マイスターです。
「なんとなくそんな気はしていた」という教員の方も多いのではないでしょうか。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「後ろに座る学生、教員に厳しく自分に甘く 産能大調べ」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200705040176.html
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教室の後方に座る学生はテストの成績は悪い一方、講義への評価は厳しかった――。産業能率大(神奈川県伊勢原市)の松村有二・情報マネジメント学部教授が約140人の学生を対象に調べたところ、そんな傾向が明らかになった。自由に座席を選べる講義では、前に座る学生ほど勉強に取り組む姿勢も前向きのようだ。
調査は、05年9月~06年1月の松村教授の「調査の基礎」の受講生を対象にした。学生にはICカードを渡し、着席時に座席の端末に載せることで、誰がどこに座ったかがわかる。定員298人の教室を使い、11回の講義で各学生の着席パターンを記録。期末試験と講義の最後に行った授業評価アンケート(10項目)の結果を、前方(32人)、中央(81人)、後方(30人)の3グループに分けて分析した。
試験では、前方の平均点が51.2点だったのに対し、後方は30.9点と、20点以上開いた。一方、授業評価では、「配布資料の役立ち具合」「教員の熱意」「理解度」など全項目で前方より後方の方が厳しい評価をした。後方グループには、教員に厳しく、自分に甘い姿勢がうかがえる。
(上記記事より)
面白い調査結果です。
「調査の基礎」という授業の受講生を対象にしたとのこと。翌年度、同じ授業で資料の一つとして使われるのかもしれません。
記事の続きにもありますが、「成績が悪いから後ろに座るのか、それとも後ろに座るから成績が悪くなるのか」の因果関係は、まだ明らかではありません。
今後も調査をされるとのことですから、期待しましょう。
「なるべく奥行きの短い教室を設計したら、学習効果が上がるのか?」みたいな話につながるのかもしれません。もしくはもっと抜本的に、少人数制を徹底しようという話になるのかも知れません。いずれにしても、こういった調査結果は大学にとって結構、貴重だと思います。
ところで、この調査で特に興味深いのは、成績の悪い「後方グループ」が、教員には厳しい評価をしていたという部分ではないでしょうか。
後ろに座っておいて「教員の熱意」もないだろう、とお思いの方もいらっしゃることでしょう。
マイスターも、自分が学生の頃、教室の後ろの方でマガジンを読んでいたり、寝ていたりした同級生のことを思い出しました。
彼等も、もしかすると授業アンケートには「教え方がヘタ」みたいなことをさらっと書いていたのかも知れません。(小学生ならともかく、大学生ともなれば「教え方がヘタだから授業を聞けないんだ」という言い分は通用しないのですが)
こうなると、「授業評価って何だろう?」みたいな話になってきますよね。
いつも寝ているあの学生や、ガイダンスと試験にしか来なかったあの学生が、あなたの授業評価のポイントを下げているのだとしたら……なんだかなぁ、って気持ちにもなるでしょう、きっと。
上記は、大学の教員の方が書かれた本です。
本の導入部で、授業のはじまりから終わりまでずっと居眠りをしていた学生が、授業評価シートに「よくわからなかった」「知的刺激を受けなかった」と記述していた、という著者の実体験が書かれています。
冒頭の記事を読んで、この記述を思い出しました。
ただ、「これからは学びに対して積極的・主体的ではない大学生が普通に入学してくる時代なのだから、授業に対して興味を持たせるのも教員の責任だ」という意見もあるでしょう。
確かに大学によっては、そういうことが求められているかもしれません。
いずれにしても、こういった調査結果があることはふまえた上で、「ではどうすればいいか」……と考え、前進につなげられると良いですよね。
以上、マイスターでした。
「これからは学びに対して積極的・主体的ではない大学生が普通に入学してくる時代なのだから、授業に対して興味を持たせるのも教員の責任だ」という意見、たまに耳にします。授業をより魅力的にするよう努力を継続すべきだという意味でしたら納得できます。ただ、そもそも学びに対して積極的でない人に興味を持たせるなんてことが可能…? お腹がすいていない人に、どんなに料理のすばらしさを説いても、やっぱり食べないのと一緒かなと思うのです。あと、授業を面白おかしくして一見興味を持ったように勘違いさせることはできます。でも、授業の内容はかなり浅くなります。本質的に、これは教員の責任ではなくて、学生の問題であることを認識すべきだと思います。その上で解決策を見出そうとしないと、永遠に解決しないと思っています。
ぷちぽわんさま:
マイスターです。いつもコメント、ありがとうございます。
ご指摘、その通りだと思います。
と言いつつ、しかし今後、「授業に対して興味を持たせる」という点からやっていくことを求められている大学も現実として出てくるのだろうな……とも思います。
本質的な部分から、「大学の勉強って面白い!」「○○学って面白い!」と思わせる、触発するような環境を設定することが、大学の役割の一つになってくるのかもしれないなと、コメントをいただいて考えました。
また、ご意見いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
※本文の文末、若干表現を変えてみました。
はじめまして。すでに学習意欲の喚起そのものを求められている大学の一員です(笑
学部から大学院にかけて、某大手予備校で講師をつとめましたが、多浪でかつ低学力の受講者は、まるで人生に疲れているかのような強いアパシーを持っていることが多いのですね。
そういう受講者には、“つかみ”でエンターテイメント性のある話をするとか、毎回の授業で“この授業でしか聞けない話を聞いた”という見せかけの実感を持たせてあげるといった、小手先のテクニックが必要になります。結果として教育効果が上がるのであれば、やれることは何でもやる、ということですね。
どこの大学でも、多かれ少なかれ、そういった工夫を凝らさないと授業を聞いてもくれない学生はいるものです。「本質的に学生の問題である」ということに反論はないのですが、入り口でつまずいてしまっている学生に本質論を説いても聞いてはくれませんよね。
素朴な疑問なんですが、この授業評価アンケートは記名式なのでしょうか?なぜそのアンケートを書いた学生が、前方に座っていたか、中央なのか、後方なのか、わかるのでしょうか?
それとも(よくわかりませんが)机に端末がついていて、そこでアンケートを行ったとか?
私が卒業した大学の授業評価アンケートは無記名だったような・・・。いまは記名式が主流なのかしら?
マイスター様
まさにその通りで、実際には、大学でどれだけ学生の目を開かせることが出来るか、勝負をしないといけない時期が来ていると思います。特に私立では。
私の勤める大学(学科)では、上から明示的に指示されてはいないものの、学生のモチベーションを向上させることに対して教員が知恵を出しあっています。甘やかすのと、手をかけるのとは紙一重で、いつもその狭間でどうすべきか悩まされます。というのも、意欲のないように見える学生でも、ある程度手をかけるとその面白さが理解できる瞬間があるようで、たまに化ける学生がいるんです。それはそれで教員冥利に尽きます。
ただ、一方で、優秀層の学生がないがしろにされている現実があるともいえます。これは相当悩ましい現象だったりします。
> なぜそのアンケートを書いた学生が、
> 前方に座っていたか、中央なのか、
> 後方なのか、わかるのでしょうか?
一応関係者なのでお答えしておきますね。
大教室(席数297)の全座席に非接触IC
カード読み取り装置が設置してあります、そして、学生には専用のICカードを配布してまして、学生が装置にICカードを載せると、学生の着席状況を把握することが出来るという仕掛けになっています。詳細は下記を参照願います。
http://blog.goo.ne.jp/sanno_el/e/b776eb5f1c9af1fd44e06d4b51de460c
>あき@さんのうさま
めぐまです。お答え、どうもありがとうございました。参照URLを確認する限り、机上の端末にて着席状況を把握し、その同じ端末でアンケートを行っているので、両者が紐付いている、ということですね。つまり記名式ということですね。
ありがとうございました。
大学側も、色々と大変なのですね。私の学部時代は、出席を取る授業もほぼ皆無(受講したことのある授業の最小人数は先生一人、学生二人。いやでもわかってしまう・・・)、出るか出ないかは学生側の判断にゆだねられ、試験が通れば問題ないと(勝手に)思ってました。面白そうと思った授業には、履修してなくても先生に直談判して、もぐらせてもらってました。要は、魅力的な授業をする先生が多かった、ってことですね。だから、記名式のアンケートをするより、信頼関係ができていたように思います。(授業評価アンケートは無記名だったと記憶していますが、学生の人数が少なかったら、記名だろうが無記名だろうがわかってしまうので、同じだし。)
母校にはいつまでもかわらないことを望んでいます。
この問題はうちの大学でも切実です。ですが私は過剰なサービスはしません。大学は「入学を許可」しているだけなので、入学してくる学生に対して「そもそも当該科目への興味関心を引きつける」ところから責任を負う義務はないと考えます。
退学したければすればいい。勉強する気もないのに大学進学を選択する若者の気持ちが最近よくわかりません。教科書もロクに買わないで授業に出てくるんですからね。そういう学生の相手をする暇があったら、中位~上位層の学生の能力をしっかりと伸ばすことに専念したいと思います。
“Heaven helps the man who helps himself.”です。
学生の立場から言わせてもらいます。
学生も入学当初は学問に対して興味を持っている者が意外と多いんですよ。
このことを教職員は把握しているのか?
そういった向学心のある学生が大学に失望していくのはなぜか?
教授の話がつまらないから、
大教室で高校のときと変わらない与えられるばかりで知的刺激に乏しい講義を聞くことを強制されるから。
教職員はこういったことについてどれだけ把握しているのか。
学生のニーズを把握しようと努力しているか。
それがなされていないからこそ、大学教育は衰退してきたのです。
それはつまり、教職員が教育者として無能だということです。
5年前のコメントにレスをつけるのも間抜けですが、まぁ言わせてもらいますよ?
「学問」に対して、どんなイメージを持って入学したのか?あるいは具体的なイメージもなく入学したのではないか?
自分のイメージと違うといって勝手に失望してるだけなのか?
学生のニーズ?
それは低俗な要求ですか、エンターテイメント性がほしいのですか?
そうでなければ、相応の教養が求められるはずですが、受け身の学生に期待できるわけがない。
いつまでも、お客様気分では困りますね。無能な学生を一流の学者に育てたとして、それは学生が偉いのだろうか?
5年後の今あなたが、どんな社会人になったのか(あるいは、まだ親元にいるのか)想像に難くはないですね。