一ヶ月前のイベントのレポートを書いているマイスターです。
すみません、一回で終わらせる予定が、終わらずに毎回、なんとなく続いております。

↑こちらは、奈良女子大学のブースです。
奈良女子大学は以前にも、「奈良漬けアイス」、「奈良漬けサブレ」など、ユニークな製品を開発・販売されていました。
奈良女子大学のこうした取り組みは、文部科学省の現代GPに採択されている教育活動の一環として展開されています。
今回も、様々な製品が並んでいました。
それぞれのプロジェクトについては以下のサイトに詳しいです。
ご興味のある方はご覧になってみてください。
■生活観光現代GP「奈良の食プロジェクト」
■地域女性現代GP「奈良漬プロジェクト」
■奈良八重桜プロジェクト
↑ミツバチ研究で名高い玉川大学では、はちみつが販売されていました。
玉川大学では、50年以上前からミツバチ研究を行っているそうで、同大からは養蜂家も輩出されています。
はちみつは文字通り、ミツバチが集めた花の蜜です。
どんな花の蜜を集めたか、どの季節に採れたかによって、味が変わってきます。
ですから一般的にメーカーが生産しているはちみつは、品質を一定に保つため、様々なはちみつをブレンドして作っているそうです。
ですが、玉川大学がこうして販売しているはちみつは、ブレンドをしません。
蜂蜜を採る箱ごとに味が違うはちみつを、敢えてそのまま瓶詰めしています。
(それぞれの瓶に、巣箱の違いを表すロットナンバーが入っています)
自然のものをそのままに。
愛好家の方には、この方針が支持されているそうです。
販売されているはちみつは、決して安くはありません。
でも、試食で味を確かめたお客様が、品質の違いに納得されて、購入されるのだとか。
「大学は美味しい!」フェア等でいま大学の食品が注目される背景には、食の安全性や品質に対する消費者のこだわりがあると思います。
玉川大学のはちみつも、そんな大学への信頼を裏切らない製品と言えるでしょう。

↑鹿児島大学が扱っているのは、大学オリジナルブランド焼酎「天翔宙」です。
■「天璋院篤姫ゆかりの酵母による大学ブランド焼酎を開発」(鹿児島大学)
■「優良ふるさと食品中央コンクール「新製品開発部門」で大学ブランド焼酎「天翔宙」が農林水産大臣賞を受賞」(鹿児島大学)
鹿児島大学農学部焼酎学講座の高峯准教授が、今和泉島津家の別邸跡の土壌から採取、培養して得た酵母、その名も「篤姫酵母」。
これを用いた焼酎の生産にあたったのが、鹿児島大学が開講している社会人向け教育プログラムを一年間受講し、さらに社会人大学院生として焼酎学講座で研究を続けていた地元の焼酎メーカー社長、大山修一氏です。
髙峯准教授の指導の下、大山氏による酵母実用化の研究途上で生まれたのが、「天翔宙」だというわけです。
焼酎メーカーの現役社長が、大学院でアカデミックな研究を行っているというのも珍しいケースだと思いますが、その研究成果をご自身の会社が商品化するというのも、ユニークですね。
産学連携の形として、面白い事例。
大学発食品の中でも、非常に珍しい一品です。

↑お酒では、この大学も外せません。
他の追随を許さないワイン・ラインナップを誇る、山梨大学です。
(過去の関連記事)
■山梨大学 ユニークなワイン人材育成事業
ブドウの産地でもある山梨。
それもあってか山梨大学はワイン研究に非常に力を入れており、地域の産業と連携しての人材育成にも熱心です。
大学としても、オリジナル・ワインの開発・販売に力を入れています。
気になった方、ワインの購入方法は以下にありますので、よろしければどうぞ。
■「山梨大学ワイン購入方法」(山梨大学)
しかし!
今回の目玉はワインそのものではなく、↓こちらです。
「Dr.ヤナギダ」のキャラクターが愛らしい、「大豆で作った飲むヨーグルト」。
これもれっきとした、山梨大学でのワイン科学の研究成果。
ワイン酵母の研究がベースになって作られたヨーグルトなんですね。
大学発の研究にはしばしば、「技術の意外な応用」という例が見られます。
例えば、工学部の発砲技術を応用した山形大学の米粉100%パン「新ラブライス」などもそうでしょう。
長崎大学の「バラフ」も、元々は食用の研究ではなく、塩害対策に持ち込まれたもの。
基礎研究が思わぬ製品に応用展開される様子は、学術研究の、また不思議な魅力を感じさせます。
そして……。

↑会場に、山梨大学ワイン科学研究センター長の柳田藤寿先生、ご本人がいらっしゃいました。
取材をお願いしたら、POPの前で写真撮影に応じてくださいました。
ありがとうございました。

↑弘前大学のブースで、来場者の皆様にりんごジュース「医果同源」の説明をされているのは、弘前大学農学生命科学部の城田安幸先生。
単に珍しいとか、美味しいとかというだけでは、大学らしさがない。
……という信念のもと、「医果同源」が生まれるまでの研究過程や、研究の成果などについて、いつもわかりやすく説明されています。
難しい内容を、誰にでもわかりやすく伝えるというのは大変なことですが、城田先生のそれはもはや、みの○んたレベルと言っていいでしょう。
「大学は美味しい」フェアでは毎回、「医果同源」のブースに人だかりができているのですが、先生の説明の技にも、ますます磨きがかかっています。

↑最後にご紹介したいのが、お茶の水女子大学。
前回に引き続き、食物栄養学科の学生さんが中心となって活動しているサークル「Ochas」による出展です。
普段から学内外で、「食」を中心にしたコミュニケーション活動をされている学生の皆さん。
取り組み内容も素晴らしいのですが、説明や展示の仕方も工夫されています。


ブースの学生さん全員が、
「私たちの商品について何でもお答えいたします」
……という名札を着けて立っている点も、毎回感心させられます。
また、ありそうで他にない工夫が、↓これ。

そう、賞味期限表示。
大学発の食品は、大手の食品メーカーによる商品とは違う、素材や製法へのこだわりを打ち出しているものが多いのですが、だからこそこうした点は気になるところ。
安心、納得を得てもらう上で、大事な情報です。

↑こんな案内もありました。
「食」を通じて、普段から様々な人と、様々なコミュニケーションを行っている学生の皆さんだからこそ、こうしたところにも気がまわるのでしょう。
そんな「Ochas」らしい取り組みで、目を引いたのが↓こちらです。


↑食育教材パネルシアター。
「パネルシアター」というのは、幼稚園や学校で、教育の一環として用いられている表現。
Youtubeでパネルシアターと検索していただければ、「あぁ、こういうのか」とおわかりいただけると思います。
上記は、子どもに食育を行いたいという場合に使える、パネルシアターの素材なんです。
食育基本法の成立もあり、「食育」は近年、特にその重要性が指摘されています。
大学や大学生が教育や研究、地域貢献といった点で、食育に関わることも少なくないでしょう。
「大学は美味しい」フェアのような場で、そういった取り組みを紹介するのも、意義のあることだと思います。
食を総合的に考え、具体的に社会に対してアクションを起こしている「Ochas」学生の方々から、学ぶことはたくさんありそうです。
以上、第3回「大学は美味しい!!」フェアのレポートを、3回にわたってお送りしました。
前回も書いたのですが、回を重ねるにつれ、各大学の展示や説明のレベルが上がっているように感じます。
「食」という切り口で、一般生活者が大学の研究や教育に触れられるという、この「大学は美味しい!」フェア。
一般生活者に対して研究成果を語る機会が毎年ある。そのこと自体が、各大学の人材育成に一役買っているという面もあると思います。
個人的には、ぜひ今後も、こうした取り組みは継続的に行っていただきたいです。
ただ一方で、あまりに注目されすぎているからでしょうか。
「これは大学の研究成果と言えるのか?」、「ただの地元の特産品では?」と感じさせてしまうような製品も、いくつか見受けられたように思います。
商品の背景となる研究について質問しても、「いや、私は業者でして、ご説明はできません」と言われてしまうブースも、ありました。
確かに世の中を見れば、大学の研究成果がわかりやすくダイレクトに製品化されていることは稀です。
様々な経緯をたどり、どこまでが研究成果か、線引きがしにくいケースの方が、多いでしょう。
しかしだからこそ、「大学は美味しい!」フェアのような取り組みは、「楽しい!」「美味しい!」を前面に出しつつ、興味を持った方は学術的な背景や裏付けにも触れられる場であったら素敵だと、個人的には思います。
以上、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。