選挙後だからこそ見ておきたいマニフェスト!(高等教育編)


部屋で一人、選挙速報を見ているマイスターです。

現時点で、自民、民主に大変な差がついていますね。
(出口調査の数字は、トリプルスコアくらいの数字です。)

どうやら、自民党が過半数をとることは間違いありません。

選挙に関するブログ記事が、世の中にあふれていることと思います。
どの政党は問題だとか、自分はこう思うとか、議論が活発です。

私の場合、一市民としての思いは投票用紙に託しましたので、ここではそれは書きません。
ブログにできることといったら、基本に帰って、こんな記事を用意することくらいでしょうか。

題して、

「選挙後だからこそ

見ておきたいマニフェスト!」

選挙の前は大手メディアも熱心に報道しますから、マイスターはむしろ選挙後のアフターフォローをしようと思います。

というわけで、自民党の選挙公約を復習しておきましょう。
このブログ「俺の職場は大学キャンパス」は教育に関する情報を扱っておりますので、今回は教育に関する内容に注目します。

■「120の約束:テーマ4: 【われわれの子どもたち】子どもたちに、確かな未来を。 」(自由民主党)
http://www.jimin.jp/jimin/jimin/2005_seisaku/120yakusoku/120_theme04.html

「『教育改革』で日本の明るい未来を育みます。 」と題されています。
120の公約のうち、93から194まで、11の公約が公表されていますね。

その中で、まず、社会の中で高等教育を担当している私達が注目すべきは、以下の5つです。

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094. 義務教育の質的向上のための教育改革
教員免許更新制の導入、専門職大学院制度の創設、新たな教員評価制度の確立などにより優れた教員を確保する。義務教育の質的向上のため、国による学校評価ガイドラインの策定、外部評価システムの導入を進める。
また、義務教育の充実を国家戦略として位置づけ、必要な財源を確保する。

095. 「確かな学力」と「豊かな心」の育成
「確かな学力」を育成するため、学習指導要領全体を見直し、家庭・学校・地域社会が一丸となった「豊かな心」の育成を推進する。
高等学校教科書の検定について必要性の有無を検討する。

097. 個性輝く大学づくりの推進
「知の創造と承継の拠点」である大学・大学院の教育研究機能の格段の向上を図ることにより、国際競争力を強化し、わが国の知的基盤を充実させる。

098. 奨学制度の拡充による学生支援
学生の自立を促し、意欲と能力ある者が経済的理由によって勉学の機会を失わないよう、18歳以上の奨学金希望者全員への貸与を引き続き実施する。

099. 私学教育の振興
建学の精神に基づき特色ある教育研究を展開している私立学校の振興、生徒や保護者の負担軽減に向けた私学助成の充実を推進する。

自民党 政権公約2005:テーマ4
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まず初めに指摘しておくべきことですが、これらはいわゆる「マニフェスト」と呼べるものではありません。

たとえば

「義務教育の質的向上のため、国による学校評価ガイドラインの策定、外部評価システムの導入を進める。」

…なんて、誰でも言えますよね。
誰だって、そりゃあ、評価システムを導入した方がいいんだろうなぁ、なんてことはわかるわけです。
こんなこと、マイスターにだって言えます。

 誰が、
 いつまでに、
 どのような手段で、
 どのようなプロセスを経て、
 どのくらいの予算をどこから持ってきて、どこに充てる形で、
 導入するのか

を書いてないと、政治家のManifestoとは言えないのです。
これは、自民党に限らず、すべての政党に言えます。

それがない、上記の公約文のような、耳障りのよいあいまい文章だけで政党を選ぶなんて、無茶です。

なので、これらの公約がどうなるのか、私達がもっと突っ込まないといけませんよね。

ということを前置きに置いた上で、公約を確認していきましょう。

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公約94番は、初等、中等教育の教員レベル向上に関する政策です。

・教員免許更新制の導入、専門職大学院制度の創設、新たな教員評価制度の確立などにより優れた教員を確保する。

・義務教育の質的向上のため、国による学校評価ガイドラインの策定、外部評価システムの導入を進める。

・義務教育の充実を国家戦略として位置づけ、必要な財源を確保する。

免許更新制専門職大学院の創設教員評価制度の確立、それぞれ、これまで本ブログでも政治の動きに関して、記事を書いてきました。
こうした改革の動きを、今後も推進していくということでしょうか。

「国による学校評価ガイドライン」と、「外部評価システムの導入」、これも、いい政策だと思います。
「国によるガイドライン」というのが、どのようなものになるのか、それ次第です。
個人的には、県によるガイドラインとか、学区によるガイドラインといった選択肢も、一度は議論のテーブルに載せて欲しいかと。

「外部評価」というのも、誰が評価するのか、次第です。

 市民?
 教育の専門家?
 経営の専門家?
 公共機関?

その辺を、今後はしっかり議論して欲しいです。
簡単に「外部の専門家」なんて一言で通して、議論もなく、あいまいに誰かが派遣されるようなことがあってはありません。

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公約95番は、「『確かな学力』と『豊かな心』の育成」となっています。

・「確かな学力」を育成するため、学習指導要領全体を見直し、家庭・学校・地域社会が一丸となった「豊かな心」の育成を推進する。

・高等学校教科書の検定について必要性の有無を検討する。

これは、あいまいです。
何とも言えません。
家庭・学校・地域社会が一丸となって「豊かな心」を育成する、って、素晴らしいことだと思いますが、自民党は具体的に何をしたいのでしょうかね?

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公約97は、「個性輝く大学づくりの推進」です。
おぉ、大学職員が身を乗り出して聞くべきところか!?

・「知の創造と承継の拠点」である大学・大学院の教育研究機能の格段の向上を図ることにより、国際競争力を強化し、わが国の知的基盤を充実させる。

これだけかーい!

これだけじゃ、何も読みとれないですよー!
何をしたいのかの、方向性すら、わからない…。

「教育研究機能の格段の向上」とありますが、
せめて、教育機能と、研究機能それぞれの方針くらい出して欲しかった。
自民党には、高等教育政策の専門家はあまりいないのかもしれませんね。

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公約98は、「 奨学制度の拡充による学生支援」です。

・学生の自立を促し、意欲と能力ある者が経済的理由によって勉学の機会を失わないよう、18歳以上の奨学金希望者全員への貸与を引き続き実施する。

おぉ、これはすばらしい。
マイスター自身、大学院の学費工面には苦労しましたから、よくよくわかります。

学部段階から、自分の責任で学費を借りて学べる環境ができたら、素晴らしいことと思います。
「18歳以上」とありますから、専門学校なども含まれるのでしょうかね。
進路の選択肢が増えるのは非常にいいこと。
ぜひ、実現させていただきたいですね。

ただ、マイスターの記憶だと、ここ数年、奨学金は

「申請すればもらえる」
「成績よりは、家庭の事情が優先」

という従来の考え方から、

「成績の優秀な学生を優先」

という、競争的な資金として位置づけがシフトしていく流れにあったように思います。

・参考:「中央教育審議会大学分科会大学院部会(第27回)議事録・配布資料」(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/gijiroku/004/05022301/006.htm

ここ最近の流れを変えて、全員貸与の方向でいくのでしょうか。

ひょっとすると、

 貸与:全員
 給付:競争

なんてことも、可能性としては考えられますね。

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公約99は、「私学教育の振興」です。

・建学の精神に基づき特色ある教育研究を展開している私立学校の振興、生徒や保護者の負担軽減に向けた私学助成の充実を推進する。

いわゆる「特色GP」を連想させる文章ですね。

前半は、特色GPのように優れた試みに対して助成をする政策のことを指しているのでしょうかね。

後半は…私学助成の充実。
これは、常に論議にはなっておりますが、

どの程度まで助成するのか、
どういった方法で助成するのか、

が、書かれていないといけません。

たとえば額。
国立大の学費と同じ水準まで助成してくれるのか、
それとも、今行われている助成額を若干引き上げるという姿勢なのか。

助成の方法についても、何も書かれていないのは、いけません。
私学に進学する家庭にバウチャーを配布するという「直接支援」の方法もあります。
現在と同じ、学校に対する資金援助、つまり学生の「間接支援」という方法を維持していくという考え方もあります。

これまでの路線を踏襲しながら、規模を拡大するのか、
新しい路線を模索するのか、それくらいは書いて欲しい。
(書いていないということは、従来路線なのかな?)

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以上、主として高等教育に関する内容に注目してみました。
やはり最初に書いたように、あいまいで、字面のよさだけが表現された公約がかなり多いように思われます。
今後、間をおかず、実行段階のプランをどんどんオープンに出していって欲しいと思います。

選挙が終われば、マスメディアはこうした内容をほとんど報道しなくなります。
自民党も、(きっと)これらの公約に関して、言わなくなります。

今のうちに、心に刻んでおきましょう。

本日の選挙で、私達市民がどのような判断をしたかは、それぞれです。

でも、

「政権を託された政治家達が、ちゃんと公約を守るか」

ということに関しては、私達の全員が、監視の責任を同じように持っているのではないかと思います。

最後に、いわゆる社会起業家の皆様が、今回の選挙に関して書かれたブログがありましたので、ご紹介します。

■「9・11総選挙マニフェスト」(東京財団)
http://www.tkfd.or.jp/mt/archives/cat/cat_30.php

通常のコメンテーターとは若干視点が異なり、教育に関わっている方には面白いかと思います。

まぁ、いろんな問題がありますが、
こうして選挙のことを自由に考え、投票に行ける日本は
やっぱり平和な先進国だよなぁ、とかみしめるマイスターでした。

1 個のコメント

  • 現在の大学の教育学部を廃止し、大学卒業者にうちから、いったん社会で働いたものでもよい、選考して大学院で、教育者の育成を図るべきであると思う。大学でそれぞれ専門教科を学び、それらをはいけいに持つものの中から教育者を養成すべきであるとよいと思う。現在の教育学部の学生は一般的にあまりに速く同質化してしまうようだ。また、現代の高度化する時代。求められるのは。基本的に、しっかり教育を受けた、専門学部卒業生のなかから。さらに教育者のためのプログラムを大学院で受けたものに限定したほうがよい。そうすれば教える教師の質も改善されるでしょう。人間的幅も広いはずです。