大学職員の給与は高すぎる?(2):元・大学職員である企業人の意見です

マイスターです。

■大学職員の給与は高すぎる?(1):私大教連の資料がネット上で話題に

↑昨日の記事の続きです。

「京滋地区私立大学教職員組合連合」がサイトにアップロードした機関紙。
その中に、「09春闘に役立つ資料」と題して、有力私立大学の教員・職員の年収が掲載されていました。
そこには、45歳で一千万円を超えるケースがズラリと並んでいたため、「高すぎる」ということで、各所から批判の声が上がっているようなのです。

昨日も書きましたが、実際には、ほとんどの私立大学職員は、そこまでの給与水準ではないでしょう。
この資料に出ているのはいわゆる業界トップクラスの集客力(と、敢えてここでは表現します)を誇る大学群です。
しかしこの数字が早くも一人歩きし、一部では「私大職員の給料は高い」という話として受け取られている様子。

同じ業界でも、組織の規模や市場での競争力が違えば、給与だって違ってくる。これは、企業なら当たり前のことです。
私立大学は、補助金を給付されている「半分パブリック」な組織ですが、市場における競争力が大学によって大きく異なるのは、厳然たる事実。
どの大学も給与水準が同じだという印象を持つ方が多いのは、公務員イメージからの連想だと思われますが、私大職員は本当の意味での「公務員」ではないので、給与に差は付きます。

昨日の記事では、それが果たして正当な批判であるかどうかはさておき、「各所から指摘されることが予想される」批判のポイントを3つ、以下のように挙げました。

・補助金をもらっている組織だから / 非営利組織だから
・給与水準と、大学が提供しているサービスの水準が合っていると思えないから
・世間の水準と違いすぎているから

実際、今回の報道に反応して書かれたブログなどを拝見すると、批判的な方々はおおむね、上記いずれかの点を指摘されているようです。

では、仮に話を有力私立大学の職員に限ったとして、これらの批判は的を得ているのでしょうか。

「補助金をもらっている組織だから(非営利組織だから)」給与が高いのは問題なのか?

上述したように、その事業に対して様々な公的補助金を給付されているとしても、私立大学の教職員は公務員ではありません。給与の全額を、税金が負担してくれるわけではないです。
他より高い給与を設定して優秀な人材を集めるのも、逆に経営状況に応じて給与水準を引き下げるのも、基本的にはその学校の自由。
それに各種の公的補助金は基本的に、研究や教育など、定められた用途に合わせて使用することが定められています。必ずしも人件費と一緒にできるわけではありません。

上記のような点からマイスターは、「補助金や助成金をもらっているのに高給を取るのは許せない」という意見は、あまり的を得た指摘だとは思いません。

そして、ひとつ興味深いことが。
今回、私大教連の資料に書かれた、有力私大の「職員」の高給ぶりに批判が集まっていますね。
でもその一方で、隣に書かれていた同じ大学の「教員」の給与には、不思議とあまり批判の声はあがっていません。

実際には、「教職員」という言葉でまとめられるとおり、教員も職員も同じ学校法人が雇用するスタッフに違いありません。
「補助金を受け取る非営利組織だから」という理由で職員に高い給与を支払うことが許されないのなら、教員にも同じ理屈が適用されるはず。なのに職員にだけ批判が集まるのは、「大学教員が高給を取るのには納得する」からですよね。
公的な組織かどうか、補助金を受けているかどうかという点は、実は問題の本質ではないのだと思います。

そうなると、↓こちらの点に対する風当たりが強いのかな、という気もしてきます。

「給与水準と、大学が提供しているサービスの水準が合っていると思えないから」給与が高いのは問題なのか?

先日の記事でもご紹介した、「これでも大学職員のブログ」の記事には、たくさんのコメントが寄せられているようです。

■「これが有名私大の職員の年収だ!」(これでも大学職員のブログ -情報センター勤務中-)

興味深いのは大学教員や、嘱託職員、あるいは三流地方私大職員(と、ご自分で名乗られている)といった、「有名私大職員」以外の方々からの書き込みが、非常に多いこと。
職員擁護も含め、様々な意見が書かれていますが、「実際にやっている仕事に対する対価が高すぎる」という指摘が目立ちます。
大学教員が高給をもらうのはわかるが、職員の仕事ぶりがこの給与額に見合っているとは思えない、というストレートな不満を、自分のブログで書かれている方も結構いらっしゃる様子。
実際の大学関係者、それも職員を取り巻く方々からこうした声が上がっているのは、気になるところです。

「実は、こうした大学の職員は優秀だ」という声も、上記記事のコメント欄の他、あちこちで見かけました。
いまや有名私大職員の採用活動は、それこそ大企業を上回る競争倍率になっており、就職先としては難関の部類に入ります。そんな中で採用されているのは、世間的に優秀と言われる人材。東大が、東大卒の職員を大量に入職させたことが以前話題になりましたが、それは私大も変わりません。
むしろ自由に採用活動ができた分、ずっと昔から人材獲得には熱心でした。

もちろん個人差はありますが、いまどきの私大職員は、もともと大企業にだって入れたかもしれないスタッフだって、少なくないのです。
(逆に言うと高い給与水準が、そういった人材を採用できる理由のひとつにもなっているのでしょう)

ただ、もう少し引いて冷静に考えてみれば、「有名私立大学」も、様々です。
大学職員という職種ならではの事情もあるでしょう。
何を持って高い、安いと評価するのかは複雑で、安易に平均の額だけで判断はできません。状況は、個人個人によって違います。

同じ大学の職員でもその職務は様々ですし、仕事に向かう意欲も様々。それぞれが持っている能力も違います。業務内容に値する給与をもらっている方もいれば、どう考えてもおかしな給与をもらっている方もいるでしょう。一律に高い、低いを論じることはできません(これは、どんな組織でも同じ?)。

また、世代によっても事情は違います。大学に限った話ではないと思いますが、安定した成長の時代に働き平穏に勤め上げた世代の方と、まさにこれから少子化の時代を迎える若い世代の職員の方々とでは、人生の中で向き合っていかなければならないリスクの大きさが相当違います。

完全年功序列で、専門的なキャリアを積むことが難しく、若いうちに何を提案しても無駄、という閉鎖的な大学も未だに多いと思います。大学職員を、「つぶしの利かない職業」だと認識している方は少なくありません。
そういうリスクも考えはじめると、さらに話はややこしくなってきます。

……等々、一般化して語るには、色々と強引な点が多々あります。

「世間の水準と違いすぎているから」給与が高いのは問題なのか?

色々考えていくと、この給与水準を問題と思うかどうかというのはけっこう、感覚的なものなんじゃないかとも思えてきます。

でも実際、どうして有力私立大学の職員の給与水準は、高めなのでしょうか。

決して、世間が言うような「有力私大」ではないかもしれませんが、マイスターはかつて企業から大学職員に転職した経験があります。
マイスターが最初に働いていたのは、大企業の広報webサイトを制作・プロデュース会社。経営陣を含めても社員がひとケタしかいない「どベンチャー会社」で、言い換えると零細企業ですが、上司達はみな驚くほどの切れ者でした。
仕事はハードで、残業代という概念もなく、会社に泊まり込むことも多々。
にもかかわらず、実はあまり儲かっていなくて、給与もそれほど高くはありませんでした。

そんなマイスター。
大学への転職によって労働時間はかなり減りましたが、給与は上がりました。

マイスターが思うに、そうなった理由は、ビジネスモデルの完成度の差です。

毎年、同じ時期に学生を募集し、同じように全学生から定額の学費を集め、国から補助金を給付され、それをもとに授業や研究を行うという大学のビジネスモデルは、かなりの完成度を誇っています。国全体のシステムの中における位置づけも、ガッチリ固まっています。
毎年、決まったことをやっていれば、それなりに事業は回ります。そしてそれは、そう簡単には崩れません(現時点で高い評価を得ている大学は、特にそうです)。

昨今ではこれらのモデルがぐらついてきていると言われますが、webサイトを制作して対価をもらい社員を養うというビジネスモデルと比べたら、アリと巨人くらい違います。
世の中には、未完成のビジネスモデルの上で馬車馬のように朝から朝まで働いている人もいれば、社会の中で歴史を重ねて完成された、ほとんど公共インフラみたいなビジネスモデルの上で9時5時で働いている人もいます。そして、後者の方が年収が高いことだって、少なくないのです。

大学職員の給与が高い理由は、端的に言えば、そういうことだと思います。
でも、これは良いとか悪いとかいう問題ではなく、お金がまわる仕組みがそうできあがっているというだけの話。マイスターは大学への転職時に、この事実を自分で体感したというわけです。

今回、大学職員の年収の高さが批判の対象になっているようですが、世の中には、こんな例は山ほどあります。
教育の他、エネルギー、通信、交通等々、規制によって守られた、社会インフラのような仕事には、こうした例が多いでしょう。たまにボーナスカットなどが報道される銀行員だって、すこし景気が落ち着けば、平均年収を遥かに上回る年収を得ています(というか、カットされても高いです)。
民間企業であっても、これまでの歴史の中で大変な優遇をされ続け、規制に守られながら独占的に業務を行ってきたような企業では、似たようなことになっていると思います。

だから、メディアが「私大職員はもらいすぎ」とバッシングするのには、違和感を覚えます。
マスメディアだって、実際には下請けを安く使い、自分達は様々な規制に守られながら高給を得ているのですし。
少なくとも大学だけが、外部の方々に批判される理由はないように思います。

もう一つ、職員の給与水準が高い理由は、それが教員の給与を意識しながら設計されているからではないでしょうか。
上述したように、この2つは同じ法人に雇用された正規の教職員という点で、運命共同体。組合活動などをするときは、同じテーブルを囲む仲間です。
だから露骨に差がついてはマズイ、という意味合いもあるんじゃないか……と、なんとなく思います。

(京滋地区私大教連が掲載した資料では、同じ年代の教員と、職員の給与が併記されていますので、実際に両者の「差」を見ることができます。例えば、掲載されていた10大学の中でも頭抜けた給与水準を誇る関西大学は、教員と職員の差が小さい点も注目すべきところ。慶應や関西学院、立命館などは比較的、差が大きめです)

以上、あまり大学職員だけがバッシングの対象になるのもおかしいと思うので、いま思いつく限り、自分なりの意見を述べました。

ただ、非常勤講師の方々や、契約、派遣、嘱託といった形で大学に雇用されている方々は、不満を表明する理由が十分にあると思います。

(過去の関連記事)
・非常勤スタッフの「雇い止め」が大学でも拡がる?
・大学非常勤講師の憂鬱 不安定な仕組みの上に成立している大学
・国立大学の非常勤職員1,355人が、雇い止めの危機に?

これは大学に限った話ではなく企業でも同じですが、日本では正社員と、それ以外の働き方をされる方々との差がつけられすぎです。
社会の模範となるべく、大学くらいは人件費の設計をもう少し考えてみて欲しいと思いますが、それをしない理由が「自分の給与が下がるから」だとしたら、ちょっと悲しいです。

今回、話題になった京滋地区私大教連の資料には、実は「非常勤講師の待遇一覧」というデータも掲載されていました。ほとんど誰にも触れられていませんが。
そのあたりの「格差」について資料内で言及されていたら、私大教連は、ここまでの批判は集めなかったかもしれません。

■「京滋地区私立大学教職員組合連合」

↑アクセスしていただくとわかりますが、京滋地区私大教連は、件のファイルをサーバーから下げてしまいました。予想を上回る批判が出てきたので、とりあえず部外者の目に触れないようにしたのだと思います。
この対応も、個人的にはちょっとがっかりです。どうせなら、「有名私大以外の大学」の給与実態を公開した上で、組合としての反論や意見を正々堂々と公式発信するくらいの姿勢を期待していました。
そうでないと、本当に社会から批判される組織になってしまいかねません。

長くなりましたが、最後に、ここまで書いて思ったことを。

件の資料に掲載されていた10大学に限らず、私大職員には優秀な人材が集まり始めています。
大学運営のエキスパートとして活躍していただいたら、いずれはきっと教員に勝るとも劣らない働きをされる方々でしょう。それこそ大学のために、給与額を上回る貢献をされると思います。何しろ、もともと優秀な人材なのですから。

もし大学が批判を浴びるなら、そういった人材をたくさん抱えているにもかかわらず、給与に見合う活躍をさせられていないことに対してではないでしょうか。

特に資料に出てきた10大学は、日本を代表する大学ばかり。
大企業と同じかそれ以上に、高度専門的な業務を担うことが求められている、刺激的な職場です。
そういう仕事をする環境を実際につくれていれば、誰も不満や批判は言わなくなると思います。

(実際、学内でそういう仕事をされている職員の方も実は少なくないのだと思いますが、そう感じさせない仕事ぶりの方々が学生や教員、メディアの対応をしているから、批判が生まれているのでは)

そこでマイスターから提案ですが、職員の給与が高すぎるとお感じの教員の皆様は、「給与を下げろ!」ではなく、「給与の分だけ大変な仕事をしろ!」という風に主張されてはいかがでしょうか。
逆に、この人は良い仕事をする! ……という職員の方をご存じでしたら、その方が人材育成のモデルになるくらい、学内外で誉めまくってあげてください。

給与が高すぎると言われたから、下げるかどうか考える、という発想ではなく、
給与に見合う水準まで、全体の業務レベルを引き上げることを考える。
その方が、はるかに建設的で、前向きな議論だと思います。

以上、現在は特にどの大学の利害にも関わらない、一人の元・大学職員の意見でした。
結論というものは特になく、あくまでも一意見です。

ぜひ、皆さんの意見もぜひお聞かせください。
大学職員という仕事は今、大きく変わろうとしています。新しい「常識」を作っていかなければならない部分もあるでしょう。その過程で、こうして意見を出し合うのは、大切なことだと思います。
大学の教職員の方々や、大学職員を目指している方々のご意見も、伺ってみたいです。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。

5 件のコメント

  • 国(文部科学省)が「温泉の湯」のごとく円滑に資金を供給して調整する機関とするなら、大学は確かに税金を余すことなく使い切 関係する企業も潤す。 一部の大学・文科省にて人材を育て、下部の機関へ送り出し、天下りのすばらしいシステムではある。
    他の業種(一部同類企業はあるにせよ)から見てうらやましい限りである。
    教育問題は、成果の出しにくい次世代を育てる重要な任務があるにせよ
    毎年資金が減ったらどのように対応しようといった危機感がない。その対応も一部も大学だけで対応策を考えるといった護送船団の対応も手ぬるく、下部の大学は締め切りに負われることなく、改善対策も手ぬるい田舎感があり、天下りの温床であり、削減する方向で世の中進めるべきであるかも?といった疑問や抵抗勢力があるにせよ補助金をやめろ、今の大学の意義とは何ですかといった本質も難しいことばかり連ねることなく世の中に伝播している感はありますか?まだ、手ぬるいところありませんか?
    銀行のように大学の「集中と選択」は必要ありませんか議論されてますか?
    もしくは、痛みに耐えてよくがんばったなんていえますか?痛いけど税金(資金)はもらえるしそういう時期あったなぐらいじゃないですかー?

  • 中小大学の教員・職員は高いと思います。
    業務質も評価基準も甘い、保護主義であって
    外部評価したらひとたまりもない。
    甘い蜜ばかり吸っているんじゃない。
    大学職員として以前勤めてましたけど・・・。
    いらないよそんな大学。国民の損だ。
    入試も志願・受験者数も少ない。
    教育内容もがたがただ。
    大きな大学への吸収合併も少ないんじゃないかな?必要だと思いませんか?少なくとも税金使っておいて。
    危機感がない。大きな大学。中小大学と比較すると中小で落ちぶれている大学はたくさんある。
    さよならする時は今かもしれない。
    今後予測では人口は少なくなる。増える兆しがないその中、今現在の教職員を高給取ではなく、
    介護福祉並に落ちる大学があってもいいんじゃないですか?
    弱肉強食があってもいいかもです。
    そうじゃないと教育の質が変わらないのでは
    外の出ても弱肉強食はかわりません。
    その手前の教育機関で教えることも大切です。
    受験戦争は以前のもの変えなければならないのは
    大学じゃないですか?その大学を変えなかったのは教員もそうですが事務員です。甘甘ちゃんじゃないですか?権力がないからじゃないと思います。中小私立なら定時でちょっと残業したからといって公務員並に残業代を請求するのではなく
    働け!価値がないやつは辞めろ!そういうスローガン立てろと思いマスタ

  • >大企業と同じかそれ以上に、高度専門的な業務を担うことが求められている、刺激的な職場です。
    それはないだろとwww笑っちゃったよw
    あまり恥ずかしいことは書かないようにw
    大学職員にそんな高度な仕事はあるわけないし、そんな優秀な職員も必要ないでしょう。もし優秀な人間が大学職員なんて事務員になってダラダラ生きるとしたらそれは問題。そういう人は官公庁や民間企業に行って活躍すべきでしょ。

  • ここでもモデル賃金が出ている大学の職員です。
    確かに、その程度の給料は貰えます。かなり、正確な目安でしょう。
    さて、貰い過ぎかどうかという点について。
    就職するに当たって色々な選択肢があった人からすれば、突出して多いというわけではないということでしょうか。
    私は転職組ですが、同じ時に転職した人(同期?)の皆は、前職よりは給料が下がったけれど、下落率はそんなにひどくないということです。仕事を選ぶ上で、色々な選択肢がある人からすれば、そんなに給料面だけでは魅力があるわけではないということですね。
    一方で、大学職員にしか(特に、嘱託など終身雇用じゃない)選択肢がない人には、かなり高額に感じるということでしょうか。

  • 他人の給料が高いって言う人は、批判しないで自分がその職に就けばいいじゃない。誰も、その高給な職に就くななんて言ってないんだから。自分の給料が安いと感じるなら、自分の勤め先の経営者に文句を言えよ。