マイスターです。
今日は、ここ一週間ほどの教育ニュースの中から、いくつかを選んでご紹介します。
【ついに公開が義務化?】
■「中退率、在学数、入試別入学者…文科省『大学は情報公開を』 」(読売オンライン)
文部科学省は5日、国公私立大学に公表を義務づける教育情報の項目を盛り込んだリスト案を中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)大学分科会の部会に示した。5分野、計17項目からなり、大学側が積極公表してこなかった「中途退学(中退)率」や「在学者数」などが含まれた。受験生らの指標にしたい考えで、さらに項目を精査し、年度内の大学設置基準の改正を目指す。
リストで示されたのは、教育の質を向上させるために大学が積極的に公表すべきと、文科省が判断した情報で、「教育」「学生」「組織」「経済的枠組み」「学習環境」の5分野。
例えば、「学生」の分野では、「中退率」が盛り込まれた。中退率は、入学後の進級の厳しさを示す一方、不本意入学の多さなどにもつながるデータで、経営に直結するため大学が出したがらないのが実情だ。
このほか、収容定員との差し引きで定員割れの実態が分かる「在学者数」、推薦入試やAO入試での入学者数が分かる「入試方法別の入学者数」など、リストには大学側が公表に消極的だった情報が含まれた。
(上記記事より)
重要な指標であるはず……にもかかわらず、長く実態が明らかにされてこなかった、大学の退学率。
昨年より、読売新聞が「大学の実力」と題した大規模な調査を行い、初めて明らかになったと言っていいでしょう。
(過去の関連記事)
■読売調査「大学の実力」(1):大学の教育方針を知るには、卒業率や退学率の数字が必要
■読売調査「大学の実力」(2):今後は自主的な情報公開が望まれる
■読売調査「大学の実力」(3):報道の後、大学内で何が起きたか?
読売新聞「大学の実力」 今年は「入試方式別入学者数」も調査
それが、大学設置基準の改正により、全大学に公開を義務づけることになる見通し。
「大学の実力」調査結果を塾生に配付し、出願先選びの場で活用している立場としては、大歓迎です。
早稲田大学をはじめ、退学率の公開を拒否し続けていたいくつかの大学の実態も明らかになることでしょう。
退学率は低いから良い、高いから悪いといった、単純にランク付け可能な数字ではありません。
ただ、大学がwebサイトやパンフレットでPRしている教育システムの実情を理解する上で、参考になる重要な指標には違いありません。
こうしたデータを知ることで、大学の姿がより立体的に浮かび上がってくることと思います。
唯一「結局、大学が自らの意思で公開した事例はほとんどなかった」ということだけが残念です。
ところで以前の記事でも書かせていただいたのですが、こうした数字の公開が義務化される際には、「学科単位」での数字を公開することが絶対に必要です。
実際、退学率や標準年限卒業率、入試種別の割合などは、学科によってかなり違うので。
留年の実態などは、在籍している教員の考え方による部分も大きいと思いますし。
また通信教育部や夜間部を持っている大学の場合、退学率などの数字にも影響が出るはず。
大学全体の数字は、ある程度の参考はなるけれど、実態を正確に掴む指標にはなりません。
ですから、学科別の数字である必要があります。
【各大学のインフル対策をまとめたサイト。】
■「大学のインフル対応のサイト開設 10年度入試で」(ZAKZAK)
大学入試センターはこのほど、2010年度の大学入試で、新型インフルエンザ対策をする国公私立大と短大のさまざまな情報を集めた、インターネットのサイトを開設したと発表した。
(上記記事より)
各大学の、新型インフルエンザに対する入試での対応方針。
色々とニュースが出ていますが、このたび大学入試センターが、情報をまとめたページを開設してくださいました。
受験生の方にとっては、便利だと思います。
受験前にはチェックしておくと良いでしょう。
■「新型インフルエンザ対応情報」(大学入試センター)
センターに情報提供があったものを掲載しているようですので、「ウチの大学が載ってないぞ!」……という大学関係者の方は、ぜひセンターにご連絡差し上げてください。
【就活商法にご用心!】
■「“就活商法”4年で4割増 消費者庁、大学に注意喚起要請」(47NEWS)
「就職に役立つ」などとうたい、大学生に英会話教室や講座などの契約を強引に結ばせるトラブルの相談が4年間で約4割増えていることが4日、国民生活センターの調べで分かった。
厳しい雇用情勢を背景に2009年度も昨年度を上回るペースで増加。契約額も高額で、勧誘を断ると「決断力がない。このままでは就職できない」「やる気をつけてあげる」などと学生の不安な心理につけ込む悪質な“就活商法”に対し、消費者庁は文部科学省を通じて各大学に注意喚起の対応を要請した。
(上記記事より)
不安や不満を持っている人に製品・サービスをPRするというのは、様々な業界で普通に行われている手法。
でも、
会社説明会の帰りに呼び止められ、アンケートに回答。後日電話で「就職に役立つ話が聞ける」と呼び出され、2度にわたり英会話教室の勧誘を受けた。ためらうと「もう大人なんだから自分で今決めて」「バイトをすれば払える」などと説得され、約60万円の契約をした。
社会人になるのを前に「大人なのになぜ親に相談するのか」「あなたは意志が弱い。逃げている」などと挑発したり、自己啓発セミナーへの参加を断った女性に「やる気が落ちているね」というメールを何度も送ったりするなど、学生の心の揺れを巧みに突く勧誘が多い。8時間しつこく説得するケースもあった。
(上記記事より)
……なんてのは、PRを越えてもはや脅迫の域では。
確かに、ひどいですね。
「これを買えないなら就職できない」……なんてことは、常識的に考えて、ないです。
学生の皆さん、こういった強引な手法にお気をつけください。
【学生も反撃。】
■「『飲めば美巨乳』『10センチ背伸びる』 大学生『Gメン』誇大広告発見」()
「飲めばあなたも美巨乳に!」といった広告を調査してみたところ、効果を示す根拠は見つからなかった――。埼玉県は県内8つの大学生と連携し、インターネットや雑誌に掲載されている広告を調査、誇大広告を出していた東京都内と県内の9社に、業務停止命令などの処分を出した。
埼玉県消費生活課は誇大広告による被害を無くすため、2007年度から県内の大学と連携。各大学の生協の学生委員を10人ほど選び調査に参加させた。08年度は埼玉大学、淑徳大学、大東文化大学など8大学の約80人が参加。その結果、誇大広告が22商品に見つかり、特定商取引法違反で09年11月9日に8社に3カ月の業務停止命令、1社に指示処分を出した。同法で同時に9社を処分するのは全国初だという。
(上記記事より)
一方こちらは、人をだます広告を、大学生の協力のおかげで処分できたというニュース。
(過去の関連記事)
・大学の協力を得て、ネット広告の不当表示を調査 東京都の取り組み
東京都の同様の取り組みは、以前の記事でご紹介させていただきましたが、埼玉県でも行われているのですね。
着々と成果を上げていらっしゃる様子。
学生さんにとっては、広告や法律について学ぶ機会であり、社会貢献の場でもあります。
こうした取り組み、全国に拡がっていくといいですね。
【新たな学問対象。】
■「米大学に『ヒップホップ』課程が登場 実技と理論で1年半 」(CNN)
ミネソタ州セントポール(CNN) 大学生に専攻を尋ねて「ヒップホップ」という答えが返ってきたら、驚く人が多いだろう。当地のマクナリースミス音楽大に、米国内の大学で初めてとされるヒップホップ音楽のコースが登場し、学生たちが実技と理論の習得に励んでいる。
ヒップホップ課程は今年度から設置された。1年半で修了し、その後引き続き音楽学士号などの取得を目指すことも可能だ。
(略)同大のハリー・チャルミヤ学長によると、ヒップホップ課程の設置には反対意見もあった。ニューヨークの貧困地区で生まれ、ギャング文化などを連想させるヒップホップを大学で学ぶというのは、「発想自体が矛盾している」と指摘されたこともある。だが、「ヒップホップは一過性の流行ではなく、重要な芸術形式のひとつ」と、同学長は考える。「その発祥や社会への影響、過激な歌詞に込められたメッセージなど、研究の対象はたくさんあるはずです」
また、ヒップホップ課程でドラム演奏を教えるケビン・ワシントン氏は、「今ではひとつのジャンルとして確立されたジャズ音楽もヒップホップと同様、街の黒人たちの間から生まれ、学校で教えることには当初批判があった」と指摘する。
(上記記事より)
以前の記事で、ビートルズを学ぶ修士課程をご紹介したことを思い出しました。
(過去の関連記事)
・「ビートルズ修士号」から思うこと
日本でも、同じようなことってありますよね。
例えばマンガやゲームを学んだり研究したりする学部学科は、今ではすっかり市民権を得ていますが、当初は賛否両論があったと思います。
学術研究の対象としてふさわしくない、と考えた人も少なくなかったでしょう。
時代の変化に合わせて、大学が扱う分野も拡がっていく。
ヒップホップも、まさにそんな事例の一つですね。
以上、ここしばらくのニュースクリップでした。
最近は一週間に一回、5つ程度のニュースをまとめてご紹介しています。
でもよく考えてみたら、「毎日、1個ずつ紹介すればいいんじゃないか……?」と、気づきました。
なんてこった、こんな単純なことに、気づかなかった。
というわけで、短めになると思いますが、これからはなるべくニュースは個別に、頻度を上げてご紹介していきたいと思います。
マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。