早大と筑波大、理工学と医学の学士を取得する連携プログラム

マイスターです。

何らかの学部に入学後、進路転換して医師を目指す人というのは、たまにいます。
マイスターの高校時代の同級生にも、一度入った大学を退学し、医学部に入り直した方がいました。

医師になるためには、時間やお金がかかります。
まして受験勉強からやり直すとなると、不合格の可能性も含め、かなりのリスクになるでしょう。
なので、大学を卒業してから医学部の2年次、3年次に編入するという方も、世の中には少なからずいるようです。

さて、今日はこんなニュースをご紹介します。

【今日の大学関連ニュース】
■「早大・筑波大:理工から編入し医師の道 最短8年間で」(毎日jp)

早稲田大と筑波大は20日、理工学と医学の両方を最短8年間で学べる教育プログラムを10年度にも始めると発表した。両分野に精通する有能な医師の育成が狙いだが、医学部のない早大にとっては、理工学部から筑波大医学群に編入して医師になる道が開かれる。
今回のように学生が二つの大学で同時に学位を取れる仕組みは「デュアル・ディグリー制度」などと呼ばれている。だが、日本では医学部(群)への編入は通常大卒者を対象とし、他大学他学部生を受け入れるケースは非常に珍しい。
理工学を学ぶには通常4年、医学では6年かかるが、両大学の新しいプログラムは、早大理工学部に入学して3年間学んだ学生が筑波大医学群に編入して4年間学び、8年目に早大に戻って二つの学位を取得する--ようなケースを想定する。ただし、医学群への編入希望者には試験(定員5人)への合格が課される。
(上記記事より)

そんなわけで、「理工学と医学の両方を最短8年間で学べる教育プログラム」を、早稲田大学と筑波大学が連携して始めるそうです。

■「理工学術院」(早稲田大学)
■「医学群 医学類」(筑波大学)

「研究志向の医師を育成するのが目標」、「両分野を橋渡しする人材を共同で育てたい」と、両大学のトップはコメントしています。

ところで早稲田大学は、東京女子医科大学とも連携した研究拠点を開設しています。
「早稲田大学が医学領域に進出」といった報じられ方で、話題になりました。

■「東京女子医科大学・早稲田大学連携先端生命医科学研究教育施設を開設しました」(東京女子医科大学)

(「医学部がない」というのは、従来から言われている早稲田大学の特徴(弱点?)の一つ。メディア(特に週刊誌)の方々はその話が大好きみたいで、早大が医学関係の取り組みを行うと、だいたい慶應義塾大学との比較なども絡めながら取り上げています)

今回の筑波大学との連携で目新しいのは、「医学類に編入して、医師免許を取得できる」という点。
早稲田大学で理工学を学んだ学生が筑波大学の医学群に編入、その後、早大に戻ってくる……といったケースを想定しているとのこと。
「早稲田大学の学生にも医師になる道が開かれた」という点を、(やっぱり)どのメディアも強調して取り上げているようです。

確かに、とても珍しい取り組みです。

ただ、両大学のwebサイトにはまだ、この件に関してのプレスリリースなどが掲載されていないのでわからないのですが、細かいところで疑問も浮かびました。

【「理工学」とあるが、どの学科でも良いのか】

冒頭の記事では理工学部と表現されていますが、現在の早稲田大学には基幹理工学部、創造理工学部、先進理工学部の3学部、計17の学科が存在します。
建築学科や機械科学科など、生物を学んでいないであろう学生が多く在籍する学科もありますが……これらすべての学科が対象になるのでしょうか。

記事には、「医学群への編入希望者には試験(定員5人)への合格が課される。」とありますから、ここで生物系の基礎知識を試すのでしょうか。

【理工学部を普通に卒業し、3年次に学士編入するのと、大きく違うところはどこか】

筑波大学は2年次編入しか認めていないようなので、このプログラムで早大生達は「1年得する」のですが、世の中には3年次からの学士編入を認めている大学もたくさんあります。
早稲田大学を4年で卒業し、そのまま学士編入で他大学の医学部3年生になれば、合わせても8年で両方の学士が取得できます。

冒頭の記事のデュアルディグリー(ダブルディグリー)・プログラムですと、8年やりきらずに卒業したら、どちらの学士もとれません。むしろリスク回避のことを考えると、普通に卒業・編入した方が安全だと考える方もいるでしょう。
(どっちにしても編入のために生物学を学んだり、試験を受けたりといったことはやるわけですし)

もっとも、この辺りは考え方次第かも知れません。
通常は大学を一度卒業してからでないと医学部には編入できないわけで、そんなの待ちきれないという方もいるでしょう。
また、今回の早大、筑波大のプログラムなら、自分が医学に向いているかどうかを卒業前に知ることができます。もし、向いていないと分かったら、早大に戻り、普通に就職活動をして卒業していけばいいのですから、考えようによってはリスクを減らせる、メリットなのかもしれません。

そして、まだ詳しく報じられてはいませんが、もしかしたら単に編入するだけでなく、両大学の特徴を活かした連携カリキュラムなど、このプログラムならではの学びができる工夫もあるのかもしれません。
両方の課程を順々に終わらせていくのではなく、わざわざサンドイッチする理由を、もう少し詳しく聞いてみたいところです。
より詳細な情報が待たれます。

でも、日本での取り組みとしては確かに画期的で、今後の様々な機関との連携の可能性をひろげるものではあると思います。
「医学部を持たないが故に、様々な大学の教育・研究機関と連携できるのだから、これは大きなメリットだ」、と以前、どこかで早大の関係者の方がおっしゃっていたのを聞きました。
なるほど、確かにそうかもしれません。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。

1 個のコメント

  • おもしろい取り組みですね。最終年度を医学部で終えてしまうと、やっぱりそっちに引っ張られる学生が多くなってしまうのではないかと想像します。ラスト1年を早稲田でというのは、もう一度自分の適性を見直す期間として使えるのではないかと思いました。