ニュースクリップ[-9/7] 「戦後初の『理系脳』専門は問題解決学」ほか

マイスターです。

以前は日曜日にお届けしていたニュースクリップを、毎週、週の前半でお届けすることにしました。

というわけで久しぶりに、ここしばらくの教育ニュースの中から、いくつかを選んでご紹介します。

【戦後初の「理系脳」首相!?】
■「戦後初の『理系脳』専門は問題解決学」(AERA-net)

「10人の女性と順番にお見合いする。その中で一番すばらしい人にプロポーズする確率を最大にしたい。どうしたらいいか」
鳩山由紀夫が、客員教授を務める同志社大学の特別講義でよくする話だ。答えは、
「3人目までは見送って4人目以後これが一番という人にプロポーズすればいい」
というもの。最初の人で決めれば1割、最後の人まで待つとするとやはり1割の確率でしか、最高の人と出会えない。実はその間に「行動に踏み切る最少の人数」があって、この場合、3人見送れば、ほぼ4割の確率で10人中1番の人に結婚を申し込める、という。
これは、由紀夫の思考法の原点である、OR(オペレーションズ・リサーチ)、いわゆる「問題解決学」的思考法だ。
日本の政治史上、由紀夫ほどの「理系脳」が首相を務めたことはない。中央工学校卒の田中角栄、水産講習所卒の鈴木善幸も理・技術系といえないことはないが、その政治思考は由紀夫ほど「数学的」ではない。
(略)由紀夫は、都立小石川高校から東京大学に入学、工学部計数工学科数理工学コースで学んだ。その後、東大の大学院には進まず、国外留学を選んだ。米国カリフォルニア州の名門スタンフォード大で、当初は、電気工学を学んでいたというが、そこでめぐり合ったのが、当時、新しい分野だったORだ—-。
(上記記事より)

東京大学工学部からスタンフォード大学に留学し、「オペレーションズ・リサーチ(OR)」を学んだという鳩山由紀夫・民主党代表は、日本では極めて珍しい「理系首相」だという記事。
全文は先週の『AERA』に掲載されていました。

他に「理工系」政治家としてよく知られているのは、同じく民主党の菅直人氏。
東京工業大学理学部卒であるという事実は、厚生大臣の時の薬害エイズ問題への対応とセットで語られることがあります。
しかし日本では、理系の政治家の話は、確かにあまり聞きません。

(しばしば引き合いに出されますが、日本と真逆なのが中国。
指導的な地位にいる政治家の多くが工学系の出身です)

鳩山氏は、「政治を科学する」というのがモットーなのだとか。
そんな首相が誕生することで、どのような影響が出るのか、ちょっと興味深いです。

【天下り先は……。】
■「文科省天下り、3分の1が私学…省庁再編後もルート温存」(産経Web)

文部科学省から過去5年間に天下った幹部職員OB162人のうち、3分の1を超える57人が私学(学校法人)に再就職していたことが28日、産経新聞の調べで分かった。旧科学技術庁出身者らを除いた旧文部省の生え抜きに限ると、4割を超える高率だった。この調査結果に、識者らからは「旧建設省OBがゼネコンに天下るようなもの」と批判の声もあがっている。与野党各党は総選挙のマニフェスト(政権公約)に天下り規制を盛り込んでおり、文科省は天下りへの新たな対応を迫られそうだ。
(略)文科省は、各種の補助金で学校法人の経営健全化や設備充実をはかる私学助成を行っており、予算規模は年間4500億円前後にのぼる。私大設立や学部・学科新設の許認可権ももつ。少子化で私学は経営が難しくなっており、特に私大は学生集めのため、情報システムや住環境デザインなど既存の大学とは異なる目新しいテーマの学部・学科の新設に躍起になっている。
省庁再編前には国会で取り上げられたこともある旧文部省の私学天下りルートが、再編後も事実上温存されていた実態が明らかになり、天下り問題に詳しい国際基督教大の西尾隆教授(行政学)は「再就職の是非はケースごとに判断すべきだが、この数字は大いに問題がある。旧建設省OBがゼネコンに天下るようなもの。営利企業ではないと言っても、私学も補助金獲得をめぐり競争しており、経営難もあってお金絡みの意識が働く可能性がある。許認可権限をもつ相手先に行くのは、庶民感覚からみておかしい」と指摘。一方、文科省人事課は「もともと法律に制限がなく、問題はない」としている。
(上記記事より)

私学の学校法人が、文部科学省の天下り先としてずっと温存されている、という記事です。

肩書は事務方トップの事務局長が21人で最も多かった。
(上記記事より)

……とも。

人事システム上、事務の幹部層が中央省庁から派遣されてくる国立大学と違って、私学はたたき上げのスタッフが活躍できる……という話をマイスターは大学職員時代に色々なところで聞いたのですが、そうではない大学も少なからずあるようです。
受け入れる学校法人側に、どのようなメリットがある(あった)のか、詳しく知りたいところです。

ちなみに民主党のマニフェストには、以下のような一文が。

天下り、渡りの斡旋を全面的に禁止する。国民的な観点から、行政全般を見直す「行政刷新会議」を設置し、全ての予算や制度の精査を行い、無駄や不正を排除する。

現行の人事制度のままで天下りを全面禁止にすると、官僚のポストが大量に必要になり、かえって人件費が高くつく……という主張もしばしば耳にしますが、ではどのようなシステムだと最も無駄が無く、効率もあがるのか。
これこそまさに、オペレーションズ・リサーチの発想が必要な問題かもしれませんね。

結果によっては、私立大学の人事に影響が出るかもしれません。

【狙われる国立大学。】
■「『国立大学は警備が甘くて』 盗み繰り返した被告追送検」(asahi.com)

熊本県警は4日、福岡県筑紫野市二日市北4丁目、ウェブデザイナー三浦英行被告(44)=窃盗罪などで公判中=を四つの国立大学で起きた窃盗事件について窃盗と建造物侵入容疑で追送検したと発表した。「国立大は警備が甘くて入りやすかった」と話しているという。
(略)同署によると、三浦容疑者は、昨年5月から今年3月まで、全国2府28県の33大学で約50件(被害総額約1300万円)の盗みを繰り返したことを認める供述をしているという。
(上記記事より)

大学キャンパスを専門に狙う窃盗犯。
この手の報道、毎年のように見かけます。

特に国立大学は標的にされがち。
例えば3年ほど前にも、↓こんな記事がありました。

東北大学に忍び込み現金を盗んだとして山形県警に逮捕された58歳の無職男が、「全国の国公立大ばかりを狙い盗みを繰り返していた」と供述していたことが15日、分かった。判明分だけでも、約5年間に29都道府県36大学で計190件敢行。“成果”は総額約1000万円に及んだ。「私大より警備が手薄だから」と“志望動機”を語り、日本列島をまたにかけていた。
(略)侵入先は北海道大、東北大、埼玉大、名古屋大、九州大など、北から南まで津々浦々。手口は、深夜に建物の換気扇などを壊すなどの“裏口入学”だ。研究室の机などから現金や金券を盗んでいたが、中には研究室の引き出しから鍵を盗んで、同じ大学で十数回も盗みを繰り返していたケースもあったとか。
(略)「中肉中背で見た目はどこにでもいそうな普通の人。大学に入っては、職員のように装ってとけ込み、ウロウロしてひと気がなくなるのを待って犯行に及んでいた。国公立大を狙うのはクセであり得意技ですな」(同署)。被害のほとんどがなぜか理系だった。
(「国公立大だけ狙い1000万円!36大学から盗み行脚」(sanspo.com,2006年6月26日)記事より)

もともと大学キャンパスは、不特定多数の方々にオープンに開かれているケースが普通で、チェックなどもあまり厳しくありません。
研究に力を入れる国立大学の場合は特に、キャンパスの規模がもともと大きい上、キャンパスへの人の出入りも多いです。施設が老朽化していることもしばしば。
そのくせキャンパス内には、高価なパソコンをはじめ、貴重な機材などが無防備に置かれていたりします。

一回あたりの被害額が小さいこともあり、あまり抜本的な対策が打たれずにいるのかもしれませんが、「大学のセキュリティは甘い」という認識が、窃盗犯の間で広まっているのだとしたら、やっかいです。

【大ダメージ。】
■「『ずさん運用』神奈川歯大が告訴へ すでに損失52億円」(asahi.com)

学校法人神奈川歯科大学(神奈川県横須賀市)が投資ファンドで運用した資金のうち約66億円について、無断でファンドを解散するなどのずさんな運用があったとして、投資会社などに対し刑事告訴を検討していることが6日、学校法人や関係者への取材で分かった。すでに約52億円の損失を計上。最終的な損失は60億円を超える可能性がある。
捜査当局も背任容疑などを視野に法人幹部らから事情を聴くとともに、資料収集などを進めている模様だ。法人では6月末に理事8人が引責辞任。外部調査委員会を設置して、投資にかかわった理事らの責任についても調べている。同委員会の調査結果を受けて告訴の対象や容疑を詰める。
法人によると、投資は05年度から「減価償却引当特定資産」を原資に複数のファンドで始めたが、07、08年度で計約88億円の損失を出した。法人が投資内容を精査したところ、08年度までに東京、横浜、シンガポールの三つの投資会社を通じて行った計約66億円の投資で、ファンドが無断で解散するなどの不自然な実態が判明した。
(上記記事より)

サブプライム・ローンに端を発する米国発の金融危機では、私立大学が運用する資産も大ダメージを受け、色々と報道もされました。
しかし上記の神奈川歯科大学のケースは、どうやら単純な資産運用の失敗だけでもない様子。
なんだか穏やかではありません。

皆様の大学でも同じようなことが起きていないか、お気をつけください。

【再び人気に。】
■「米IT技術者の雇用不安を和らげる2つの調査結果が発表に」(ITpro)

企業の人事担当者150人を対象とした調査で,さまざまな職種の中で大学の新入生が手がける研究分野として最適と思うものを尋ねたところ,コンピュータ科学とIT(情報技術)が第1位に輝いた。第2位はエンジニアリング,第3位は医学/医療だった。
調査結果の発表資料で同社は次のように述べている。「米労働統計局の予測では,今後10年間で特に急増する職業としてコンピュータ科学者を挙げている。コンピュータ科学者と情報科学者の雇用は,2006~2016年の期間で22%増える見通し。ネットワーク・システムとデータ通信の分析に関しては,53%増と予測される」。
(上記記事より)

アメリカでは一時期、「ITバブル」という言葉も生まれ、IT・コンピューター科学分野の人材の人気が落ち込んだ時期もありました。
しかし昨今では、上記のように企業の人事担当者から、これらの選考が高い評価を受けているようです。

以上、ここしばらくのニュースクリップでした。

それでは今週も、お互いがんばりましょう。

マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。