ニュースクリップ[-10/21] 「ヘリパイロット養成へ 帝京大がコース開設」ほか

マイスターです。

たまたま、↓こんなページを見つけました。

■「【1種事務系】若手職員との懇談会」(文部科学省)

文部科学省では、入省1~3年目の若手職員との懇談会を少人数で行います。
通常の説明会では聞きにくい業務に関する疑問や不安なども、ざっくばらんな雰囲気の中で気軽にきくことができますので、是非ともご参加下さい。
大学院生、大学1・2年生の方の参加も大歓迎です。
なお、事前予約制といたしますので、定員に達し次第、受付を終了させていただきます。予めご了承ください。
(上記記事より)

こうした取り組みをされているのですね。
ご興味のある方は、参加されてみてはいかがでしょうか。

さて今日も、ここ一週間ほどの教育ニュースの中から、いくつかを選んでご紹介します。

【操縦技術で救急医療の担い手に。】
■「ヘリパイロット養成へ 帝京大がコース開設 栃木」(MSN産経ニュース)

帝京大学宇都宮キャンパス(宇都宮市豊郷台)は19日、ヘリコプターのパイロット養成コースを、平成22年度から理工学部航空宇宙工学科内に開設すると発表した。ヘリパイロット養成コースの開設は、4年制総合大学では日本初という。
同学科によると、養成コースの入学定員は、学科定員65人のうちの20人。来年度は、既に入学試験の一部が行われているため、合格者の中から来年、選抜試験を行う。
養成コースでは、2年終了までに自家用操縦士免許を、3年終了までに事業用操縦士免許の取得を目指す。さらに、EMS(ドクターヘリ)のパイロットを目指す学生には、EMS演習を開講し、医学部教員から救急医療現場の実情や基礎知識を学ぶ。
実習は、茨城県下妻市の下妻ヘリポートで、大学が購入したヘリコプター5機を使って行う。
(上記記事より)

航空機のパイロット養成課程は、東海大学などいくつかの大学が開設していますが、ヘリコプターのパイロットに着目したコースは、四年制総合大学としては全国初だそうです。

■「航空宇宙工学科紹介:航空宇宙工学科に「ヘリコプターパイロット養成コース」が誕生!」(帝京大学)
■「帝京大学理工学部 航空宇宙工学科に国内初「ヘリコプターパイロット養成コース」が誕生」(大学プレスセンター)

背景にあるのは、操縦免許を持っている団塊世代の退職と、救急医療などにも関わる「ドクターヘリ」などのニーズの拡大。国も現在、ドクターヘリ導入促進事業を推進しており、パイロットの育成には需要があるとの判断でしょう。
帝京大学グループは、医療系の教育研究機関を参加に多く抱えており、そうした組織との連携も活かされそう。学園の特色を出した取り組みと言えるのではないでしょうか。

なお、このコースの一期生になることを希望する学生には、追加の学費が必要になるそうです。
他大学の航空機パイロット養成課程は、一般と比べて学費がかなり高いのが特徴。上記の「ヘリコプターパイロット養成コース」の学費がいくらなのかは、気になるところ。
民間の航空機パイロットの給与水準は比較的高いので、元は取れると思うのですが、ヘリコプターの場合、そのあたりはどうなのでしょうか。

【公立大学としての存続をかけて再編?】
■「大阪府立大、理工系に特化 橋下知事が“廃止案”、生き残りかけ学部再編検討」(MSN産経ニュース)

大阪府の橋下徹知事が存廃も含めた抜本的な見直しを検討している大阪府立大(堺市中区)が、既存の7学部を4学部に再編する改革案を検討していることが20日、分かった。規模をスリム化して理工系に特化した専門性の高い大学を目指すという。府が支出している交付金も年間20億円程度削減できる見通しで、交付金カットもちらつかせる橋下知事に独自の改革をアピールしたい考えだ。
府立大には現在、工学部や理学部、経済学部など7学部がある。このうち経済学部など3学部は、同じ公立大の大阪市立大(大阪市住吉区)にも類似した学部が存在し、橋下知事から「違いが分かりにくい」と指摘されていた。
計画では経済学部や人間社会学部などを見直して理工系、生命環境系、健康保健系、現代システム科学系(いずれも仮称)の4学部に再編する。試算では、大学院生を含む約7900人(今年5月現在)の学生が1千人程度、約720人(同)の教職員も70人程度削減できる見通し。このことにより、府からの運営費交付金も今年度の108億円から約90億円まで圧縮できるという。
また、学部再編に伴い、府の出向職員約180人の府への引き揚げも検討している。
(上記記事より)

財政立て直しが大きな課題となっている大阪府。
そんな中、「存廃も含めた抜本的な見直し」という橋下府知事の様々な発言もあり、何かと話題になる大阪府立大学です。

(過去の関連記事)
・大阪府立大学 入学式での橋下府知事の「あいさつ」が話題に?
・「大阪府立大学の買収 複数の私大が検討?」

運営を引き受ける法人があれば私立大学にするという案も出されており、既に複数の学園が興味を示しているという話も報道されています。

今回の「理工系特化」案は(知事ではなく)大学側から出されたもののようですが、その背景として、公立大学として存続させてほしいという大学関係者の方々の思惑もあるのでしょう。
ただ、言わば「切り捨て」の立場になる人文・社会科学系の教員の方々の反対も、当たり前ですが予想されます。

【特別飛来学生。】
■「雑記帳:トキに『学生証』 新潟大学」(毎日jp)

新潟大学は、昨年9月に新潟県佐渡市で放鳥され、この夏から同大五十嵐キャンパス(新潟市西区)近くに定着しているトキに「特別飛来学生証」を発行した。後期が始まる10月1日付「入学」扱い。
(略)所属は「自然再生学」。近くの「ねぐら」は毎夕、数十人が観察に訪れる人気ぶり。トキの野生復帰を支援・研究するプロジェクトを進める同大は「ぜひ講義を受けに来て」とラブコール。
(上記記事より)

大学の講義を聴く猫が中国で話題だというニュースを、先日ご紹介させていただきました。
一方、日本では、トキが「特別飛来学生」として大学に入学したようです。

新潟大学では、「超域朱鷺プロジェクト」が進行中。
同プロジェクトへの注目度も高まっていくことが期待されます。

■「超域朱鷺プロジェクト」(新潟大学)

【どのくらい返上すれば損失分に足りる?】
■「ハーバード大学は基金運用担当者の賞与返上額公表を-卒業生グループ 」(ブルームバーグ)

米国で最も豊富な資金力を有する学術機関であるハーバード大学の卒業生のグループは、同校の寄付基金が昨年、過去最大となる100億ドル(約9100億円)の損失を出したことを受けて、内部の運用担当者が返上した賞与額の公表を求める意向を明らかにした。
1969年の卒業生で構成するグループは同大学のドリュー・ファウスト学長にあてた20日付書簡で、「ハーバード大学は最高水準の従業員報酬を公表する法的義務があるのだから、報酬の回収についても公表すべきだ」との考えを示した。
ハーバード大学の寄付基金を15年間運用していたジャック・メイヤー氏は同グループからの報酬批判を浴びるなかで、2005年に退任した。同グループは03年、ローレンス・サマーズ学長(当時)にあてた書簡で、給与があまりにも高いとして初めて報酬契約を批判した。同大学の先月の発表によると、寄付基金は6月末までの1年間で30%減の260億ドルとなった。
(上記記事より)

ハーバード大学は、世界最高水準の評価を受けるアメリカの大学。
その教育研究が、圧倒的な基金の運用によって稼ぎ出される、莫大な運用益によって支えられていることも、よく知られています。

ハーバード大学がそんな強力な経営体制を築き上げた裏には、非常に腕のいい、ファンドマネージャーがいました。
その名は、ジャック・メイヤー氏。ハーバード大学基金を、1990年の47億ドルを、2005年には259億ドルにまで拡大させました。これは大変な運用成績で、ハーバード大学に対する貢献度は非常に大きいと言えるでしょう。
しかし彼のこの働きに対する報酬額に、批判が集まりました。

こうした運用担当者の報酬は、基本的に「成果報酬」です。ジャック・メイヤー氏とそのチームは、1990年の契約当時にはだれもが想定していなかったような規模で成果を上げたので、結果として、支払われる報酬も膨大になってしまいました。
基金の運用を担当する責任者数人の年収が、なんと数十億円にも達していたそうです。

日本でもアメリカでも、基本的に大学は非営利組織ですから、上記の記事にもあるように、この高額な報酬に対して批判が寄せられました。結局、ジャック・メイヤー氏は辞任することになったのです。

非営利組織としての考え方と、「とは言え、彼ほど大学に利益をもたらす人はそうはいない」という事実。日本でもアメリカでも、このあたりは、どう考えるか難しい問題のようです。

そして今回は、基金運用で損失を出したということで、運用担当者が賞与を返上。
同大卒業生のグループが、その金額を公表するよう大学に求めているという話題です。
アメリカの大学、特にハーバード大学の基金運用担当チームは、その業界でもプロフェッショナルの集団だと言われていますが、この未曾有の金融不況では、さすがに無傷とはいかなかったようです。

(過去の関連記事)
・アメリカの有力大学も、資産運用で大きな損失
・経済の状況によって影響を受ける大学業界 (アメリカの場合)
・ニュースクリップ[-9/14]より:「米ハーバードとエール大学の基金、運用成績悪化で昨年資産規模が約30%減少」(ロイター)

さきほど成果報酬と書きましたが、今回のような場合でも、それなりに高い報酬をもらっていそうな気はします。今回の返上額がどのくらいなのか、そもそもいくら稼いでいるのか、確かにちょっと気にはなります。

そして同時に、↓こんな話題も。

【過去最高額の学費。】
■「米大学の学費、4%以上上昇 公私ともに過去最高に」(CNN)

米国の4年制大学の学費が、公私立ともに上昇し、過去最高額となったことが、米大学関連団体のまとめで明らかになった。私立で4.4%、公立で6%以上、上昇しており、物価と比べても上昇率が激しいと指摘している。
(略)2009年に高校を卒業して入学した学生の、1年分の学費は4年制私立大学で平均2万6273ドルとなった。公立大学では平均して、州内出身の学生が7020ドル、州外の学生は1万8548ドル、学費として支払う必要があるという。
また、4年制大学の学生のうち、約3分の1が税制優遇や返却不要の奨学金を受けていることがわかった。そのため、学生が実際に大学に支払っている額を平均すると、私立大学に在籍する学生で1万1900ドル、公立大学で1600ドルとなっている。
(上記記事より)

実際に支払っている学費の平均額を見ると、日本とあまり変わらないような気もしますが、奨学金や税制優遇を受けていない学生もいるわけで、全額支払っている学生にとっては、大変な額です。

大学の基金運用がうまくいかず、奨学金や学生サービスが削られる一方、学費は上がっていくという状況。不況とは言え、日本の感覚からすると、変動幅が結構大きく感じられます。
世界中から高い評価を受けるアメリカの高等教育システムの、ひとつの側面でもあります。

以上、ここしばらくのニュースクリップでした。

それでは今週も、お互いがんばりましょう。

マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。