「あなたは文系に向いている」
とプログラムに断言された、当時理系のマイスターです。
でも、「むいている学問や職業」欄に書かれていたベスト3は、
「物理学」「建築学」「小学校教師」
でした。
「数字には弱いが、形には強い」ということ? よくわかりません。
そんなマイスター、結局、大学職員として暮らしています。
小学校の教師も、ちょっと心動かされましたが、なりませんでした。
でも、今でもたまに、教壇に立つ自分を夢想します。
さて、教員養成系の大学、学部が、ちょっとアツイです。
盛り上がってます。
【教育関連ニュース】——————————————–
■「国立大定員、教員課程を7校拡充 大量退職控え方針転換」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/life/update/0831/001.html?ref=rss
■「山口大「ちゃぶ台」方式など34件選定 教員養成GP」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200508290312.html
・「教員養成GP 選定プロジェクト一覧(PDF)」(毎日インタラクティブ)
http://www.mainichi-msn.co.jp/etc/pdf/050829kyouingp.pdf
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教員養成系大学の歴史を、ちょっとだけ、ご紹介しておきましょう。
おさえておいて、損はありません。
<教員養成大学・学部の沿革>
国立の教員養成大学・学部がつくられたのは、1949年の新制大学発足時です。
「国立大学設置の11原則」というのが当時ありまして、
各都道府県には必ず教養および教職に関する学部もしくは部を置くという方針がたてられらのですね。
その結果、学芸大学・学部26、教育学部20が誕生しました。
(学芸学部:教養教育と教員養成の目的を併せ持つ学部)
その後、各都道府県に教員養成を目的とする教育大学・教育学部を設けるという趣旨の答申が行われまして、1966~67年度にかけて、すべての学芸学部が教育学部に改組されています。
さらに1966~80年にかけ、いわゆるベビーブームに合わせて、教員養成学部の定員を大幅に増やした時期がありました。
うーん、国家計画。
日本の教育を支える、壮大な国家プロジェクトだったのですね。
かくして、現在の国立の教員養成大学および学部が誕生したわけです。
ところが、1987年ごろから、雲行きが怪しくなり始めます。
教員養成大学・学部を出ても、教員として就職できない学生さんが、増えてきたのです。
少子化と、93年に定められた学級定数40名の固定化の影響が、大きかったようです。
元々、国立の教員養成学部は小学校教員を、
私立を中心とした一般大学の教職課程は、中・高の教員を、
という棲み分けがなされてきていましたが、
国立の教員養成系大学は、専門性が裏目に出て、モロに影響を受けました。
このままでは、教員養成学部は、存在できません。
そこで、教員養成学部の中に、「ゼロ免課程」なるものを創設させたのです。
ゼロ免課程とは、教職免許の取得を前提としないコースです。
教育学の素養を持ちながら、他の職業に進む人材を育成するコースですね。
ゼロ免課程の定員は、教員養成コースの定員を振り分ける形で行われました。
すると、教員志望者の母数が減るので、「教員採用率」が上昇する、ってわけです。
ついでに、もともと研究志向・専門志向だった大学教員からも、歓迎されました。
教員の養成に煩わされず、自分の研究に時間を使えるからです。
その後も教員養成系大学の定員は、国家計画的に、減らされ続けました。
1986年に2万人だった定員が、2001年には、半分の1万人になりました。
そして2001年、
「国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会」が、報告書の中で
・隣接する県の中にある複数の教員養成系大学・学部を統合し、教員養成担当大学とその他の大学に機能分化させる
という提言をはじめ、様々な改革案を出し、現在に至っています。
以上、かいつまんで教員養成大学・学部の歴史をご紹介しました。
<参考>
・「今後の国立の教員養成系大学学部の在り方について」(国立の教員養成系大学学部の在り方に関する懇談会:文科省webサイト)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/005/toushin/011101.htm
・「大学改革の行方:教員養成改革の方向性」(ベネッセ教育開発センター)
http://benesse.jp/berd/center/open/kou/view21/2005/06/02univ_01.html
<今後、教員は不足する!?>
さて、こんな歴史を踏まえつつ、冒頭の記事に戻ります。
国立大学全体の定員が減少する中、
教員養成課程の定員を拡充する国立大学が7校もある、
という報道です。
ほとんどが先生の需要が高まっている関東・近畿・東海の大学だ、とのこと。
ゼロ免課程の定員を、教員養成コースに振りわける形で、定員を戻したのですね。
これまで、量的削減の道を歩み続けてきたのに、
しかも、少子化は今後も続くというのに、
なぜ今、定員増?
その答えは、教員の定年退職です。
-全国の公立小中学校で定年を迎える教員数は、07年度末には約1万4000人にのぼり、18年度末には約2万5000人でピークに達するとみられる。特にここ数年、地方に先駆けて多くの教員が退職し始めた都市部で、新規採用数が急増していた。-(冒頭、Asahi.com記事より)
ベビーブーム世代の教員が、ここ数年で、大量に辞めちゃうんですね。
言ってみれば、特需。
ちなみにこの「教員不足」は、都市圏に偏っています。
■「大学改革の行方:教員養成改革の方向性:デマンドサイドの視点が大学淘汰のカギ」(ベネッセ教育開発センター)
http://benesse.jp/berd/center/open/kou/view21/2005/06/02univ_11.html
上記の、ベセッセの記事には、都道府県別の、教員需給のバランスマップが掲載されています。
東京や近畿などでは、確かに不足していますが、
教員が余っている都道府県も、まだあるのですね。
なので、「これからは教員が大量に求められる!」と、安心するのは早いように思います。
<教員の「質」を向上させる取り組みも>
時代は、量的拡大より、どっちかというと質的向上を教員養成課程に求めている!
というわけで、「教員養成GP」の記事も、冒頭であわせてご紹介させていただきました。
「教員養成GP」は、正式には
「大学・大学院における教員養成推進プログラム」
という名前です。
「大学・大学院修士課程を中心とした義務教育段階の教員養成機関における、資質の高い教員を養成するための教育内容・方法の開発・充実等を行う特色ある優れた教育プロジェクトについて、国公私立大学を通じた競争的な環境の中で選定し、重点的な財政支援を行う」(by文科省)のが、このプログラムの目的です。
各大学が提出した計画を審査し、これは! と思うプログラムに、資金援助を行うのですね。
実際に、文部科学省に申請のあった101件の中から34件が採択されました。
総額5億5000万円の予算が配分されます。
国立大20件、私立大12件、共同2件ということなので、国立大学の教員養成学部が意地を見せましたのですね。
いずれも興味深い内容ばかり。
「現場との連携」
「実践形式」
などを掲げた取り組みが、やはり目立ちます。
個人的には、
筑波大、宮城教育大、茨城大、千葉大、東京学芸大、大阪教育大、玉川大という、
教育の名門校達が共同で提出した
広域大学間連携による高度な教員研修の構築
-「教育の今日的課題」解決に向けた新研修システムの実現-
という広域的な取り組みや、
秋田大学による
教育研究リーダーの学校臨床型養成
-大学・学校・教育委員会によるコラボレートシステムの構築-
という、教育委員会まで巻き込んだプロジェクトなどに、特に関心があります。
お茶の水女子大学の
科学コミュニケーション能力を持つ教員養成
も、時代が求めている内容だと思います。
以上、教員養成系の大学・学部がどこに向かうのか、まだわかりませんが、
国も大学も、少しずつ本気で教育体制を整え始めてきたのは確かです。
これまでのように、量的な需給バランス調整だけではなくて、
質的にも、様々なレベルアップを図ろうとしているわけですね。
世の中の教員に対して、今、大変厳しい目が向けられています。
それを育成してきた大学も、同じ批判を浴びていると言っていいでしょう。
教員養成系大学、ここらで、本気で成果をあげなければなりませんね。
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(関連記事)
・教員免許に更新制を導入
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50019434.html
・教員養成大学院卒業者は、優遇すべきだ
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/26103105.html