以前ドイツの教育制度について書いたら、ドイツのことがもう少し知りたくなった。
日中韓の間で戦時中のことがあれこれ論争になってもいる。
ここは、似たような境遇にいる国に学んでみようじゃないか!
というわけで、最近読んだ本。
ドイツは苦悩する―日本とあまりにも似通った問題点についての考察
著者はドイツ人の夫と結婚し、現在もドイツで暮らしている日本人の女性。
客観的な数字データも多く、非常に明快な論旨で書かれています。
実際に住んでおられるので、普段の報道などではつかみにくい現場のニュアンスもうかがい知ることができて、オススメです。
教育に関しては、やはり国内でも揺れているようです。
PISAのテスト結果で低迷したこと、いわゆる「PISAショック」は大きいみたいです。
それもですが、この本で初めて知ったのは、「ドイツにおけるイスラム教の教育」についてでした。
現在ドイツには、多くのトルコ民族が暮らしています。
彼らは寄り集まって暮らすことで「トルコ人街」のような文化区域を形成し、その中ではトルコ語だけで生活ができるほどです。
ご存じの通り、トルコはイスラム教の国ですので、ドイツに移住してきたトルコ人も多くはイスラム教徒です。
そんな彼らにとって、イスラム文化の中で子供を育てることは非常に重要です。
この本には、トルコ人の中にも、イスラムを厚く信仰しながらイスラムの生活文化をかたくなに守り続ける人々と、基本的にはイスラムを信仰しつつもドイツの文化にとけ込もうとする人々がいると書かれています。
前者の方々の家庭では、娘は戒律に則って人前では肌を見せません。
伝統的なスカーフを着用します。
さらに、年頃になった娘をドイツの公立学校に通わせることを拒否する親もいるそうです。トルコ人コミュニティ内のモスクで教育を受けさせるわけです。
ドイツでの、トルコ人の比率は少なくありません。
彼らは税金を払っているわけですから、これでは公立教育が崩壊します。
・欧日協会「ドイツに居住する外人数」
http://www.ohnichi.de/Fukugan/gaijin.htm
また、ドイツの公立学校ではドイツの宗教、つまりキリスト教について文化的に理解を深めるための授業があるそうですが、これに対しても「イスラム教について同様に教えないのはフェアじゃない」という意見が、トルコ人の方々から出されているそうです。
マイスター個人の意見としては、ドイツの歴史、文化を学ぶにあたって、キリスト教の影響を学校で全く教えないというのは無理がある気がします。
日本の歴史教科書だって、仏教の歴史的、文化的影響は学びますよね。
仏教のことを語らないと、海外との文化交流や、大化の改新前後の政治抗争、それに建築をはじめとする文化形成の流れが理解できませんからね。
(神道については、みなさんあまり触りたがりませんが…)
イスラム教を教えるべきかどうかについては…何とも言えません。
人口比で言えば、無視できない存在ですが、ドイツの文化に影響を及ぼした存在には、まだなっていないような気がしますので、キリスト教と同列に扱うのは無理があるような気がします。
もっとも、私はドイツには一度も行ったことがないので、どうするのが一番いいのかはわかりません。
トルコには観光で行ったことがあります。
トルコは、イスラム教文化圏(っていう表現は使っていいのかな…?)の国の中では、いち早く政教分離を実現し、近代化を推し進めた国です。
(その影響かどうかわかりませんが、本来イスラム教では禁じられているはずの飲酒にも寛容みたいで、結構みなさん飲んでました。
文化的にイスラムなだけ、という印象を個人的には持っています。)
いずれにせよ、宗教の文化的、歴史的影響を教えるのは大事です。
いっそ、すべての宗教について教えればいいんじゃないかな、と思います。
ただし学校の授業で、信仰の内容や教義にまで踏み込むべきではないと思います。
そんなわけで、ドイツは苦悩しています。
景気の悪化+外国人就業者の増加 →ドイツ人の若年失業者増加
といった状況から、外国人排斥などの運動も見られるようです。
こんなとき、一番大事な教育現場がもめている場合ではないですよね。
ドイツはいつか行っておきたい国ですので、がんばって欲しいです。