ニュースクリップ[-5/17] 「マクドナルドから博士号?国家資格付与認定で大学も目指す 英国」ほか

マイスターです。

さて、日曜日になりましたので、今週も一週間の教育ニュースの中から、いくつかを選んでご紹介します。

【マクドナルドで学位取得?】
■「マクドナルドから博士号?国家資格付与認定で大学も目指す 英国」(AFPBB News)

米ファストフード大手マクドナルド(McDonald’s)は、英国で博士号の付与を目指したいとの抱負を明らかにした。マクドナルドは前年、英政府から独自の国家資格の付与機関として認定を受けている。
同社のデービット・フェアハースト(David Fairhurst)最高人材活用責任者(CPO)は11日、英フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)紙に対し、この資格付与権限が新たに認定されたことで、マクドナルドは「独自の大学」になることもでき、大卒と同等の資格を付与したいと述べた。
ただし、まずは現在の従業員トレーニングを完璧なものにし、その後に大学院レベルの学位授与も目指したいと語った。現行のトレーニングコースには、高卒資格にあたる教育修了資格の上級(Aレベル)試験と同水準のシフト管理コースなどが含まれている。
マクドナルドは、英政府が前年、資格付与権限を認めた9つの企業・企業グループの1つ。英政府はこの措置を通じて、雇用の可能性が高まる資格をより多くの労働者が取得することを期待している。
(上記記事より)

以前のニュースクリップで、マクドナルドの社内研修が、大学受験のために必要な単位として認定されたというイギリスの話題をご紹介しました。

■(ニュースクリップ[-2/3])「英はマクドナルド研修で大学入学資格も」

「大卒と同等の資格を付与」、「大学院レベルの学位授与も目指したい」と、構想はさらに大きくなっているようです。
マクドナルドが学位を授与、なんて聞くと、驚かれる方も多いのでは。

個人的には、良いか悪いかは、カリキュラムなどの内容次第だと思います。
他の国もそうですが、世界的な不況の中でイギリスでも、失業者がかなり増加しつつあるとか。
そんな失業者問題を緩和することが、マクドナルドなどの資格付与機関に期待されているようです。

【経済的な理由で大学進学を断念。】
■「学費理由にした進学断念増える 高校教諭らに調査」(Asahi.com)

大学進学をあきらめる理由として、学費負担を挙げる高校生が増えていることが、現場の先生へのアンケートで分かった。
(略)希望進路を変更、断念する原因(複数回答)について、高校の担当教諭の76%が「学費」を挙げた。07年の前回調査では62%で、10ポイント以上も多くなった。
大学進学率でみると、進学率が50%未満の高校で、学費を理由にしたのは89%。進学率が高くなるほど割合は減り、50~70%は81%、70~90%は68%、90%以上は45%だった。
(上記記事より)

何かと批判もされる、日本の学費の高さ。
「進学をあきらめる」高校生の増加という形で、それが表に出てきています。

大学や短大に進学するための家庭の経済格差が「広がっているか」との質問には、高校の88%が「そう思う」と答えたのに対し、大学は70%。学費についても、私立大学の学費を高いと答えたのは、高校が85%だったのに、大学は54%と、認識の違いが浮き彫りになった。
(上記記事より)

進路指導を行っている高校の側は、私大の学費を高いと思っているけれど、大学側はそれほどでもないと思っている。
このあたりは、いずれ双方にとって良くない結果に繋がってしまいそう。

(過去の関連記事)
■文部科学省 大学の授業料滞納、中退者数を調査

【薬学部の定員割れが進む。】
■「3割の薬系大学で入学定員割れ‐大学別の明暗くっきり」(薬事日報)

2009年度の薬学部入学者数は、昨年度に引き続き総定員数に届かなかった。本紙の調査で明らかになったもの。東京大学を除く総定員数1万3294人に対し、入学者数は1万2869人。定員充足率(定員に対する入学者の割合)が100%を下回る“定員割れ”は、前年度より1校増え23校と、約3割を占めた。一方、18校で入学者数が定員を1割以上オーバーし、大学により大きく明暗を分けた形だ。なお、全74校の総定員数は前年度の1万3494人より120人減の1万3374人となり、新設ラッシュで増加一途の“薬学生”が、初めて前年度を下回った。
全国の薬系大学の総定員数は、2000年度から続いた旧設校の定員枠拡大に加え、03年度からの薬系大学新設ラッシュで、右肩上がりに増加。99 年度が国公立17校、私立29校で、総定員数8091人だったものが、昨年度までに1万3494人と、1・66倍にまで膨れあがった。
今年度は、薬学部6年制がスタートして4年目を迎えたが、新設ラッシュが一段落し、さらに奥羽大学、徳島文理大学、徳島文理大学香川薬学部が、それぞれ60、30、30人の定員削減を行ったことから、総定員数は前年より120人少ない1万3374人となった。
このうち、入学時点で学部進路が判然としない東京大学を除くと、総定員数1万3294人に対し、入学者総数は1万2869人(定員充足率97%)で、前年度に引き続き定員割れとなった。特に、定員充足率が60%未満と、大幅な定員割れを起こした大学・学部が9校あり、前年度(5校)よりも増加した。また、2年連続して定員割れした大学も目立った。
(略)定員充足率90%未満が16校(前年度16校)あり、70%代が5校、60%代が2校、50%代が6校、40%代が3校と、定員の半数にも満たない薬系大学・学部もあった。特に充足率が低かった3校は北陸大学(48%)、いわき明星大学(49%)、就実大学(49%)で、前年度に最も低かった奥羽大学は定員を大幅に削減した結果、充足率は28%から66%へ、青森大学も39%から51%へと回復した。
充足率50%以上60%未満となったのは、青森大学51%(定員120人、入学者61人)、安田女子大学51%(130人、66人)、城西国際大学53%(180人、95人)、福山大学51%(200人、107人)、松山大学56%(160人、90人)、千葉科学大学57%(260人、148人)だった。
(上記記事より)

新設ラッシュで一時期は人気だった薬学部。
その後、薬剤師養成課程が6年になるなどの変化もあり、結果として薬学部全体の人気には陰りが出てきています。

ここ数年の間に薬学部の新設を考えた方にとっては、十分に予想の範囲だったはず。
この後、どのような手を打つかが勝負でしょう。

なお記事にもありますが、好調な大学は好調のまま。
新設して間もない薬学部が、全体的に苦戦している傾向にあるそうです。

【財務省側から評価結果に物言いが。】
■「財政審:文科省大学評価『客観性欠ける』」(毎日jp)

財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は、国立大学法人の「教育・研究水準の質向上」や「財務内容の改善」などの中期目標について、文部科学省などが行っている実績評価は「客観性に欠ける」として見直しを求めることで一致した。
(略)04~07年度評価では、4段階中最も低い「期待される水準を下回る」と見なされた大学は「教育水準」では全体の約2%、「研究水準」ではわずか1%で、大学間で大きな差が出ていない。このため、運営費交付金の配分も横並びになる可能性が強い。
(上記記事より)

文部科学省が国立大学法人を評価した結果は、メディアでも大きく報じられました。

■「教育・研究○ 運営・財務で△も 国立大、初の外部評価」(Asahi.com)

これに対し財政制度等審議会は、「客観性に欠ける」ということで見直しを求めるそうです。

財務省側は、基本的には「交付金を減らす」ために評価を求めているわけですから、あまりにも横並びでは意味がないのでしょう。
しかしそんな事情を引いて考えても、ほとんど差のない評価結果には、疑問を抱く人はいるかもしれません。

そもそも今回の評価は、大学側が設定した目標値に対する達成度で見ている部分があるので、大きな差をつけるのはその時点で既に難しいのでは。
現在の調査方法のまま大きな差をつけたら、大学側からより一層、不満の声が上がりそうです。

【国立大学が経済団体に加入。】
■「京大、阪大、神戸大、関経連に同時入会 国立大は初」(Asahi.com)

関西経済連合会は11日、京都大と大阪大、神戸大の3大学が同日付で入会したと発表した。国立大学が関経連の会員になるのは初めて。3大学は、研究成果を京阪神の中小企業などに広く情報発信し、産業界との連携を積極的に進める考えだ。
(略)京大の牧野圭祐本部長は「企業の実務レベルだけでなく、経営トップと産学連携の情報が共有でき、共同研究がやりやすくなる」と入会の利点を話す。
大学側には、学生の就職面でのメリットを期待する声もある。阪大や神大の担当者は「学生が職場を体験するインターンシップでも協力を得たい」と話している。
財界側には、国立大の加入により調査・提言活動で要望書などの内容の重みがさらに増す、との期待が大きく、関経連は「関西活性化のために大学の存在感を大きく伸ばしてほしい」と歓迎している。
国立大学法人が経済団体の会員になるのは全国的にも珍しい。東大は経済団体に加入しておらず、広報担当者は「そもそも教育・研究を担うのが大学で、経済的な事業を手がけているわけではない」と話す。私立大では、すでに慶応大や早稲田大、関西大、関西学院大など11学校法人が関経連の会員になっている。
(上記記事より)

国立大学が経済団体に加入するというのは、以前にはきっと考えられなかったことなのでしょう。
大学が経済団体化するということではなく、大学は大学のあり方のままで、お互いに社会のために知恵を出し合う場ができたと考えればいいのではないでしょうか。

社会に対する影響力の大きい大学の皆様にはぜひ、こうした場で、就職活動の早期化を止めるようにお話しいただければと個人的には思います。

以上、今週のニュースクリップでした。

今週も一週間、本ブログを読んでくださいまして、ありがとうございました。
来週も、お互いがんばりましょう。

マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。