「新時代の大学経営人材―アドミニストレーター養成を考える」

マイスターです。

最近、また大学職員としては外せない本が出版されたので、ご紹介します。
マイスターが見た中で、一番、まとまっている本ではないでしょうか。

『新時代の大学経営人材―アドミニストレーター養成を考える』ジアース教育新社刊

(↑書籍名をクリックするとAmazonに飛びます。表紙画像がないみたいで、わかりにくくてすみません)

以前ご紹介した、『SD(スタッフ・ディベロップメント)が育てる大学経営人材―大学冬の時代、大学職員は何をすればよいのか?筑波大学大学研究センター短期集中公開研究会より』の講演者が中心になって執筆されています。

従来からの、職員=「ジム」という概念を強く持っている方には、かなり新鮮で刺激的な内容です。

大学アドミニストレーターを目指している方には、使える教科書キター!という感じでしょうか。

発行元の出版社が、紹介ページを設けています。
本書の章構成が載っていますので、ご覧ください。

■ジアース教育新社による書籍紹介
http://www.kyoikushinsha.co.jp/books/43.html

例えば、

「優れた研究成果を生み出すためには、良好な研究環境が必要である。研究環境には、研究活動の周辺にあるさまざまな支援活動も含まれる。資金源や研究人員構成の多様化、知的財産権を始め法的問題の高度化、国際交流活動の増大、研究施設の維持・管理の複雑化などに直面して、これらに関わる業務を誰がどのようにして処理するのだろうか。庶務・会計など伝統的な事務を超える業務は、職員の守備範囲として、教員・研究者側にその多くを任せておいてよいものだろうか。雑務を雑務としてでなく、新たな分野の研究事務として総合化できる人材こそが必要なのに、である。」同書p.15より引用

「職員の自己研鑽とともに大切なことは、大学のトップが職員に然るべき役割や位置付けを与え、またその仕事の重要性を認めることである。大学職員を、未だに『ジム』と呼び捨てるような大学では、将来のアドミニストレーターは決して育たないであろう。『職員のくせに』と事務職員の役割を正当に評価しない教員のいる大学もまた同じである。」同書p.45より引用

「現状のどこを探しても昔ながらの『事務の仕事』『事務屋としての職業意識』しか見当たらないという現状維持的職場も少なくないだろう。新しい時代の風など吹いてこないと永遠の『凪状態』を主張する職員もいるだろう」同書p.53より引用

といった、組織風土に関する指摘。

この書籍の執筆陣は、「職員も経験した教員」や、「たたき上げで副総長になった職員」、「大学の組織研究を専門とする教員」、など、様々です。

また、私立、国立、公立それぞれの事情が当事者によって書かれているため、全体的に、バランスの取れた構成になっていると思います。

そうした皆さんから、上記のような指摘を受けると、ううむ、そうかな、と思ってしまいます。

一方で、実践的、具体的なデータや事例も掲載されています。

何しろみなさん、大学に籍を置く当事者ですので、自分の大学のことは非常に詳しい。
改革事例の紹介についても、成功したことと、成功しなかったこと、そしてその理由まで、わかりやすく解説してくれています。

例えば慶応義塾大学の孫福氏は、

「業務改革を進める背景として、どんな問題が発生していたか?」

という組織の分析を、慶応大の具体的な事例を通じて解説していますが、
これがなかなか、生々しい。

どういう層の人が、どういう改革に抵抗したか、書かれてます。
(書いちゃっていいんでしょうかね?)

この孫福氏は研究者ですが、実際に慶応大の組織改革の前線に立った方でもあります。
そのときの実際の体験を書かれていますので、皆様の参考になると思います。

また、どんな研修を行った結果、どういう人材が育ち、どう役に立ったか、といった経験も掲載されています。
海外研修の体験談などもあります。

大学職員としては、気になりますよねー。

ここでは、とてもすべてをご紹介できません。
やはり、実際に読んでいただくのが一番です!

体系立てられた、非常にいい本だと思いますので、
人生の教科書だと思って(おおげさ?)、一冊、お手元に置いておいてもいいと思います。

これだけ充実した、専門分野の本が \2,600というのは、安いです。

<ここ>
をクリックすれば購入できますので、お近くの書店で手に入らない場合は、どうぞ。

大学職員のアドバンテージを活かし、生協に注文されてもいいと思います。

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3 件のコメント

  • はじめまして!大学職員に興味あったりしてこっそり見てる院生です(笑)これからも楽しみにしています!大学職員実態を教えてください(笑)

  • こんにちは、マイスターです。
    こっそり見てくださっていて、ありがとうございます!(笑)
    大学職員の実態は、とても面白いです。
    100年位前からフリーズドライされているような、古きよき(?)世界が広がっています。
    近代化の過程を今から見られる数少ないサンプルですから、ぜひ、これからもご注目ください。
    ブログも拝見しました。面白いですね。
    私は理系学部→文系(学際?)大学院という経歴で来たので、文系の院生の方は個人的に応援したくなります。
    コンバスも、ぜひ、続けてください。
    楽器、すっごく場所をとりますけど…(笑)