明徳義塾のプレスリリースは最低だ

本日二本目ですが、気になったので取り上げます。

高知県の明徳義塾で、高校生がナイフで同級生を刺すという事件が起こりましたね。

今回ご紹介するのは、その明徳義塾のwebサイトに掲載された、いわゆる「お詫び文」です。

先に結論を述べておくと、

明徳義塾のプレスリリースは

リリースの表現も、リリースしている内容も最悪!
みんなはこんなの真似しちゃダメだぜ!

という例です。

とても勉強になるので、じっくり見ておきましょう。

【教育関連ニュース】——————————————–

■明徳義塾「本日の不祥事件につきまして」(明徳義塾webサイト「最新ニュース」)
http://www.meitoku-gijuku.ed.jp/mis/jpn/news/news_school/kinkyu-1.htm
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プレスリリース全体としては、とりあえず、最も大切な「何が起こったかの報告」が書かれています。
しかし、どの記述も、メディア報道の情報を超えるものではありません。
学校関係者にとっては、満足のいく発表とは言えないでしょう。

関係者は、ちゃんと安心できる情報材料が欲しいのです。

で、このリリースの中で、気になったのが、以下の2箇所。

その原因については、いろいろ多方面から調査をしておりますが、現段階では明確になっておりません。ただ、A君には極々特異な隠れた心理構造が存在するのではないかという懸念もうかがえます。 –(上記 学校のプレスリリース文より引用)

その後は各クラスの状況によって、生徒に心的ケアーを行いつつ、平常の日程を消化しました。なお、当該クラスの生徒諸君には放課後も学校長より、心的ケアーを行い、不安感や焦燥感を感じる生徒は申し出るように指導して、心理カウンセリングにも万全を尽くしております。 –(上記 学校のプレスリリース文より引用)

「A君には極々特異な隠れた心理構造が存在するのではないかという懸念もうかがえます」

という記述。
これで保護者は「そうか、A君は特殊だからこんな事件を起こしたんだ。うちの子が巻き込まれなくてよかった」と安心するのでしょうか。

残念ながら、ナイフで同級生を刺す、という行為自体は、もう「ごくごく特殊」ではないと思います。

普通の子が、何かのきっかけで誰でも起こす可能性がある事件だというのが、マイスターの認識です。

そもそも、「極々特異な隠れた心理構造」自体に罪はありません。
ナイフで刺したという行為が罪なのです。
保身的な組織は、往々にして罪を心理的な問題と安易に結びつけようとしますが、それは正しくありません。

別に持ち物検査を徹底すれば言いというわけではないし、全部が学校の責任とも言えないとマイスターは思います。

しかしこんな強調された表現で、さも

「A君だけが明徳義塾にそぐわない異質な存在だった」

といった主張をする。

これは、教育者の対応ではありません。

なお、事件後、

「生徒に心的ケアーを行いつつ、平常の日程を消化しました。」

とありますが、どんなケアーをしたのか関係者は知りたいのです。

平常の日程をこなしたということはおそらく、事件が起きたのとは違うクラス、での対応を指しているのでしょう。

心的ケアーに、どこのどんな人があたったのでしょうか。
専門家を呼んだのでしょうか。
マイスターは、校内の、担任教員が、各教室でしゃべっただけだと推測します。

リリースを甘く見てはいけません。
ちゃんと対応したなら、報道機関向けにそうした情報を盛り込むのが、プレスリリースの性質です。

なお、平常の日程を消化、という部分。
勉強を遅らせるような真似はしなかったよ、という、学業面を気にする保護者向けのリリースだと思います。
が、事件報道の大きさからすれば、なんだか浮いて感じられます。

「不安感や焦燥感を感じる生徒は申し出るように指導して、心理カウンセリングにも万全を尽くしております。」

これも、なんだかおかしな話です。

心理的に立ち直れないくらいの衝撃を受けた生徒が、指導されてカウンセリングを申し出られるのでしょうか。

そもそも、心理的な影響って、自覚できるものなのか。
自己申告できるようなら、心理学の専門家は要りません。

まとめますと、明徳義塾のプレスリリースは、

・「学校や同級生に責任はありませんよ。A君は特殊な心の持ち主でした」
・「学校は、ちゃんと対策をしましたよ。流行の心的ケアもやりました」

という2点の主張で構成されています。
プレスリリースが向いている先は、保護者と、メディアでしょう。

野球で築き上げたブランドは、事件そのものではなく、学校の事件への対応によって崩されてしまいそうです。

プレスリリースって、軽く見られがちだとマイスターは思うんです。

でも、メディアや関係者にとっては、その組織が何を考え、何をしたかをあらわす、最も重要な情報源です。

だれに、なにを、いつ、だれが、どのように伝える。
これをはっきりと認識し、リリースした効果を考えないと、本来は書けないのです。

打ったら安心、ではなく、
打ってからもその影響が気になって、不安で仕方がない、というものなのです。

ですから、今回の事例のようなプレスリリースを打ってはいけませんよ。
逆に言うと、ちゃんとしたリリースを自信を持って打てるくらいの対策を、ちゃんと組織内ですべきですよね。

うむ、久しぶりにいい実例を見つけました。

・明徳義塾中学校・高等学校webサイト
http://www.meitoku-gijuku.ed.jp/