マイスターです。
国立大学法人は、2004-2009年度までの六カ年計画として、「中期目標・中期計画」というものを立てています。そして毎年、国立大学法人評価委員会から、計画通りに業務改善が進んでいるかどうかという「達成度」についての評価を受けています。
大学関係者の皆様なら、よくご存じかと思います。直接、報告書の作成に関わったという方もいらっしゃることでしょう。
第1回目である2004年度の評価結果は、↓こちらで公開されています。
■「平成16年度に係る業務実績の評価結果について」(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/17/09/05092701.htm
で、どうやら今年も評価の結果が公表される時期になったらしいです。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「国立大の昨年度業務実績評価、法人化による改革定着-文科省」(日刊工業新聞記事、科学技術振興機構「産学官の道しるべ」掲載)
http://brain.newswatch.co.jp/emkt/jst/16044/nknkogyo2006100400177.html
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本来なら、全対象大学の評価結果をここでご紹介したいところですが、残念ながら昨年に引き続き、文科省によるwebでの結果公開が遅れているようです。
本題から少し外れますが、「中央省庁の情報発信体制」ってなかなか変わらないなぁと、マイスターは常々思っています。
省庁によっては記者発表と同時にwebサイトでこうした情報を公開するところもあるのですが、文科省はまだその体制が整っていないようで、しばしば、やきもきさせられます。
一応、この発表があった会議は一般公開の形を取っているのですが、平日のまっ昼間に都心のホテルの広間で行う発表に来られる人というのは、実質的に、報道関係者ばっかりなのではないでしょうか。これだと、最も評価の結果を気にしている全国の大学教職員達は、大手メディアの報道を経由した情報しか得られません。
インターネットが存在しなかった昔ならともかく、今は一般国民が直接アクセスできるwebというメディアがあるのだから、当日発表した資料くらいアップしてくれるとありがたいのになぁ、なんて思うのです。
税金を投入して運営されている国立大学法人のことですから、全国民に知る権利があるはず。会議と同時に資料をwebにアップしていただけると、とっても助かります。 >文部科学省様
一応、一週間ほど待ってみたのですが、まだ評価結果を閲覧できるようにはなっていないみたいです。仕方がないので今日のところは、メディアの報道内容からわかる範囲で結果をご紹介しようと思います。
というわけで日刊工業新聞の記事です。
文部科学省の国立大学法人評価委員会(野依良治委員長=理化学研究所理事長)は国立大学法人・大学共同利用機関法人の05年度の業務実績評価をまとめた。法人化初年度の04年度は移行対応で手いっぱいだったのに比べ、全般に改善の取り組みが定着しつつある。とくに財務面での改善は、東北大と宮城教育大がガソリンやコピー用紙を共同調達するなど、全91法人のうち86%(昨年度は54%)が「順調」と評価され、法人化による改革推進を裏付けた。
この評価は法人ごとに立てた中期目標・中期計画(04―09年度)の05年度分に対する達成度を見た。業務、財務、自己点検と情報提供、そのほか業務など、いずれも5段階の上から3番目の「おおむね順調」から2番目の「順調」にシフトする傾向がみられた。
(日刊工業新聞記事より)
この報道を見る限り、ほとんどの大学が、業務改善が順調だという評価を受けている模様です。
具体的な取り組み例が記事でいくつか紹介されていますので、リンク先で詳細をご覧ください。中には
学長・機構長のリーダーシップの発揮による取り組みで、東京大は本部事務局の部課長を研究科など部局ごとのパートナーとし、質問に対するワンストップサービスを実現した。
…など、事務機構が絡む話もあります。
また、
公務員型ではない個人業績評価をし、処遇に反映したのは8法人。例えば帯広畜産大は研究のほか外部資金獲得額、教育実績、社会貢献などの多元的業績評価で教員11人を昇任させた。
……など、研究以外での実績を反映させる多面的な教員評価を取り入れた大学もあるようです。個人的には、他大学でも広まって欲しいなぁと思う取り組みです。
報告書が公開された際には、ぜひ、自分のところの評価だけでなく、他大学の取り組みについてもじっくりと読んでみたいところです。財務など、大学の運営に関わる取り組みも少なくないみたいですから、参考にできる事例も色々と見つけられることでしょう。
(※ただし、ただ制度を真似するだけではダメです! 自分たちのミッションや組織構成にあう仕組みかどうか議論をした上で、自分達のシステムとして再構成するくらいが良いと思います)
ところで、実はマイスター、ちょうど1年前にも、2004年度の評価結果に関して↓こんな記事を書かせていただきました。
・業務改革が遅れている国立大学はここ?
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50053097.html
このときは、
「自己点検・評価の全学的取り組みが不足」
「事務の効率化・合理化の取り組み不足」
「教授会の審議事項の整理などが必要」
などの理由で、14校が「やや遅れている」という評価を受けていました。
それに比べると、今年は肯定的な評価が多いみたいですよね。
では、今年、評価が芳しくなかった大学はどこなのでしょうか。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「広島など2国立大、『やや遅れ』の評価 文科省が評価」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200610030239.html
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運営、財務など4項目を5段階で評価するもので、広島大と政策研究大学院大の2大学が運営面で2年連続、下から2番目の「やや遅れている」との評価だった。最低ランクと評価された大学はなかった。(上記記事より)
といわけで、広島大学と政策研究大学院大学が、「やや遅れている」という評価になってしまったそうです。
なお広島大学は、昨年も「組織活動の改善などが十分に達成されず」という理由で「やや遅れ」の評価を受けています。今年の評価理由は不明ですが、もしかして同じ部分なのでしょうか。
広島大学は、日本で最初に大学・高等教育を研究するための専門機関を設置した大学であるとのことですから、ここはむしろ、他大学が模範とするような成果を挙げていただきたいところです。
それに伝統ある大学が組織改革で成果を出せば、他の大学も勇気づけられますしね!
以上、国立大学法人の業務改革について、メディアの報道を元にご紹介いたしました。
この業務実績評価は、大学を「組織」としての実力で評価するものです。
学部や学科ごとの取り組みや、個人個人の活動を評価するものではありません。しかも、六カ年計画で、毎年こうしてチェックを受けるのです。
それだけに、付け焼き刃の取り組みや一時的な取り繕いは通じないと思います。
評価を通じて、継続的に自己改善していきましょう。
そうやって組織に体力をつけていくことが、今は大事なんだと思います。
マイスターでした。
2004年度-2009年度ということなので勘違いされたんでしょうが、国立大学法人の中期目標・中期計画は「6」年が一区切りです。5年ではありません。
大学全体の中期目標・中期計画策定のために本部事務局が細かい事柄について各部局に降ろしている大学もいくつかあるはずです。よって、かなりの事務職員が「間接的にならば」計画関わっております。(もちろん教員や技術職員もですが…)ですので、国立大学法人職員なら、「6」年一区切りというのは割と常識なのですが…
名無しさま:
マイスターです。
コメントありがとうございます。
よく数えてみれば、確かに6年ですね。大変失礼いたしました。ご指摘ありがとうございます。(ご指摘を元に、記述を直しました)
9月29日付けで国立大学法人評価委員会委員長名(野依理化学研究所理事長)で、各大学長および大学共同利用機関理事長宛に公文書が出ていたようです。
本日午後に本部事務局から各部局宛にPDFファイルで送信されてきました。
いかに本部事務局がお役所仕事をやっているのかの証拠かと思いますが…
うちの大学だけならいいんですが…
そもそも業務改善の通知文が部局に届くのに10日以上かかるのが、業務改善できていない証拠かなとも思います。困ったもんです。
それにしても、文部科学省のウェブサイトにはいまだに載っていませんね。業務改善が一番遅れているのは他ならぬ文部科学省自身かな。笑っちゃいます。
国立大学法人の業務実績評価は自己評価を基本に評価委員会が評価を行っています。ですから、事実はわかりませんが、広大の評価が低いのは高いハードルを自分に課しているからとも言われています。
内実を見るにつけ、どこの大学もお手盛り評価かなーと思ってしまいます。