マイスターです。
日本の医療で深刻な問題になっているのが、医師不足。いや、不足というよりは、「医師の偏在」という方が正確でしょうか。
地方の医師がとにかく足りないのです。
政府も、医学部定員の引き上げを認めるなどの手を打っていますが、結局、医学部の卒業生が増えても、彼等が地元に定着してくれなければ意味がありません。
そこで各大学とも、様々な工夫でそれを補おうと努力されています。
中でも、卒業後一定期間、地元で医師として研修・勤務することを条件に入学を認める「地域枠」の導入が、最近では進んでいるようです。
(過去の関連記事)
・医師不足を解消するための大学の試みあれこれ(2007年04月09日)
https://unipro-note.net/wpc/archives/50304242.html
・医学部の「へき地枠」医師不足の解消なるか(1):自治医科大学の仕組み(2007年05月15日)
https://unipro-note.net/wpc/archives/50312987.html
・医学部の「へき地枠」医師不足の解消なるか(2):手を打っておくべき課題は?(2007年05月16日)
https://unipro-note.net/wpc/archives/50313008.html
さて、今日はその地域枠についての話題。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「旭医大 「地域枠」50人に拡大 道内での研修勤務、卒業生の半数に」(北海道)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/education/49792.html
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旭川医大の吉田晃敏学長は十五日、同大が二○○八年度入試から創設する勤務地限定の「地域枠推薦入試」について、十人の定員枠を早ければ○九年度入試から五十人へ大幅に拡大する方針を明らかにした。実現すれば将来、同大卒業生の半数が道内で研修・勤務することになり、医療過疎の解消に大きく役立ちそうだ。
地域枠推薦入試は同大独自の取り組みで、卒業後の道内医療過疎地での研修、勤務を条件に受験を認める。○八年度の十人は受験資格の出身地、卒業後の研修・勤務地とも道東、道北に限定。○九年度からはこれに加え、受験資格、研修・勤務地とも全道に拡大した四十人枠を増設する方向で検討している。
同大幹部は「今後、文部科学省との協議や学内手続きを経て十一月までには正式決定したい」としている。
吉田学長は同日、旭川市内の会合で「医師不足対策の切り札として入学者の50%を道内の高校から取る。国立大全国初の取り組みで、旭医大の『特別北海道枠』をつくるものだ」と述べた。
(上記記事より)
国立大学法人、旭川医科大学に関する報道です。
■旭川医科大学
http://www.asahikawa-med.ac.jp/
同大の「出願資格及び推薦の要件」によると、現時点では地域枠推薦入学の「出願資格及び推薦の要件」には、以下のようなことが書かれています。
(1)生まれ育った地域が,北海道の上川中部を除く(注3)道北,道東(注4)並びに北空知及び中空知(注5)(以下「当該地域」という。)に該当し,将来,当該地域における医療に貢献する強い意思がある者
(2)高等学校又は中等教育学校における調査書の学習成績概評がA段階(4.3以上)(注6)の者で,人物・学力ともに優秀でかつ健康であり,学校長が責任をもって推薦できる者
(3)合格した場合は,入学することを確約できる者
(4) 卒業後は,本学が指定する道内の研修指定病院で卒後臨床研修を受けることを確約できる者
(「旭川医科大学学生募集要項 [特別選抜(地域枠推薦入学)]」より)
これを読む限り、「特定地域の出身者」であり、かつ「本学が指定する道内の研修指定病院で卒後臨床研修を受ける」ことが義務づけられているようです。
その後の勤務については、「将来,当該地域における医療に貢献する強い意思がある」という、ややあいまいな条件にとどめているようですね。
どちらかというと、出身地域に関する制限の方が強いようです。
「地元以外の出身者を入学させても、地域医療に従事してくれる可能性は低い」
という考え方が同大にはあるのでしょう。
さて、旭川医大の平成20年度入学者選抜要項によると、2008年度入試の定員は以下のようになっています。
一般選抜前期:20人
一般選抜前期:40人
AO入試:20人
地域枠推薦入学:10人
帰国子女特別選抜:若干人
私費外国人留学生選抜:若干人
旭川医大は、この地域枠推薦入学枠は、2008年度入試から新設されたものです。
しかし前述した報道に寄れば、早くも2009年度には「受験資格、研修・勤務地とも全道に拡大した四十人枠」が増設されるということなんです。
その結果、旭川医大の入学者のおよそ半分は、北海道出身者ということになるわけです。
入学者の半数に、出身地の制限を設けている大学というのは、聞いたことがありません。けっこう大胆な方針です。
ただ、地域の医療を支える人材の育成は、国立大学としての使命なのだと思いますから、こういった方針もアリだろうとは思います。これ以上ない、明確なアドミッションポリシーと言えるでしょう。
(「出身地」で限定するのが果たして効果的か、という議論はあるでしょうが)
今後の成果次第では、他の大学にもこういったやり方が広まっていく可能性もあるかもしれません。
さて、どうなるでしょうか。
以上、マイスターでした。