大学 「パートタイム」 職員のキャリアは?

マイスターです。

「大学職員」という仕事について考える際、どうしても外せないテーマがあります。
それは……「派遣・契約、嘱託職員」といったパートタイム職員の位置づけです。

マイスターの職場にも少なからず、そういった形態で働いている方がいらっしゃいます。皆さんの職場でも、様々な場面で活躍されているのではないでしょうか。

好きでパートタイム・ジョブを選択されたという方もいるでしょうし、もしかしたら正社員になるための「つなぎ」として、やむを得ずパートタイムを選択されているという方もいるでしょう。
今は多様な働き方を選べる時代ですから、動機も様々だと思います。

「どうして(会社ではなく)大学で働いているのか」といった経緯も人それぞれ。たまたま派遣先が大学だったという方もおられるでしょうし、自ら大学を希望した!という方もいるでしょう。

今日はそんなパートタイム職員の皆様について考えてみたいと思います。

最近マイスターは、↓このサイトの広告をネット上でよく見かけるんです。

■「専門知識や経験を活かせるスペシャリストとしてのお仕事から未経験でもご活躍いただける事務系のお仕事まで学術関係のお仕事を大特集!」(株式会社キャリアパワー)
http://www.careerpower.co.jp/job_school.html

キャリアパワー学術事業部では、関東・関西・東海エリアの一流大学や、大学図書館を中心に、各教育機関や研究所、事務局での多彩なお仕事をご案内いたします。
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キャリアパワー学術事業部では、多数の派遣スタッフの皆様が活躍中です。
大学でのお仕事の人気の秘密は、アカデミックな環境や雰囲気の良さ、またスキルアップにつながる仕事内容や周りの方に刺激されて向上心やモチベーションがアップする点にあるようです。

学術事業部では、お友達のご紹介でお仕事に就かれる方が多いのも特徴の一つです。(上記リンクより)

このサイトの広告、Googleアドワーズ広告で、毎日一度は必ず目にします。
(マイスターはメールも予定表も検索もニュースチェックも全部Googleだという真性ネット野郎で、かつ「大学」という文字の入ったメールを受信したり大学関連のサイトを見たりすることが多いため、どうしてもこうした広告を頻繁に見てしまうのです)

こういったサイトを見ると、

「『大学限定の派遣』ってのに魅力を感じる方が、世の中には少なからずいる」

ということがわかりますね。

では、そういった方々は、大学に派遣されて働くというスタイルの、どのあたりに魅力を感じておられるのでしょうか。

例えば上記のページには、

大学でのお仕事の人気の秘密は、アカデミックな環境や雰囲気の良さ、またスキルアップにつながる仕事内容や周りの方に刺激されて向上心やモチベーションがアップする点にあるようです。

という説明が書かれています。

なるほど、確かにアカデミックな環境では(当たり前ですが)あります。

「雰囲気の良さ」というのは、あくせくしていない、殺伐としていない、という意味かと思われます。これって「競争や向上といった仕組みがない」とか、「なれ合いで、ゆるい公務員気質な空気」とか言えなくもないのですが……まぁ確かにそういう意味では、雰囲気は悪くありません。
(注:もちろん、大学によって事情は違ってきます)

「スキルアップにつながる仕事内容や周りの方に刺激されて向上心やモチベーションがアップする」というのは……?
うーん、これも大学次第ですが、あまり過剰な期待はされない方が良いかと思います。そもそも「雰囲気が良く、かつ、向上心やモチベーションがアップする」職場なんてうまい話はそうありません。マイスターの経験上、刺激にあふれていて、かつ人を成長させてくれる職場というのは、鬼も裸足で逃げ出す修羅場であることが多いです。

では派遣された後、具体的にはどんな業務につくのでしょうか。キャリアパワー社のサイトを見てみると、以下のような例がイラスト付きで挙げられています。

・大学や事務局での一般事務
・学生へのパソコン指導やヘルプデスク
・会計事務
・図書館司書
・就職相談カウンセリング
・教授秘書
・語学力を生かせる業務
・学会やシンポジウム対応業務

大学内の業務というのはかなりアウトソーシングがきくんだということを、改めて認識させられる一覧ですね。他人事ではありません。
上記のような業務しかしてこなかった正職員の方々、要注意です。あなたは将来、派遣職員の方に取って代わられる可能性があります。

それはともかく、こういった仕事でスキルアップがはかれるかというと……さぁ果たしてどうでしょうか?
その答えはイエスでもあり、ノーでもあると思います。

というのも、大学によって、事情が全然違うのです。
そのあたりについて、もうちょっと考えてみましょう。

日本の大学経営陣の多くは、今後は正職員を減らして派遣や契約といったパートタイム職員の割合を増やそう、と考えているはずです。理由は言うまでもなく、少子化です。今後、大学はかつてほどの収入を見込めなくなりますから、組織をスリム化し、支出を抑えたいはずです。となると一度雇ったら最後まで雇用し続けなければならない正職員の人数は最低限に抑え、人数調整がきくパートタイム職員で業務を補うほうがいいと考えるのは当然の流れです。
(実際、大学の労働組合の発行物などを見ると、「派遣ではなく、正社員を増員せよ」といった要求をよく見かけます)

マイスターが思うに、従来からある大学事務の大半は、(残念ながら)実は派遣社員や契約社員のようなパートタイマーの方でも難なくこなせるのです。
そんなわけで今、派遣社員や契約社員を、「アウトソーシングによって労働コストを下げる」ために使っている大学は、増えていると思います。正確に言うと、「重要な業務は正社員が受け持ち、誰でもできる業務はパートタイマーにやってもらう」という使い分けを図る大学です。
スキルアップや刺激を求めている方が、こうした大学に派遣されると悲劇です。こうした大学では、おそらくやりがいのある仕事は任せてもらえないのではないかと思われるからです。

さて、一方で、
「正職員はゼネラリストとして育て、スペシャリストはアウトソーシングする」
という考え方をする大学だって、あるのではないかと思います。

残念ながら、具体的にどの大学がこういう方針を採っているかはわかりません。
ただ実際、キャリアパワー社の派遣先として、

・就職相談カウンセリング
・語学力を生かせる業務
・図書館司書

といった職種がリストされていますよね。これらなどは、スペシャリストとして腕を磨ける分野ですが、おそらく派遣の需要があるのでしょう。

このブログで何度も取り上げていますが、日本の大学(正)職員はたいていの場合、行政公務員と同じような、職場ローテーション・システムの上で働いています。数年経てば、違う部署に異動させられる仕組みですね。ですからスペシャリストは育ちようもありません。これは同時に、組織の中に特定業務についての高度なノウハウが蓄積されないという問題にもつながっています。

そこで、スペシャリストを外から借りてくるという発想が出てくるわけです。
こういったケースの場合は、活躍の仕方によって、正職員として雇用されることもあると思います。
(実際、「大学職員.network」のメンバーの中にも、嘱託職員として働いておられるという方がいらっしゃいますが、すごい活躍ぶりのようです。マイスターがその分野の業務を仕切る管理職だったら、「欲しい!」とスカウトに走るだろうな、というくらいです)
こういった人事戦略を持つ大学であれば、自分なりにスキルアップも図れるでしょうし、キャリアの一つにもできるでしょう。

いかがでしょうか。
このように「大学でパートタイム職員として働く」といっても、実際には派遣先と業務内容によって、扱いにとんでもない差が出るんではないかと思われます。
「大学で働くなんてステキ!」と考えておられる方は、派遣先を決める前に、ご自身がどういうキャリアプランを持っているのかよく考えてみることをオススメします。

大学のパートタイム職員については、他にも様々な切り口があると思うのですが、長くなってきたので今日はここまでにします。

大学職員には、「卒業してそのまま大学に勤めた」という方が多いと思います。
いわゆる文系の大学だと、母校出身者の割合も概して高いです。悪いことではありませんが、行き過ぎると、ものの見方が一面的になります。
ですからパートタイム職員の方には、大学組織の中に刺激を入れていただくという役割もあるのではないかと個人的には思います。

多様なバックグラウンドを持った方が、大学キャンパスのいたるところで働いているというのは、大学の組織文化を豊かにするんじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。

以上、マイスターでした。

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(おまけ)
ちなみにキャリアパワー社がGmail上に出している広告のコピーは、↓こんなです。

一流大学・教授秘書募集 – www.careerpower.co.jp – 学会やシンポジウムでの発表も有り 語学力も活かせ、やりがいのある業務

大学に派遣されて学会発表をするという機会があるというのは、一体どこの大学のどんな職種だろうと、マイスターは興味津々です。(サイトにある「学会やシンポジウム対応業務」がそれかな?これって、受付業務とかじゃないですよね……?)

というか、サイト全体を通じてやけに「一流大学」という表現が目に付きますが……やっぱりステータスが魅力なのでしょうか!?
世間的には名の通った一流大学であっても、経営が優良とは限りませんので、そこはお気をつけくださいね。

4 件のコメント

  • いつも楽しく拝見しております。
    さて、私の努める大学の実態は、マイスターさんのおっしゃる「重要な業務は正社員が受け持ち、誰でもできる業務はパートタイマーにやってもらう」です。
    派遣の方の多くが、1年かせいぜい2年くらいで自ら辞めていきます。
    恥ずかしながら、職員の一部に、彼女達のモチベーションを著しく下げる層がおり、「同じ仕事で何でこんなに給料違うの?やってられるかい!!」という気分になるようです。
    彼女達の1人が放った名言を・・・。
    「1個の腐った蜜柑が周りも腐らせていく」
    とまぁ、不景気な話しで恐縮ですが、私自身はモチベーションを維持して頑張っています。ていうか、いつか見切ってやろかという気持ちもあります。
    マイスターさんのこと、応援しています。

  • 給与定型の見直しと無縁ではあり得ないですね。
    私のいる大学では高卒で大げさでなくコピーと
    お茶くみしかできないおばちゃんが55歳で年収1千万超えます。
    46歳で年収800万超の女子事務員も「もらいすぎ」と言ってました。
    40ちょっとで結構仕事の出来る女子職員は「大学の事務なんて
    男のやる仕事じゃない」とまで言ってて驚いたことがあります。
    ようするにミスマッチングですね。民間と公務員のいいとこ取りですから、
    なかなか改革は難しい、でもしないと共倒れ。
    ちなみに、パートの人は大学近所から募集しますが、毎回一人の採用に
    応募者150人は集まるそうです。

  • うちの部署にもいますよ。
    契約職員(34歳)
    文科省の関連団体に勤務していたとか。
    科研費が詳しいそうです…
    とっても偉そーに話します。
    年収600万。
    大学の経費使いまくっています。
    上司の特別な女性だとか。
    ダニ以下。
    早くクビにしてほしい…

  • この問題、皆さんが書いているような実態が存在しています。非常勤職でありながら、年間数百万の給料をもらいながら、範囲の狭い仕事しかしていない方がいることを冷静に見つめるべきです。組織のスリム化以前の問題が相変わらず存在するのではないでしょうか。
    時給700円程度でレジを打って、家計を支える主婦達と天秤をほしい。明らかに釣り合っていません。