マイスターです。
学生に対する経済支援策を強化する大学が増えています。
■「愛媛大医学部 総額1000万円の奨学金?」
■「大学院生に対する経済支援 各大学が競う」
■「ICU、4年間で400万円の奨学金を学部生に」
■「入学金値下げ、将来的に全廃へ 慶應義塾大学」
大学間競争が激化する中、経済的な事情を抱えていても優秀な学生は、ぜひ自校に迎え入れたいという思いが大学側にはあるでしょう。
もちろん、家庭の事情で学ぶ機会が失われることがないよう、大学として格差是正に貢献するという意図もあると思います。
あるいは医学部の「へき地」勤務希望者を対象にした奨学金のように、現在不足している分野に人材を供給するため、特定の条件を付けて経済支援を行うケースもあります。
こちらは大学の事情に加え、地域や国全体が抱える課題とも連動した話になってきます。
今日は、この両方に該当しそうな事例をご紹介します。
【今日の大学関連ニュース】
■「東京学芸大:教員志望の学生に500万円相当支援」(毎日jp)
東京学芸大(東京都小金井市)は11日、教員志望の学生に4年間で約500万円を支援する特待生制度を新設したと発表した。来年度入学生から適用する。「家庭年収300万円以下」などの条件を満たせば、入学金と授業料(4年間で約240万円)を免除し、教職に就くと返還不要の奨学金(年間40万円)も交付する。文部科学省国立大学法人支援課は「破格の奨学制度。学部レベルでは前例がない」としている。
特待生は年間10人以内で、教員養成課程の学生であることや、高校の成績が一定水準を満たしていることなどが条件。▽学生寮の寄宿料免除▽ノートパソコンの無償貸与▽学内のアシスタント業務に採用--などの便宜も図り、総額約500万円相当の支援となる。卒業後2年間で教職に就かなかったり、他の職に就いた場合、奨学金のみ返還させる。
(上記記事より)
東京学芸大学は、教育学部のみで構成されており、数多くの教員を送り出してきたことで知られています。
そんな東京学芸大学が、上記のような特待生制度を新設したそうです。
●教員養成課程の学生であること(卒業後2年間で教職に就くこと)
●家庭年収が300万円以下であること
●高校の成績が一定水準を満たしていること
などが条件。
4年間の学費や入学金、学生寮の寄宿料などが免除され、さらにパソコンの無償貸与や、学内でのアルバイト斡旋など、様々な支援を組み合わせて、「500万円相当」の支援になるとのことです。
「4年間で」の支援で、「来年度入学生から適用」とあります。また「高校の成績が一定水準を満たしていること」という記述も。
ということは、この特待生の選抜は入学時にのみ行われ、例え上記の条件を満たしていても既に入学している学生は対象外ということになるのかなと思います。
「今は経済的に大変かも知れないけれど、学芸大なら学べますよ! 夢をあきらめることなく、教員を目指せますよ!」
……という、大学から受験生へのメッセージなのでしょう。
経済的な事情を抱えている学生にとっては、希望になる制度だと思います。
そういった方々の間で、東京学芸大学という選択肢の魅力も増すことでしょう。
また昨今では、教員志望者が減少してきていると耳にします。
教育現場が抱えている課題が大きく報じられ、学生や受験生が教職を敬遠する傾向にあるのだとか。
そんな中、教員を目指そうという若者は大事な存在。そういった方々を優遇し、教員を目指しやすくするというのは、日本全体にとっても意味のあることだと思います。
ただ、支援額が大きく、それに期待する人が多そうだからこそ、「特待生に選ばれたことがいつ分かるのか」が気になるところです。
この特待生制度を前提にして学芸大を志望し、合格したものの、特待生には選ばれなかった……という場合、計算が500万円違ってきます。
仮に特待生に選ばれなかったとしても、国立大学よりも安い学費で教員を目指すルートはそうそうありませんから、代わりの選択肢はないのだと思いますが、中には、「特待生に選ばれなかったから、やはり学業を断念する」というご家庭も出てくるかも知れません。
そんな方々のためにも、「どのようなプロセスを経て、いつ頃、自分が特待生だとわかるのか」を早めに明らかにすると同時に、「選ばれなかったとしても、こんな奨学金がありますよ」といった情報を提示してあげると、なお良いのかなと思います。
「本学にもこんな奨学金がある!」とか、「あの大学の経済支援は面白い!」みたいな情報がありましたら、ぜひ教えてください。
機会がありましたら、可能な限りで、ご紹介していきたいと思います。
以上、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。