大学同士のタイアップ事例

マイスターです。

突然ですが、

「コラボ」「タイアップ」の違いを説明できますか?

両方とも、企業同士が連携してキャンペーンを行ったりしたときなどに、耳にする言葉ですよね。特に「コラボ(コラボレーション)」は最近よく聞くので、マイスターなりにご説明してみたいと思います。

まず「コラボ(コラボレーション)」というのは、企業同士がお互いの経営資源を活かす形で共同企画を立ち上げ、製品やサービスを生み出す行為だと言えます。

■「Columbia×ANA」コラボレーション仕様のリクライニングシューズ
http://www.nikkeibp.co.jp/news/life06q3/506353/
■「宝塚歌劇」と「ハローキティ」がコラボ商品[発表資料] http://smartwoman.nikkei.co.jp/culture/news/article.aspx?id=2006051805136c1

↑ぱっと検索したら、こんな事例が出てきました。この他、最近ですと、キリンビバレッジとアディダスジャパンが共同開発した飲料「903」が、コラボのわかりやすい例です。一つの製品を、二社で共同開発するわけですから、双方の企画開発チームが密接に連携し合わないと実現できません。結構大変です。
でも企業はコラボを積極的にやるようになってきていますね。背景には、その製品の売り上げを上げるだけではなく、「自社の開発チームに多様な経験をさせたい」というねらいもあるのでしょう。

一方「タイアップ」というのは、企業同士がそれぞれの販売チャネル(販路)や顧客を相互に利用することで、売り上げを高めようという行為です。
タイアップを頻繁に活用するのは、音楽業界ですよね。新曲をCMのBGMとして提供することで、消費者にアピールするのは、今では普通です。CMを作る企業の方も、有名アーティストの曲を使うことでCMのインパクトを強められますから、双方にとってプロモーション効果があるわけです。全盛期の小室哲哉氏は、作る曲のほとんどが、何かとのタイアップだったと言ってもいいでしょう。
タイアップは、どちらかというと宣伝やマーケティングの部門が中心になって行う連携手法で、コラボほど深いおつきあいではありません。お互いに、相手の製品のイメージを借りることで、自分達の製品やサービスが売れればそれで良いわけです。

コラボは人的リソースでの連携、タイアップは製品・サービス同士の連携、
という言い方もできるかも知れません。
こう書くとなんだかコラボの方がエライような気がしますが、別にそんなことはありません。要は、目的に合わせて適切な連携方法をとり、成果が上がればいいのです。

さて、大学業界でも、「連携」が流行っています。
一番多いのは「産学連携」ですが、最近では大学同士、それも、複数大学が連携する取り組みについても、耳にするようになってきました。

■「県内31大学が連携 大学コンソーシアムひょうご神戸」(UNN関西学生報道連盟)
http://www.unn-news.com/newsflsh/bunka/20060614211239.html
■「『教育』『研究』で11大学が連携へ 九州・沖縄の国立大」(西日本新聞)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/20060616/20060616_001.shtml■「大学センター設立推進、キャンパス都市目指す…8高等教育機関」(eHAKO)
http://www.ehako.com/news/news/6575_index_msg.shtml

↓先日のニュースクリップでご紹介したこれも、複数の大学が合同で連携大学院を運営するという報道ですね。
■「国がITER施設と大学の連携を提案」(東奥日報)
http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2006/0609/nto0609_5.asp

こうした報道はもう、珍しくなくなってきた気がします。
それくらい、大学同士の連携は、当たり前になってきているのですね。

ところで、上記はすべて、「コラボ」の事例です。
考えてみれば、大学が「連携」という言葉を使う時は、たいていコラボですよね。
企業と逆で、タイアップはあまりありません。
大学は教育・研究上のメリットを求めて「連携」を行うのであって、単なるセールスプロモーションのための連携にはそんなに興味がない、ということかもしれません。

というわけで、今回は敢えて、大学同士のタイアップの例をご紹介します。

【教育関連ニュース】—————————————-

■「慶應義塾大学・早稲田大学 合同説明会」(進研アド)
http://www.waseda.jp/nyusi/c_sch/wk_goudou/index.html

・「進学相談会の日程」(早稲田大学)
http://www.waseda.jp/nyusi/c_sch/
・「2006年度進学相談会」(慶應義塾大学)
http://www.admissions.keio.ac.jp/meeting/

(参考:2005年度のもの)
■「慶応義塾大学・早稲田大学 合同説明会(2005)」(ライオン企画)
http://www.admissions.keio.ac.jp/meeting/WK2005.pdf
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というわけで、早稲田・慶應の合同進学説明会です。
「大学職員.net -Blog/News-」の記事で知りました。こんなところでも、ツートップの布陣を敷いている両校です。

ところで大学関係者であれば、地元の新聞社などが主催する、地方での高校生向け進学相談会に行かれたことがあるかも知れません。(数十校の大学が、ホテルのホールなどに並んだテーブルで、その地域の高校生と進学相談をするアレです)
あれは、タイアップでも何でもありません。ただの、合同説明会です。その説明会に参加することで、他大学が持っている何らかの価値を、自校のために活用できるわけではありませんよね。
あの手の合同進学説明会に参加したからといって、大学同士がタイアップしたことによるあらたなイメージが創出されるということはありません。

しかし、この早稲田、慶應の合同説明会は、それとはちょっと話が違っています。

なぜ、この両校が合同説明会を開催するか、おわかりでしょうか?
ちょっと考えるとすぐ、ふたつの理由に思い至ります。

○両校の顧客ターゲット層がほとんど重なっている

慶應義塾大学にとって、自校の受験生がもっとも集まっているところはどこか。それは、早稲田の進学説明会会場です。
早稲田にとっても状況は同じです。できることなら、慶応を受ける受験生には、早稲田も受けて欲しいと思うわけです。
両校が合同で説明会を行えば、最も効率的に志願者を会場に集めることができるわけです。お互いに、お互いの集客力を利用しているという状況ですね。

ライバル校と合同で説明会を行うことに、違和感を感じる向きもあるかもしれませんが、販売チャネルを共有するという選択は、ここではとても理にかなった行為です。
一校単独で行うより、コストは削減でき、集客力は上げられます。

もちろん、最終的には受験生の奪い合いになるのですが、それでも会場に集まる受験生の大半は、少なくとも早稲田か慶應のどちらかを志望するわけですから、併願する学生のことも考えれば、50%以上は自校の志望者と見られるわけです。
先述した新聞社主催の合同説明会の場合、へたすりゃ百校近い大学が会場に並びますが、その場合おそらく、自校の志願者は参加者の数十分の一程度。それを考えると、早稲田・慶應の説明会は、かなりコストパフォーマンスはいいのです。

この合同説明会のページ、よく見てみてください。
合同説明会を開催しているのは、地方会場、それも東京からかなり遠い都市だけです。両校とも首都圏でなら、ピンで説明会をやっても集められるのですね。

○自校のブランド価値を低めずに、お互いの高いブランドイメージを活用できる

タイアップの真価が発揮されるのは、むしろこちらかもしれません。

マイスターはいつも思うのですが、早稲田大学、慶應義塾大学が最も高い評価を集めるのは、「早・慶」というひとくくりでまとめられた時なのではないでしょうか。
早稲田、慶應という名前はそれぞれで一流ブランドですが、そのブランド価値が簡単に崩れない理由は、「早・慶」セットでのブランドイメージが強力だからだと思うのです。

早稲田が仮に低迷しても、早慶が対になっている限り、そのうち所定の位置に戻ります。逆もまたしかりで、慶應が凋落していても、早稲田のライバルだとされている限り、そう簡単に慶應の価値は崩れません。
自校のためにも、お互いの価値を高め合っていかなければならない、そんな関係なんじゃないかなぁと、マイスターはいつも考えています。
合同説明会の開催は、そんな「早慶ブランド」を世間にアピールする機会の一つなのではないでしょうか。

この合同説明会に参加することで、両校とも、ピンでやる時とは違った価値を産みだし、享受できているのだと思います。これこそ、タイアップの醍醐味です。

両校にとってライバル校は、「自校の価値を下げない」という意味で、理想のタイアップ相手だと考えることもできますよね。

正直言って、新聞社主催の合同説明会で使う説明ブースは、その大学のブランド価値を下げます。場所も限られているし、ブース回りのデザインやレイアウトも制限されています。大きな音も出せませんし、何より、他の大学と十把一絡げに扱われるということが、ブランドを重視する大学にとっては、大きな問題なのだろうと思います。実際、本当のトップグループ大学は、ああいった説明会に参加していません。
(高校生が一番気にしている大学が不参加なのですね)
他にも参加しない理由は色々あるのでしょうが、安っぽいイメージを付与されるくらいなら、出席しない方がいいという判断もあるのではないでしょうか。

その点、早稲田と慶應なら、お互いのブランドを高めることはあれど、貶めることはありません。理想のタイアップ相手です。

もちろんこの両校は、説明会意外にもあらゆるところで連携しています。コラボもやっているかもしれません。
ただタイアップするためだけの関係ではないのでしょう。

とはいえこの合同説明会は、タイアップの事例として興味深いです。

産業界に、このような関係の二社は、なかなか見つけられません。「競合だけどタイアップ効果がある」というのは、大学ならではの現象なのかも知れません。
企業でのタイアップというのは、通常、異業種間の連携です。松下とSONYが、お互いのプラズマテレビの宣伝でタイアップするなんて、考えられないでしょう。東芝のエアコンと日立のエアコンが、タイアップでキャンペーンを張るなんて、ないでしょう。

でも、学部構成が似通った二大学は、タイアップできるのです。

大学って面白いなぁ、と思うマイスターでした。

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