科学を楽しみながら、人がつながる 「はこだて国際科学祭」

マイスターです。

子ども達の理科離れを防ぐためにはどうすればいいか、という話題をよく耳にします。
科学技術立国・日本にとって、これは深刻な問題。
小学校から大学まで、行政から企業、NPOまで、様々な機関が取り組みを行っています。

そんな中、ちょっと変わった取り組みを知りました。

【今日の大学関連ニュース】
■「科学祭は都市再生の起爆剤となるか?」(WIRED VISION)

人が集まり、場を共有しながら何かを創造していく触発材として、「祭り」は昔も今も変わらぬ強度を保ち続けている。特に、創造性を重視した都市再生の戦略が奏功しつつある欧州の諸都市では、旧来の伝統的なものとは異なる様々な祝祭(フェスティバル)が勃興し、人の往来が活発になり、人々の地域への愛着(最近はこれをシビックプライドと呼ぶことも増えてきた)が高まってきた。
翻って日本でも、新しい祭りの萌芽はそこかしこに見受けられる。今回はその一例として、私の出身地・北海道函館市で今夏開催へ向けて準備が進んでいる「はこだて国際科学祭」を紹介したい。
観光都市として圧倒的なブランド力を保ち続けている函館は、今年横浜とともに開港150周年を迎え、数多くの記念行事が繰り広げられる(詳しくはこちらを参照されたい)。科学祭も開港150周年の連携行事として位置づけられているが、そもそもなぜ、函館で科学なのか?
函館では2000年、情報科学系の公立はこだて未来大学が開学。複雑系科学やロボット工学、インターフェイスデザインなどの研究・教育の拠点として、そのユニークな学習環境デザインが注目を集めてきた。また、北海道大学水産学部をはじめとして、地域には多数の学術教育機関をすでに抱えており、行政が主導する国際水産海洋都市構想など、アカデミックリソースは十分過ぎるほどの厚みを持っている。
こうした学術研究のポテンシャルと、観光都市としてのブランド価値、食や観光など地域資源の豊かさを融合させた試みとして、函館市がJST(科学技術振興機構)の補助金をもとに実施することになったのが科学祭というわけだ。企画運営の中心になっているのは前述の公立はこだて未来大学で、同教授の美馬のゆりが代表をつとめる実行組織「サイエンス・サポート函館」(SSH)には、地元の研究者や教育者、行政職員、市民活動関係者、デザイナーなどとともに私も参画している。
科学祭の発案者であり、SSH代表をつとめる美馬のゆりは、「英国では20年の実績があるエディンバラの科学フェスティバルなど、欧米では各所で行われているが、函館で日本初の本格的な科学祭を仕掛けたかった」と、意気込みを語る。今夏を皮切りに、毎年少しずつテーマを変えながら開催し、すでに実績を積んできた演劇(野外劇)や音楽(国際民族芸術祭)、映画(函館港イルミナシオン映画祭)などと並ぶ観光都市函館の新しいフェスティバルの目玉として定着させたい──というのが、美馬らSSHメンバーの想いだ。
(上記記事より)

北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)特任准教授で、情報デザインの専門家でもある渡辺保史氏による記事です。

「科学祭」というのは、あまり耳慣れない響きですが、欧米では各所で行われている取り組みとのこと。
詳細は、↓こちらをご覧下さい。

■「はこだて国際科学祭」(サイエンスサポート函館)

6月1日に公式な記者会見が開かれるとのことですので、プログラムのディテールはまだあまり明かされていませんが、おおよそのコンセプトは伝わってきます。

この科学祭のユニークさや意義もさることながら、これを企画している「サイエンス・サポート函館」の存在がまた興味深いです。

サイエンス・サポート函館は、公立はこだて未来大学の他、函館工業高等専門学校、キャンパス・コンソーシアム函館、北海道大学水産科学研究院、北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット、北海道教育大学函館校といった学術機関等と、函館市が参加する組織。

■「わたしたちの三事業について」(サイエンス・サポート函館)

上記ページでは「はこだて国際科学祭」実施以外の事業として、以下のようなものが挙げられています。

<はこだて科学網>
科学技術を体験し、楽しむ活動をサポートします!
はこだて科学網は、科学技術に関する興味関心を高めることを目的とした、地域における様々な活動を支援するためのネットワークです。地域で開催される科学技術に関するイベント情報を集約・発信し、皆さんが参加しやすいような仕組みを作ります。また、市内の大学・高専が連携し、児童生徒や一般市民の皆さんが、楽しみながら科学技術について興味関心を高められるような体験型展示を提供します。さらに、ご要望に応じて出前講座なども実施します。 「多くの市民が科学技術に興味を持ち、暇があれば科学技術に関する理解を深めるための活動に参加し、科学技術の大切さや楽しさを子供たちに伝えていく」「科学が文化」として根付いた函館市、そんな街を目指し、ネットワークを広げていきたいと考えています。
<はこだて科学寺子屋2009>
「まち、ひと、かがく」を<つなぐ>ひとを育てます。
はこだて科学寺子屋は、まちのなかで科学技術に関するコミュニケーションを担う人材育成のプログラムです。函館の地域に根ざし、「科学を文化」にする活動をおこなうためには、大学・高専や研究機関、民間企業にいる科学技術の専門家と、地域でくらしている市民とを<つなぐ>人材が欠かせません。
そうした人材には、科学の話題を市民に分かりやすく楽しく伝えたり、逆に市民の側が持っている科学への不安や期待を科学者にフィードバックしたりできる、双方向コミュニケーションのための各種の手法を備えている必要があります。そこで、函館市内にある大学・短大・高専の学生が共通に受講できる講座を開設し、<つなぐ>人材を地域に送り出していきます。講座は、地域社会にも門戸を広げ、社会人も参加できるようにします。
プログラムの開発・運営にあたっては、2005年よりこうした人材育成で成果をあげてきた北海道大学の科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)が協力していきます。
(上記記事より)

「科学」を軸に、その楽しさや面白さを伝えることを通じて、函館を盛り上げる組織……といったところでしょうか。
科学の理解というと、ちょっとかたい感じもしますが、ここはあくまでも「楽しめる」という点を大事にしているところがポイントかと思います。

大学を始めとする参加校の教職員や学生が、大勢関わっていそう。
科学祭なんて、地域活性化にもなり、アートやエンターテイメントの要素もあり、楽しんでもらえながら、しかも科学理解の促進になっていて、良いところだらけです。
その上、学生の教育活動の一環にもなっているのだとしたら、素晴らしいですよね。
こういった取り組みを行うネットワークが地域に存在しているというのは、大変な力だと思います。

■「サイエンス・サポート函館 活動日誌」

↑こちらで活動の様子が報告されていますので、ご興味のある方はどうぞ。

他の地域でも、こういった取り組みが広がればいいのに……と思います。
もっともこうしたネットワークは、そう簡単に作れるものでもないでしょうから、実現させるのは大変だと思いますけれど。

ちなみに函館市は、行政としてはかなりぶっ飛んだ広報活動を展開していることで、一部では知られています。
そのあたりの詳細は、↓このあたりを見ていただければわかります。

■「はこだてCM放送局 ~HakoTube~」(函館市)

これくらい人を楽しませることに意欲的で、しかも本気で地域振興をしようとしている自治体だと、サイエンス・サポート函館の活動もやりやすいんじゃないかな……なんて想像します。
まだ第一回すら行われていない「はこだて国際科学祭」ですが、ぜひこれから、長く継続してほしい取り組みです。

よろしければ大学関係者の皆様も、視察をして楽しんできてはいかがでしょうか。
第1回の盛り上がり方次第では、これから全国のあちこちで企画が立ち上がってきそうな気がします。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。