マイスターです。
・若手職員とベテラン職員(1)
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50299262.html
一日あいてしまいましたが、上記の続きです。
若手職員とベテラン職員とがなかなかお互いを理解しあえないケースをしばしば見かけます。
個人的な意見として、「置かれている社会状況が全然違う」ということがその背景にあるのではないだろうかと申し上げました。
もうひとつ、これはマイスターの個人的な意見ですが、ベテランが「大学の運用の実態をもっと知ってから提案しろ」ということに対して若手が反発するのには、そのやり方が正しいと思えないから、という理由があるのではないでしょうか。
ベテラン職員は、事前準備や根回しといった、「隠れた合意形成」をよくします。そのために長い時間をかけて学内に人間関係のネットワークをつくります。話を聞いてくれる知り合いの教員が何人もいる、というのはベテラン職員の勲章です。
また優秀なベテランほど、明確なルールとは多少異なるけれど運用上の工夫で課題を解決するというノウハウも多数蓄積しています。明文化されたやり方ではないけれど、ずっとこういう方法で切り抜けてきた、という知恵です。
こうした「努力」のおかげでなんとか物事が滞りなく決まり、大学の業務はまわっていきます。
大学の運用とは、実はこうした細かなノウハウの上に成り立っていて、こうしたノウハウは、長く大学で事務をこなしていかなければ身に付きません。
でも、こうした工夫による弊害について言及する人があんまりいないなぁと、マイスターはいつも思っています。
事前に根回しをしておかないとなかなか物事が決まらないのはどうしてでしょうか。
会議室以外の部分で実質的に物事が決まっているのだとしたら、そこにガバナンスの透明性はあるのでしょうか。
また、その割にだらだらと何時間もかかる会議が多いのはなぜでしょうか。「物事を決定するための会議」が組織風土として根付いておらず、ただ「議論するための会議」が会議だと思われているのではないでしょうか。
政治、特に地方政治のガバナンス研究などでもしばしば指摘されるのですが、裏の合意形成の仕組みが発達すればするほど、ガバナンスから透明性は失われます。組織は実質ではなくタテマエで動くようになりますし、そこに関わる方々もみな、タテマエとしてのルールと実質とを、都合に合わせて使い分けるようになります(ルールの見直しをするのではなく、ルールを使い分けることで事態を乗り切ってしまうのです)。言うまでもなくこれは、パブリックな組織にとって良いことではありません。
「教員から一目置かれているベテラン職員」というのも、それは非常にすばらしいことです。しかしそこにこだわりすぎると逆に、「長い時間をかけて知り合いになってもらってからでないと職員の意見が聞いてもらえない」ということの問題が見えなくなります。
明文化されないノウハウや知恵で物事を解決していくというのも、すばらしい工夫ではあるのですが、行き過ぎるとルールの形骸化につながります。またこうしたノウハウは、他のスタッフに継承したり、記録に残したりということが難しいです。ベテランが去った後、誰も正確なやり方がわからないという事態が起きかねません。ベテランのノウハウに依存する仕事というのは、実は非常に大きなリスクを抱えていると思うのですが、そのことはあまり指摘されません。
ベテランがうまく仕事をこなしているが故に、放置されたままの問題というのが、実はたくさん隠れているように思います。いつまでたっても、根本的な解決が行われないままです。
本当はそれを一番指摘できるのが若手職員だと思うのですが、その想いがいまひとつ上に伝わっていないようです。
話を戻します。
若手はベテランに対して「何も分かってない」と不信感を抱いているし、
ベテランは「若造は実際の運用も知らないくせに生意気なことをいう」と憤っています。
このままではいつまでたっても、物事は建設的な方向に進みません。
ではどうすればいいのでしょうか。
これはマイスターの考えですが、まずは若手職員に、実際に何かを仕切らせてみるというのはどうでしょうか。
あまり大きなプロジェクトである必要はありません。キャンパス内の問題をひとつ解決するようなささやかな取り組み、極端な話「失敗しても、それほど致命的ではない仕事」からで良いと思います。
企画から実行まで完全に若手にやらせてみて、ベテランは若手に聞かれたことに対してアドバイスをするだけです。ただし最終的に出た成果が思わしくなければ、遠慮なくそこを指摘しましょう。「どうしてここを確認しなかったんだ」とか。
逆に期待以上の成果を上げたなら、無理に批判する必要はありません。素直に評価した上で、さらに困難なプロジェクトを与えてください。
若手が抱えている一番の「まっとうな不満」は多分、「若手だという理由で、自分達に何もやらせてくれない」です、だから、試しに何かやらせてみるのです。
成長著しい企業では必ず、若手の勢いが建設的な方向に使われています。企画提案を行う仕組みがあったり、社内ベンチャーを立ち上げるシステムが用意されていたりします。「やってみなはれ」という言葉が文化になっている企業もあります。
大事なのは、実行までの権限を与えて取り組ませることです。「若手から意見を出させよう」なんていって発表をさせ、実行は別の部門が行うという例がありますが、それでは不満は解消されません。
意欲やエネルギーをぶつける先があれば、文句を言うヒマもありません。
ベテランにとってもいい機会です。若手に何もやらせていないから、ベテランもただ「若造は未熟だ」くらいしか言えないのです。具体的に何かプロジェクトが立ち上げられれば、ベテランからそこにアドバイスをしたり、問題を指摘したりという動きが生まれます。建設的になりますよね。
たまに「意見交換会」と称して若手とベテランを強引に会食させるような話を耳にしますが、たいていは知り合いになっただけで終わります。せっかくですから仕事で交流しましょう。的確な指摘ができるベテランは、若手からも自然に尊敬を集めるはずです。
具体的なプロジェクトを通じて、お互いがお互いを知っていく。
はじめの一歩としては、これが一番良いのではないかとマイスターは思うのですが、いかがでしょうか。
誰にも分からない「10年後」を引き合いに出して「君たちには将来活躍してもらうからな」と言うよりも、その期待を今すぐぶつけてあげてください。
以上、つらつらと自分の考えを述べました。
あくまでも上記はマイスターの考えですが、人によって様々なご意見がおありでしょう。
ご自身の職場で何が問題になっているのか、何ができるかを考えてみてください。
マイスターでした。