Enrollment Management のススメ(5):部署間のカベを乗り越える

マイスターです。

民間企業から大学に転職して、驚いたことがいくつかあります。
そのうちの一つが、「部署間のカベの高さ」。

教務課の人間が、企画課や広報課の打ち合わせに参加してアイディアを出す、なんて場合、大変な手続きが必要になります。

○教務課の課員から、教務課長に申請を出す
○教務課長がそれを受理する
○教務課長から、教務部長に話が行く
○教務部長が、企画部長に話を通す
○企画部長が、企画課長に話をおろす
○企画課長が、教務部および教務課長宛に、「企画について、教務課員のお力を借ります」云々の文書を作成
○その文章が、企画部長、教務部長、教務課長の承認(ハンコ)を得た上で、教務課員にまわってくる

以上のような手続きを踏むことで、企画会議への参加が可能になります。

これはマイスターの考えですが、組織全体で学生さんをサポートするエンロールメント・マネジメントには、部署間の垣根を越える連携が欠かせません。

これまでの記事でも、

大勢のスタッフが、
学生さんのために情報を共有し、
生涯にわたる、終わりのない支援を行っていくことの大事さ
を、
書いてきたつもりです。

そのために、日本の大学組織が解決しなければならない問題が、「必要に応じて部署間の垣根を越えられる体制づくり」だと、マイスターは考えます。

どんなにすばらしいアイディアがあっても、それを実現するための最善・最高の体制を組めなければ、ただの企画倒れ、単なる「構想」で終わります。

スタッフの構成には、絶対に妥協してはいけません。
これは、プロデューサーとして働いていた、マイスターの信念です。
どんなに大きな可能性を持ったアイディアでも、それを実現するのは結局、人です。
そこに全力を尽くせないようでは、この先、どんな改革も成功させることはできないでしょう。

大学が持つ資産のほとんどは、「人」です。
教員や学生、卒業生は言うまでもありませんが、職員だってそうです。

もの作りをするメーカーなどと比べると、明らかです。
組織を動かしている「人」。大学は、この「人」で勝負しなければならない組織です(大学にかかわらず、教育に関わる組織はみなそうですよね)。

大学には、様々な知識や能力を持った人材がいます。
ついつい、学問という専門性を持った、教員ばかりに目がいきがちです。でも、職員にも、多様な能力を持ったスタッフがいるのだということを、日本の多くの大学は忘れているように思います。

学生生活のサポートをどうするか、なんていう話になれば、学生課の職員にとどまらず、全部署からアイディアを集められるはずです。
学生時代にサークルの代表だったスタッフや、海外に留学した経験のあるスタッフ、BtoC企業で働いていた経験のあるスタッフなど、具体的なアイディアと熱い思いを持っている人間は、大勢いるはずです。

必要に応じて、彼等を組織できていますか?
ウチの部署だけでやらなきゃいけないとか、他部署に迷惑をかけられないとかいった枠組みの中で、物事を考えていませんか?
それができずに、大学改革は難しいとか、民間企業から人を採用しようとか、そんな小手先のことばかり考えていませんか?

また、仮にこういう体制作りができるとして、それには、どのくらいの時間がかかりますか?

冒頭でマイスターが挙げた例のように、会議に参加するだけで何日もかかるような手続きがあるのは問題です。
あらゆる行動には、「スピード」という要素がつきまといます。同じことを実現できるとしても、30分かかるのか、1週間かかるのか、一瞬で済むのかでは、結果が違ってきます。
こういう「スピード」の概念は、大学組織からしばしばゆけ落ちてしまっているように思いますが、ゆめゆめ忘れてはなりません。

もちろん、他部署の人間の力を借りるために様々な手続きが必要になるのは、ある程度仕方がないことです。だからといって、スタッフ達のやる気をそぐようなやり方や、時間がかかるやり方を続けていいわけではありません。

そこは、管理職達の力量です。
自分の決断でどの程度のことが可能になるのか、意識してみてください。
管理職が、現場からあがってきた要望を文書にして上にまわすだけの存在なら、大学は今のまま、改革を阻む組織であり続けるでしょう。
現場のスタッフ達をシームレスにつなぎ、意欲を失わせず、行動スピードを失わせないように振る舞える管理職がいる組織なら、組織間のカベは、あってないようなものになるはずです。

特に、エンロールメント・マネジメントの実現を行おうと考えた場合、その場その場で判断が問われる場合から、中長期の計画を立てる場合まで、部署間で様々な連携が必要になってくるはずです。
そこで、いちいち余計な組織のカベにぶちあたっているようでは、本当に効果的なサポートは行えません。

日本の大学にエンロールメント・マネジメントを導入する場合、ここも大きなポイントの一つになるのではないかと思います。

以上、マイスターでした。