大学で広がる「リユース市」 大学はぜひ協力を

マイスターです。

大学に入学すると同時に、ひとり暮らしを始める人は少なくありません。
そうすると、結構大変なのが、家電や家具などを準備する費用。冷蔵庫から電子レンジ、炊飯器、掃除機などなど、生活するために必要なものをすべてそろえると、結構お金がかかります。

ただ、こういった家電は基本的に「ひとり暮らし用」の小さくて簡素なものなので、実家に戻ったり、結婚したりすると、使わなくなります。
でも壊れているわけではないので、捨てるのはもったいないですよね。

そこで多くの人が、リサイクルショップに売るとか、知り合いに譲るとかするわけです。
まだ使ってくれる人を探して、活用してもらう。「リユース」です。

大学では毎年、ひとり暮らしをする人と、ひとり暮らしを終える人が大量に出ます。
そして、基本的にみんな、そんなにお金はありません(^_^;)
ですから、リユースを推奨するには、もってこいの場なのです。

様々な大学で、主に新入生を対象にした「リユース市」が実践されています。

例えば、大学で行われているリユース市には、以下のような例があります。

■「【市大リユース市2008】卒業する学生から新入生へ~物品提供受付中」(横浜市立大学)

■「新入生リユース市のご案内」(金沢大学)

■「リユース市」(環境三四郎)

■「2008年 第13回名古屋大学下宿用品リユース市」

大学によって仕組みは少しずつ異なりますが、学生による環境サークルが企画・運営の中心となり、そこに大学や周辺の住宅・商店街などが協力するという形が多いようです。

買い手にとっての経済性に加え、「環境に配慮する」という点が大きく打ち出されている点が、大学らしいところ。さすが、大学生です。

上記の例では、大学当局もおおむね、協力的のようです。

例えば金沢大学ではお問い合わせ先として、ボランティア団体の連絡先に加え、「大学担当事務:学生部学務課学生相談係」という表記があります。
大学に合格した新入生や、卒業生からの質問や相談に対して、リユース市のことを伝えられるということなのかと思います。
販売会場や、製品の保管場所として、大学キャンパスの中の敷地を提供する大学も多いようです。

大学生協が関わっている例もあります。
商売上、競合していそうなものですが、その辺りもさすが、大学での活動です。

そんなわけで、今の時代に合った、なかなか良い取り組みだなぁとマイスターなどは思うのですが、最近、色々と課題も出てきているようです。

【今日の大学関連ニュース】
■「大学リユース市:卒業生の家電や家具を新入生に、規模拡大で悩みも」(毎日jp)

春は巣立ちの季節。大学では、卒業に伴う引っ越しで不要になった家電や家具を新入生へ格安で譲り渡す、「リユース市」や「リサイクル市」と呼ばれるイベントが開かれる。01年の家電リサイクル法施行などで処分にお金がかかる家電や家具をリユース(再使用)に回すことのメリットが見直され、取り組む大学が急速に広まった。しかし、取扱量が増えたがゆえの悩みも起こっている。
 「ここまで大きくなったのに、今年は実施できず残念です」
大阪大(大阪府)のリユース市「リユースマーケット」事務局で生活協同組合環境資源委員会の薮田真太郎さん(同大2年)は、今年の開催断念を、無念そうに話す。同委員会は00年ごろから、まだ使える冷蔵庫やテレビ、家具などを卒業生から回収し、市価の10分の1程度の格安料金で新入生を中心に販売。「新入生の負担を減らし、ものを無駄にしない取り組み」として評価されてきた。
昨年の取扱量は400点に上り、春のイベントとして認知されるまでに。しかし、集めた家電や家具の保管場所にしてきた生協食堂の一角が、耐震工事のため使えなくなってしまった。大学外で倉庫を借りることも検討したが、費用が高く適当な保管場所が見つからなかったため、開催を断念せざるを得なくなった。
環境活動を行う大学生らで作る全国青年環境連盟「エコ・リーグ」の06年のアンケートでは、21大学がリユース市を「実施する(した)」と回答、運動は広がりを見せている。その一方、規模が大きくなったことで、保管場所や開催場所の確保が新たな課題となりつつある。
東京農工大(東京都)では、例年保管場所として使っていた大教室が、今年は別のイベントのために使えなくなり、扱う品数を元の400~500点から半分程度にした。長崎大(長崎県)でも数年前には保管場所が確保できなくなり、主催するサークルの部室にも一時保管。その後も毎年大学側と交渉しているが「保管場所の確保は悩みの種」という。
一方、早稲田大(東京都)ではリユース市そのものが開催できずにいる。「キャンパスでは学園祭を除き、販売行為そのものが禁止されている」というのが理由。同大の環境サークル「環境ロドリゲス」は、秋の学園祭に合わせて開催したり、春に開かれる地元の商店街のフリーマーケットに出店するなどしたが、本格実施には至っていない。
同大4年の西尾敬さんは「卒業生から新入生に家電や家具を受け渡すという趣旨からすれば、大学でリユース市を実施しないとあまり意味がない」と話す。
(上記記事より)

基本的に利潤はあまり期待できない事業ですから、無料で大学がスペースを貸してくれるということが、事業を継続させる上で重要になってきます。
販売するときは青空マーケットでも良いかもしれませんが、保管するのは屋内でなければいけません。

ただ、大学側も、上記の記事にあるように工事などを行っている間は、どうしても場所がなくなります。
協力したいという想いはあっても、無いものは、貸せません。大学としても、残念なところでしょう。

学外で、活動の趣旨に賛同し、場所を提供してくれるような個人や団体を探すという手もありますが、これもなかなか大変です。
貸してくれたとしても結局、販売会場になるのは大学ですから、あんまり大学から離れていると、製品を運搬するための手間とコストがかかってしまいます。

解決法としては……

1:大学の全組織が協力して、なんとかスペースをひねり出す
(学部学科の責任者を始め、学内の全部門をあたれば、案外、使われていないスペースはありそうな気がします。少しずつ分散して保管すれば、一回のマーケットで販売する製品の置き場くらい、なんとかなるかも知れません)

2:リユース市の前日に製品をいっきに持ち寄ることで保管の期間を短くする
(これであれば、教室を貸してもらいやすくなると思います)

3:実際の製品を一箇所に集めることはせず、ネット上に製品写真を並べて購入者を募り、買い手が見つかった時点で直接、持ち主から買い手に製品を送る

……といったことが考えられそうです。

1番に挙げた保管スペースの問題は、実は解決できるケースもあるかも知れません。
大学の組織はけっこう縦割りなので、実際には「場所はあるけれど、自分の権限では貸せない」という場合が少なくないんじゃないかと個人的には思えるのです。趣旨をきちんと話せば、協力は得られるかも知れません。
学生部が積極的に学内に打診するか、もしくは学生の代表が各部門に根気強くお願いしてまわるか、粘ってみると、どうにかなるかも知れませんよ。

また、できればやっぱりキャンパスに製品をずらっと並べ、立ち寄った人が好きなものを買えるようにしたいところでしょうが、早稲田大学のように、大学がリユース市の開催そのものを認めていないとなると、それは不可能です。

「キャンパスでは学園祭を除き、販売行為そのものが禁止されている」というのが理由だとのことですが、これはまた、ずいぶん硬直的な対応だなぁとマイスターは思います。

普段、キャンパスでの販売行為を認めていないというのはわかります。
ただ、こういった、学生の生活を支援し、かつ環境にも配慮できるような取り組みにも、問答無用で一律にそれを適用するというのは、いかにも官僚的で、残念です。
早稲田大学ほど、全国から一箇所に学生が集まってくる大学もないと思うのですが。

一方で早稲田大学生協は、独自に書籍のリユース市を企画していたりします。

■「リユース本市への書籍ご提供のお願い」(早稲田大学生協 店舗情報 ブログ)

早稲田大学の場合、学生が主催するイベントだと、ダメなのでしょうか。
で、仕方がないからなのか、早稲田大学の環境サークルは過去、大学を仲介させず、近隣商店街と協力してリユースを行うプロジェクトを行ったりしているようです。

■「DeNA、環境保全とリサイクル促進を目指した『引っ越しリサイクル作戦』実施 」(Venture NOW)

ただこちらは2002年のニュースしか見つかりませんでしたので、やはり大変だったのかも知れません。
本当なら、こういったことに大学が絡めばすごく良い循環が生まれるのだと思うのですが……。

早稲田大学の場合、問題を解決する方法を考えるのではなく、「問題になりそうなことはやらせない」と考えてしまいがちな大学組織の悪い面が出てしまっているようで、残念です。
来年以降は、ぜひ学生と新入生と地域と地球環境のために、協力を検討してあげてください。

以上、「リユース市」に関して、いくつかの事例を紹介させていただきました。

個人的には、非常に良い意義のある取り組みだと思いますので、ぜひ、全国の大学で、実践してみていただきたいと思います。

特に、学生がこういったプロジェクトを企画し、大学に提案をしてきた場合は、学生のためにも、新入生のためにも、地域コミュニティを巻き込んで活性化させるためにも、絶好の機会。
ぜひ、学内あげて協力してあげてください。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。