マイスターです。
「大学の街」と言ったら、皆様はどんな都市を思い浮かべるでしょうか?
これには多分、大まかに言って2通りのパターンがあると思います。
一つは、特定の大学を中心にして、街の歴史や文化、雰囲気が形成されてきた都市。
例えば、イギリスのオックスフォードやケンブリッジなどは、そんな街だと聞きます。
日本だと……やや特殊ですが、例えば筑波研究学園都市(筑波大学)などはそうかも知れませんね。
もう一つは、たくさんの大学が集中した都市。
日本の場合、例えば東京や京都は、非常に多くの大学が存在している都市です。
ただ、東京は沢山の大学を抱えているにもかかわらず、(御茶ノ水などを除けば)あまり「大学街」という印象を持たれている方は多くないように思います。
むしろ、「大学街」というイメージが強そうなのは、京都。
京都市の公式webサイトによると、2008年4月1日現在、京都市内だけでも37の大学・短期大学が所在しているそうです。
■「大学のまち京都の推進」(京都市)
これだけの密度で大学がひしめき合う都市は、世界中を見渡しても、そうはないでしょう。
長い伝統を持つ大学も少なくありません。
さて、そんな大学街・京都に関して、興味深いアンケート結果が出ているようです。
【今日の大学関連ニュース】
■「京都市民の54% 大学と交流ほとんどなし…市アンケート」(読売オンライン)
京都市は24日、「大学のまち・京都」をテーマに市民を対象に行ったアンケート結果を発表した。半数が「大学と市民との交流はほとんどない」と回答し、京町家を使った授業を行う大学が増えるなど、地域をキャンパスとした活動が活発になる一方で、大学と市民の距離感が意外と縮まっていない実態が浮き彫りになった。
2月に20歳以上の市民3000人を対象に選択式アンケートを実施。1104人が回答した。
「京都のまちと大学についてどう感じているか」という設問では、54%が「交流がほとんどない」と答え、「交流が盛ん」は22・2%だった。学生や研究者とどのようなかかわりがあったかという質問に対しては、「特にない」が44・4%と最も多く、「大学祭などの催しに参加したことがある」が20・7%で続いた。
(略)アンケート結果について、大学政策を担当する市政策推進室は「大学も地域貢献を意識し始め、地域連携の取り組みも始まっているが、大学を核としたまちづくりをより一層進めていきたい」としている。
(上記記事より)
日本有数の大学都市なのに、市民は大学を遠く感じている……というトーンの記事です。
他のメディアも、おおむね同じような取り上げ方で、
「大学のまち・京都」なのに、大学と市民の距離がまだまだ遠い--。京都市が実施した市民アンケートで、そんな実情が明らかになった。「大学と市民との交流はほとんどない」と回答した人が半数を超過。大学政策を担当する市政策推進室は「厳しい結果。大学が活性化すれば京都も発展すると考えており、大学を核としたまちづくりに向けた政策をさらに進めたい」としている。
(「掘り出しニュース:「大学のまち」と言われるが…」(毎日jp)
記事より)
……なんて紹介をしていました。
どらどらと思って見てみたのが、↓京都市によるこちらの広報資料。
■「平成19年度第2回市政総合アンケート調査『大学のまち・京都』について」(京都市)
PDFによる資料に、アンケートの結果がまとめられています。
問1 京都のまちと大学についてどのように感じるか
○ 京都は,世界に誇る歴史や文化,知識が蓄積するとともに,最先端の文化や情報が集まる都市です。
京都市内には様々な大学・短期大学がありますが,この京都のまちと大学について,どのように感じておられますか。次の中から一つ選び,○印を付けてください。
1 京都のまちは大学が多く集積しており,学生と市民の交流も盛んで活気がある・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22.2%
2 京都のまちは大学が多く集積しているが,市民との交流はほとんどない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54.0%
3 京都のまちに大学が多く集積しているとは思わない・・・・・4.5%
4 その他・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4.3%
5 特に何も感じない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13.2%
(無回答)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.7%
(上記の調査結果より)
「市民との交流はほとんどない」と感じている方の方が過半数。
なるほど、確かにこれだけ見ると、大学と市民との距離は近いのかなぁと思えます。
でも逆に言うと、20歳以上の市民3000人を「無作為に抽出」したアンケートで、2割以上の方が、「京都のまちは大学が多く集積しており、学生と市民の交流も盛んで活気がある」と認識されているわけです。
他の街で、「ウチの街は大学生と市民との交流が盛んなおかげで、活気があるよねぇ」なんて思っている人が、2割もいるでしょうか。
全国的に見たらそう悪い数字ではないんじゃないか、という読み方も出来そうな気が。
問2 大学や学生・教職員・研究者とどのような関わりを持ったことがあるか
○ あなたは,市内の大学や学生・教職員・研究者と,どのような関わりを持たれたことがありますか。当てはまるものすべてを選び,○印を付けてください。
1 大学の図書館,体育施設等を利用したことがある・・・・・13.0%
2 大学祭等の催しに参加したことがある・・・・・・・・・・20.7%
3 市民向けの公開講座を受講したことがある・・・・・・・・11.9%
4 地域の行事(夏祭り,地蔵盆等)に参加した学生・教職員・研究者と交流したことがある・・・・・・・・・・・・・・・11.4%
5 京都学生祭典等のイベントに参加したことがある・・・・・・7.1%
6 研究者や学生が行う調査・研究(アンケート等)に協力したことがある・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14.9%
7 仕事での協力やアドバイスを受けたことがある・・・・・・・7.2%
8 その他・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5.3%
9 特にない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44.4%
(無回答)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.8%
(上記の調査結果より)
「市民の10人に一人は、大学の公開講座を受講した経験がある」
……なんて都市は、たぶん日本では他のどこにもありません。
(京都市民以外の方は、家族や友人の方々に、同じ質問をしてみてください。
大学の公開講座を受けたことがある人は、どのくらいいますか?)
また「大学の図書館,体育施設等を利用したことがある 13.0%」というのも、よくよく考えてみると、決して小さくはない数字です。
日本の他の都市がどうなっているかは存じ上げませんが、こんなに多くはないんじゃないか、と思えます。
もちろん、大学が多い分だけ、京都市は大学関連事業にそれなりの予算を投入したりしているでしょう。
ですから、単純に他の都市と比較するわけにはいかないと思います。
ただそれでも、「案外がんばっている」という、プラスの部分は評価してあげていいんじゃないかなぁと、個人的には思ったりします。京都の方々は、そのあたり、どう思われるでしょうか。
それとも、もともとの期待値が大きいので、現状程度では満足されていないということでしょうか。だとしたら、それは悪いことではないかも知れませんね。
上記の京都市による発表では、他にも興味深い質問結果を見ることが出来ます。
ご興味のある方は、ぜひご覧ください。
以上、今日は大学と地元市民との関係に関するニュースをご紹介しました。
マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。