28号とか色々出てきてました。
ガンダム創出学のように、キャラクターが学問対象になっている事例というのも、まとめたら面白そうですね。
ドラえもん学というのも聞いたことがありますし。
あとは何があるかなー。
こんな記事を書いたんですが、トラックバックが通らなかった(^_^;)
あなたのパソコンを、ムーミンが守ります。
http://hiro.intlcafe.info/item/1738
あれー?
禁止ワードには引っかかっていないと思うんですが…なんででしょう…?
混乱させてしまって申し訳ございませんでした。