第3回「大学は美味しい!!」フェア(2)地域とマーケットを繋ぐ

そろそろイベントのことが、皆さんの記憶から消えてくる頃……。
そんな時期にこそレポートをアップし、イベントについての整理をはかるマイスターです。

■第3回「大学は美味しい!!」フェア(1)初参加大学の、ユニークなアプローチ

↑というわけで前回に引き続き、第3回「大学は美味しい!!」フェアの様子をレポートします。

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↑宇都宮大学では、農学部附属農場で生産された様々な食品を販売されていました。

写真の皆様が持っているのは、附属農場産の生乳を使用したチーズ各種。
牛のストレス軽減の研究をもとにしたもので、乳質が非常に高いのだそうです。

特にユニークなのは、「モッツァレラチーズのたまりづけ」。
マイスターも購入し、自宅で楽しませていただきました。
料亭などで出しても人気が出そうな、絶妙のお味です。

ちなみにこの宇都宮大学農学部附属農場、年間を通じ、地域貢献の一貫として生産物の販売を行っているようです。その種類の豊富さから、農場の教育・実習活動の充実ぶりが感じられます。

■宇都宮大学附属農場<農場生産物販売>

さて今回、本当に、料亭で扱われている大学発食品を発見しました。
それが↓こちら、水産大学校の「雲丹明太子」です。

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レイアウトもおしゃれ。

この雲丹明太子、その名の通り明太子にうにを和えた贅沢な一品ですが、それだけではありません。
ポイントになっているのが、水産大学校が地元メーカーと共同開発した、うに魚醤。
このうに魚醤に漬け込んで作ってあるのです。

(参考)
■「共同開発の「うに魚醤」 下関「小川うに」が販売」(山口新聞)

下関の料亭・桂月の方が、このうに魚醤の味を知ったことが、「雲丹明太子」開発のきっかけでした。

■「桂月」

こちらの桂月は、料理を供する際に古伊万里を使われるような料亭。
当然そこで作られる料理は、あらゆる面で高い水準をクリアしていなくてはなりません。

こちらの桂月は、単に研究成果の目新しさなどに飛びついたわけではなく、うに魚醤の味の素晴らしさから、共同開発に乗りだされたわけです。
これは、非常に大事なポイントです。

大学発食品の多くは元々、外部で販売をし、利益を上げることを目的としているわけではありません。
しかしだからといって、意義のある研究なのだから味は二の次でも良いかというと、そんなことは決してないですよね。食に関わる研究である以上、何らかの形でいつかは消費者と関わりをもつわけです。

意義ある研究成果を、どのように市場に出回らせるか。
これこそ多くの研究者が取り組んでいる課題であり、その点で水産大学校の「雲丹明太子」のような事例は、参考になる部分が多いのではないでしょうか。
(そもそも、この「大学は美味しい!」の企画主旨は、そのあたりにありますし)

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↑当日はなんと下関から桂月の女将さんが販売の現場に駆けつけ、開発された原田教授と一緒に、多くのお客様に製品をご説明されていました。

ところで水産大学校の原田先生からは前回に引き続き、興味深いお話をお伺いすることが出来ました。
他大学のブースには学生の方々が販売や説明に立たれていますが、水産大学校のブースにいらっしゃるのは、先生方だけ。
その理由ですが、(国立大学法人とは異なる)独立行政法人であるため、組織のルール上、学生の旅費が出せないのだそうです。

これは、非常にもったいない話。こうした現場に立つことは、学生の皆さんにとっても大きな教育効果を生むでしょう。下関での教育・研究成果が、マーケットに対してどのように関わっているかを体感する貴重な機会でもあります。
水産大学校のためにも、ぜひ学生の方々が関われるよう、ルールの方を柔軟にしてあげるべきと思うのですが、どうなのでしょう。

さらにお話を伺うと、それどころか事業仕分けでは「水産大学校が廃止されたら、国民はたちどころに何が困るんですか?」と、言われてしまったそうです。
残念な話ですが、「しかし、私達大学校の方のアピール不足も原因の一つ」と原田教授。だからこそ、市場に出回る食品や、こうしたイベントの機会を通じて、ちゃんと教育や研究の成果が伝わるように努力をすることが大事とお話されていました。
これは水産大学校に限らず、すべての大学に言える話かも知れませんね。

そんな背景もあってか今回は、展示・販売ブースと同じ会場内に、各大学による講演コーナーが設けられていました。

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美味しい食べ物に舌鼓を打ちつつ、その食品が生まれた背景や、研究上のポイントなどについて話が聞ける。まさに「食の学園祭」にふさわしい、アカデミックで楽しい空間です。
実際、年齢層などにかかわらず、通りすがりのお客様が結構、足を止めて聞いておられました。

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↑こちらは、日本大学国際関係学部・金谷ゼミのブースです。

学生の皆さんが主導して地元の企業と連携し、地域活性化につながる様々な商品を企画・開発されている金谷ゼミ。毎回、「大学は美味しい!」フェアに参加されている名物ゼミです。
商品の売り上げから、カンボジアで給水塔を建てる資金が捻出されており、まさに「自分」と「地域」と、遠く離れた地とをつなげる活動を実践されています。

今回の目玉は、「た~んと富士山」。
富士山周辺地域の食材をたっぷり使ったお弁当で、地域活性化にもなり、また食材を通じて地域を知るきっかけにもなります。

↓マイスターも、その日の自分の昼食用に購入しました。

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お弁当の包装に、それぞれの食材を紹介するイラストや、金谷ゼミの紹介文などが描かれていて、学生さん達の工夫があふれる仕上がりとなっています。商品開発の様々な工程に関わる中で、学生さん達にとっても様々な学びが得られていることと思います。

なお配達エリアには限りがあると思いますが、共同開発にあたった地元企業では、仕出し弁当としてこの「た~んと富士山」の注文を受け付けています。非常に美味しいお弁当ですので、静岡にいらっしゃる際にはぜひどうぞ。

■「静岡県富士宮市の大富士給食【たーんと富士山】」(給食弁当・仕出し弁当・積み込み弁当のさくらふじ)

引っ張るようですみませんが、まだご紹介できていない取り組みがありますので、再び次回に続きます。
以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。