【本の紹介】『教学IRとエンロールメント・マネジメントの実践

2006年8月7日に、以下のような記事を書いておりました。

■Enrollment Management のススメ(1):「エンロールメント・マネジメント」とは
■Enrollment Management のススメ(2):なぜ今、エンロールメント・マネジメントが必要なのか
■Enrollment Management のススメ(3):日本に足りていない、「学内データの共有」

現在もGoogleで「エンロールメント・マネジメント」と検索すると、上位にこのブログの記事が出ます。

上記の記事は5年以上前のものですが、当時から大学業界の間では、既に

・データ(Evidence)を用いた大学経営。特に、IR(Institutional Research)の充実。
・学生募集時から入学後の教育、卒業後のフォローまで、生涯を通じて学生を分析し、サポートする体制

……の2点は、今後の日本の大学経営の、最重要トピックとして議論されていました。
桜美林大学の大学院「大学アドミニストレーション専攻」の授業を受けていたときに、エンロールメント・マネジメントについての内容は特に印象的でしたので、私も触発されて、上のような記事を書いたのだったと思います。

他の取り組みの多くがそうであるように、「エンロールメント・マネジメント」も、大学経営を高度専門化させているアメリカが、先行している取り組み。
リクルート社の『カレッジ・マネジメント』などでもよく特集されるので、大学関係者の中には、この言葉や概念を、よくご存じの方もいらっしゃることでしょう。
(アメリカまで視察に行かれた方も多いのでは)

アメリカで、長くIRに携わっておられる日本人の方のブログもあります。
日本ではよく知られていないIRの役割や実務について情報を提供してくれるということで、こちらも以前から、一部の大学関係者を中心に知られている存在でした。

■アメリカの大学政策事情

読売新聞社が「大学の実力」調査の結果を最初に公開した年、私はすぐに電話で問い合わせ、塾の高校3年生全員に、進路検討用の情報として配付しました。
これも確たるデータ、Evidenceに基づく進路選択の一歩になると思ったからでした。

■「教育ルネサンス:大学選び(3)教育・研究内容で評価」(読売新聞)

この調査は、その後、文部科学省によって教育の情報公開が義務づけられるという、画期的な出来事に繋がりました(学科ごとの数字が公開されていないなど、まだまだ不十分ですが)。

以上、ここまでは、過去の振り返り。

それから5年以上経ち、ようやく、ようやく日本でも、IRやエンロールメント・マネジメントといった言葉が、多くの大学で広く意識されるようになってきたようです。
少子化で、いよいよ大学経営の見通しが本格的に厳しくなってきたからでしょうか。

そんな中、これは大学関係者の皆様のお役に立ちそうだと思う本がありましたので、ご紹介します。
中退問題の解決に取り組む「日本中退予防研究所(NPO法人NEWVERY)」によるものです。

エビデンスに基づいた中退予防の「肝」を徹底解説!
『教学IRとエンロールメント・マネジメントの実践』2012年3月12日発売開始!

■『中退予防戦略』続編の制作決定!
中退率低減に成果を挙げた先進事例を徹底的に調査・分析しそのノウハウをまとめた『中退予防戦略』の発刊から1年、以来『中退予防戦略』は多くの高等教育関係者様からご好評頂いております。今回制作するのは教学IR(Institutional Research)に焦点を当てた、より実践的な中退予防のノウハウを解説する書籍です。

■書籍の特徴
教学IRとは、定量的・定性的なデータをもとに効果的な対策を立案・実行するための諸活動のことです。具体的には、学生の出席状況や高校時代の成績、単位取得状況などの教学情報から「中退予備軍」を特定し、その数字に表れる傾向やパターンからどのような中退予防策をとるべきなのかを解説します。中退率低減のために必要な情報である「どの学生層が中退予備軍なのか」「それぞれの学生層に対しどのようなアプローチをするか」がサンプルデータの解説を通して簡潔に示された構成です。

また、前作『中退予防戦略』と同様に、中退率低減に効果のある取り組み・特徴的な教育プログラムの事例なども豊富に収録。「対策を行なっているのに効果が上がらない」「どんな対策を行うべきかわからない」とお悩みの高等教育関係者様にとって、文字通り「明日から使える」実践的な書籍となっております。

■書籍概要
【タイトル】  『教学IRとエンロールメント・マネジメントの実践』
【項数】    B5判・約200ページ
【価格】    10,500円(税・送料込)
【制作】    日本中退予防研究所
【発行元】   NPO法人NEWVERY

【購入方法】
日本中退予防研究所公式HPから
下記ファイルをダウンロードし「ご注文書」に必要事項をご記入の上、
FAX:050-1071-8324までご送付ください。

ご注文後、当研究所がご注文用紙の「ご注文確認欄」を記入し、
お客様にご注文用紙を返送した時点でご注文は完了となります。

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【目次】

●はじめに
・情報という観点における環境の変化
-大学の情報の「世界基準」への対応
-改革に必要なツールとしての「教学IR」

●第一部 教学IR解説
・イントロダクション
1-1.高等教育機関を取り巻く環境の変化
1-2.IRとは
1-3.IRのプロセス

・Step1.「誰が」「いつ」
1-4.全学での中退率
1-5.学科・コース別中退率
1-6.入試形態別中退率
1-7.高校タイプ別中退率
1-8.高校評定平均別中退率
1-9.高校欠席率別中退率
1-10.中退者の単位取得状況
1-11.中退者の休学・留年動向
1-12.学生相談室の利用状況

・Step2.「どのようにして」「なぜ」
1-13.学生満足度と中退率の関係
1-14.退学申請書の分析
1-15.多次元分析

・Step3.仮説検証・評価
1-16.学生インタビュー
1-17.対前期比分析
1-18.予算実績比較分析

●第二部 教育改革実践例紹介
・イントロダクション

・大学マネジメントの実践例
2-1.福岡工業大学
2-2.金沢星稜大学

・特徴的な教育プログラムの実践例
2-3.愛媛大学
2-4.宮崎国際大学

・IRと中退予防の実践例
2-5.日本福祉大学
2-6.松本大学

●終わりに
※内容は予告無く変更になる場合もございます。あらかじめご了承下さい。

以上、日本中退予防研究所の方からいただいた情報を、そのまま引用させていただきました。

日本での様々な取り組みが事例として蓄積され、このような本が次々に出てくること自体、少しずつではありますが、日本の大学経営の高度化を感じさせるなぁと思います。
以前はエンロールメント・マネジメントだの、IRだのと周囲に話しても、「へぇ」としか言われないことが多かったのに。

大学行政管理学会などでも、IRやエンロールメント・マネジメントに関する研究は進められています。
それに加えて、こうしたシンクタンクのような支援組織が、リサーチに基づくサポートを行ったり、このような形で広く情報を共有していくというのは、日本の大学運営に関わる方々にとって、喜ばしいことではないでしょうか。

以上、ご紹介でした。
ご興味がある方は、職場などでご相談の上、取り寄せてみてはいかがでしょうか。

個人的には、この本を取り寄せ、それをもとに学内で勉強会を行う、という使い方をオススメします。