国立大学の非常勤職員1,355人が、雇い止めの危機に?

マイスターです。

社会的に関心を集めている、派遣社員や契約社員などの「雇い止め」。
これが、大学の間でも着々と拡がっているようです。

(過去の関連記事)
■非常勤スタッフの「雇い止め」が大学でも拡がる?

↑京都大学が100人の非常勤スタッフに対し、「契約更新せず」という方針を固めたという報道を、以前の記事でご紹介させていただきました。

その後、共同通信社が全国の国立大学に対しアンケート調査を実施。
どうやら全国各所で、こうした動きが見られるということがわかりました。

【今日の大学関連ニュース】
■「53国立大1300人超雇い止め 09年度、契約上限見直しも」(山梨日日新聞)

全国87の国立大のうち、2009年度中に契約満了で「雇い止め」となる非常勤職員は少なくとも53大学で計1355人に上ることが7日、共同通信のアンケートで分かった。28大学が「研究や業務に支障が出る」などとして、契約期間の上限見直しを実施済みか、検討中だった。
非正規労働者の雇い止めが問題化する中、緊縮財政を迫られている各大学が専門知識を備えた人材確保に苦慮している実態が明らかになった。
(上記記事より)

契約満了をむかえる非常勤職員が、国立大学だけで全国に1,355人。

53大学で1,355人というのが、多いのか少ないのかはわかりません。内訳は均等ではなく、一部の大学が大量に抱えているかもしれませんし。
学部構成や、病院を持っているかなどにもよっても、多いか少ないかは違ってくるでしょう。

医学部や理学部・工学部などを持ち、全国的に見ても大きな規模を誇る京都大学で100人ですから、これと比較し、「キャンパス規模の割には非常勤職員が多い」というところもあるかも知れません。

この1.355人の方々の中には、先日の京都大学の報道を見て、危機感を抱いていた方もいらっしゃるのではないかと思います。

アンケートは1月下旬-2月初めに、全87大学の人事担当部署から聞き取りをした。76大学(87%)が非常勤職員について「就業規則で契約期間の上限を定めている」と回答。09年度中に契約満了となる非常勤職員の人数を挙げたのは32都道府県の53大学(61%)。
上限を3-5年の間で設定しているのは69大学(79%)。最長は大阪大の「6-10年」で、上限を設けていない11大学(13%)は必要に応じ1年ごとに契約更新していた。
上限の延長や撤廃を実施または検討中としたのは28大学(32%)。理由は「優秀な人でも勤務が3年間に限定され、組織の職務遂行能力が維持できない」(山梨大)、「長期の研究に支障が出る」(佐賀大)などで、職員の入れ替わりが研究活動の障害となっている実情が浮かんだ。
(上記記事より)

一口に非常勤職員と言っても、この中には大学の運営業務にあたっている方もいれば、研究に関わっている方もいると思います。

上記の中には京都大学のように、コストカットのために今後、こうした「雇い止め」を少しずつ進めていこうと考えている大学もあるかも知れません。
その一方で上記のように、スタッフの入れ替わりによる弊害を感じ、契約期間の上限見直しを検討している大学もあることでしょう。

大学によって、状況はさまざま。
一概にこうだと論じることはできなさそうです。

ところでふと思ったのですが、特に研究員などとして雇用されている方の中には、いわゆる「ポスドク」の方も少なくないのではないでしょうか。

政府の大学院重点化計画によって急増した「院卒」人材。
しかし彼らの専門性を活かせる職は十分にはないため、不安定な立場の「ポスドク」として長く過ごす方が少なくありません。
ポスドクの就労問題は、社会的な課題になっています。

そんな彼らの受け皿として一番最初に候補に挙がりそうなのが、母校の非常勤スタッフ。
21世紀COEプログラムを初めとする期間限定の研究プロジェクトが一段落した大学もあるでしょう。こうした競争的研究資金により、有期の契約で雇用された研究員の方々も、少なからずいたはずです。
以前から「ポスドク」状態の長期化が問題とされていましたが、ここに来て、また違った不安感を抱いている方も多いかも知れません。

でも、これって見方を変えると、逆に、

「契約期間があるから、どうしても人材を放出しなければならない」
   ↑  ↓
「でも、本当は知識や技術を持った人がいなくなると困る」

……という大学の間で人材の流動化が進み、職を見つかるチャンスが増えたりするということなのかも知れませんね。

大学運営スタッフにおいても同様。
入試や広報、国際交流、就職支援といった分野で専門的なノウハウを備えた人の中には、契約切れと同時に他大学から声がかかるような人が出てくる可能性が、ないとは言えません。
以前の記事でもご紹介したように、大学の正職員は基本的にゼネラリストとして養成されているため、スペシャリストとして同じ業務に携わっている人の中には、非常勤のスタッフの方が結構いらっしゃいます。
そんな方々のノウハウを欲しがる大学だって、あるかも。

実際にはどうなるかわかりませんが、いずれにしてもやはり、非常勤、常勤に関わらず、自分を磨き上げておかなければならない時代なのは間違いなさそうです。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。